ご自宅で療養されているご家族の「体のこりや痛みが辛そう」というお話、そして「訪問リハビリと訪問マッサージ、どちらを頼めばいいんだろう」というお悩み、実はとても多くいただくご相談なんですね。
名前は似ていても、実はこの2つ、資格も目的も保険制度もまったく別物だったりします(この違い、現場で説明していても「え、そうなんですか!」と驚かれることがよくあります・笑)。
この記事を読んでいただければ、両者の違いはもちろん、「マッサージだけを目的に訪問リハビリは使えない」という制度上の理由まですっきり整理できて、ご家族の状態に合ったサービスを迷わず選べるようになりますよ。
現役の理学療法士として、日々ご利用者様やご家族に制度の違いを説明してきた立場から、できるだけ分かりやすくお伝えしていきますね。
訪問リハビリとマッサージは目的と資格が根本的に違う

訪問リハビリは「自宅でマッサージをしてもらえるサービス」と思われがちですが、資格も目的もまったく別物です。
訪問リハビリはPT・OT・STが担う医療系サービス
訪問リハビリは、PT・OT・STが医師の指示書に基づき行う医療系サービスで、目的は機能回復・自立支援です。関節可動域訓練の一環で軽擦や押圧などの徒手的アプローチを含むこともありますが、あくまで機能訓練の一部であり、リラクゼーション目的の全身マッサージとは性質が異なります。
マッサージはあん摩マッサージ指圧師が担う施術
マッサージはあん摩マッサージ指圧師の国家資格保有者が行う施術です。厚労省の資料でも、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復は各免許保有者以外が業として行ってはならないと明記されています[1]。保険適用も疲労回復目的ではなく、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮など「医療上必要な症例」に限られ、保険医の同意書が必要です[2]。つまり指示書に機能訓練の目的がない「マッサージだけ」の利用は、訪問リハビリでは原則できません。
訪問リハビリの手技は機能回復を目的に行われる

訪問リハビリでは、関節の硬さをほぐしたり筋肉の緊張を和らげたりする「徒手的なアプローチ」を行うことがよくあります。
ただ、これはあくまで機能訓練の一環として行う手技であって、リラクゼーション目的の全身マッサージとは目的が根本的に違います。ここは誤解されやすいポイントなので、お伝えしておきたいところです。
関節可動域訓練や筋力訓練と組み合わせた手技
具体的には、こんな流れで手技を組み込むことが多いですね。
- 関節可動域訓練の前後に、周囲の筋肉を軽くほぐして動きやすくする
- 筋力訓練で力を入れた後、過緊張になった筋肉を緩めて疲労を残しにくくする
- 麻痺や拘縮がある部位に、押圧や軽擦を加えて可動性を引き出す
こうした手技は「その後の運動をやりやすくするための下準備」という位置づけで、手技だけを単独で延々と行うことは基本的にありません。
痛みや筋緊張を和らげる徒手療法の実例
痛みが強く動かすこと自体がつらい方には、無理に運動から入らず、まずは軽く手を当てて筋緊張を和らげるところから始めることもあります。
(こうした徒手療法を「気持ちいい」と喜んでいただけると、ちょっと嬉しくなります…笑)
とはいえ、これも最終的には可動域や筋力の改善、動作の自立につなげるための手段のひとつです。
ケアプランや指示書に機能訓練の目的が書かれていない「マッサージのみ」を目的とした利用は、原則としてできないという制度上の前提も、頭の片隅に置いていただけるとありがたいです。
マッサージ目的だけでは訪問リハビリを利用できない

まず大前提として、「マッサージをしてほしいから」という理由だけでは、訪問リハビリを利用することはできません。 これは制度上の決まりごとです。
指示書には機能訓練という目的の明記が必須
訪問リハビリは医師が発行する指示書に基づき行われ、指示書には
- 関節可動域の維持・拡大
- 筋力低下の予防
- 歩行など動作能力の向上
といった、機能訓練や動作能力の向上を目的とした内容の明記が必須です。単に「疲労回復」や「慰安」目的のものは、医療上のマッサージの支給対象にすら含まれません[2]。理学療法士等の運動療法・物理療法と、あん摩マッサージ指圧師によるマッサージとでは、資格の根拠となる法律が異なります。
癒し・慰安目的だけのケアプランは組めない
ケアマネジャーがケアプランを立てる際も同様で、「癒し・慰安のためだけ」という目的ではプランは組めません。
「マッサージをしてほしいだけなんだけどな」というお気持ちはよく分かります。
訪問リハビリと自費マッサージは保険適用の有無が異なる

訪問リハビリと訪問マッサージは、そもそも使える保険の仕組みが違うんですね。
- 訪問リハビリ:介護保険(1〜3割負担)または医療保険(年齢・所得で割合が変わる)を利用でき、両者は原則併用不可
- 訪問マッサージ:医師の同意書があれば医療保険が使えますが、なければ全額自費
介護保険の場合、単位数×時間・地域区分・加算などで金額が決まる仕組みなので、正直「分かりにくい」と感じる方も多いと思います(私も保険の知識は学び直したクチです…笑)。
自己負担額の細かい計算については、この記事の主題ではないので詳しくは触れませんが、気になる方はぜひチェックしてみていただけると嬉しいです。
詳しくは訪問リハビリの費用はいくら?介護・医療保険の自己負担を解説をご覧ください。
症状の目的別に訪問リハビリかマッサージかを選び分ける

「結局、うちの場合はどっちを選べばいいの?」と迷う方向けに、目的別に整理します。
機能回復や自立支援が目的なら訪問リハビリを選ぶ
以下のような目的なら訪問リハビリが向いています。
- 歩行や立ち上がりなど動作能力を回復・維持したい
- 自宅での自立した生活を目指したい
- 関節が固まらないよう機能的な運動を継続したい
訪問リハビリはPT・OT・STが医師の指示書に基づいて行う医療系サービスです。徒手的アプローチを行うこともありますが、あくまで機能訓練の一環で、リラクゼーション目的の全身マッサージとは異なります。
慰安や疲労緩和が目的なら訪問マッサージも検討する
「体をほぐしてリラックスしたい」「筋肉のこわばりや疲労感を和らげたい」といった慰安目的が中心なら、訪問マッサージも検討してみるのがおすすめです。
制度上、訪問マッサージはあん摩マッサージ指圧師が行うもので、医師の同意書があれば医療保険、無ければ自費での利用となります(費用は別記事「訪問リハビリの費用」参照)。
ちなみに、訪問リハビリに従事するようになってから、「マッサージだけしてほしい」という要望を受けたことはまだありません。訪問リハビリ利用者は最初から機能訓練目的の方が多いのかもしれません。
いずれにしても、「何のために利用したいのか」を明確にすることが、サービス選びの一番の近道です。迷ったときはケアマネジャーや主治医に相談してみましょう。
まとめ:訪問リハビリのマッサージとは何かを整理

ここまで見てきた違いを整理しておきますね。
- 訪問リハビリは、PT・OT・STが医師の指示書に基づいて行う医療系サービスであること
- 目的は機能回復・自立支援であり、あん摩マッサージ指圧師によるマッサージとは資格も目的も保険制度も根本的に異なること
- 関節可動域訓練に伴う軽擦・押圧などの徒手的アプローチはあくまで機能訓練の一環であり、リラクゼーション目的の全身マッサージではないこと
- ケアプランや指示書に機能訓練の目的が明記されていない「マッサージのみ」目的の利用は、原則できないこと
制度が複雑でご家族は混乱しがちな部分だと思います(現場の私たちでも、細かい部分は都度確認することがあるくらいです(笑))。
ただ根っこはシンプルで、「訪問リハビリ=機能訓練の専門職による自立支援」「訪問マッサージ=資格の異なる施術者によるケア」という目的の違いさえ押さえておけば、迷ったときの判断基準になるはずです。
希望と制度の間にズレを感じたときは、ケアマネジャーや訪問リハビリの担当者に率直に相談してみてください。一人で抱え込まず、専門職とすり合わせながら決めていく姿勢が、本人にとって一番良い選択につながると感じています。
引用文献
[1] 厚生労働省. 無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について(医業類似行為に対する取扱いについて). 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月04日.
[2] 厚生労働省. はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱い(令和7年4月版・保険医向けリーフレット). 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/250401_01.pdf. 2025年. アクセス日: 2026年09月04日.





