ご家族が脳卒中や神経の病気をきっかけに、構音障害や失語症を抱えてしまうと、「病院でのリハビリだけで本当に良くなるんだろうか」「家でも何かしてあげたいけど、何をどうすればいいのか分からない」と、不安な気持ちになってしまいますよね。
この記事では、構音障害と失語症、それぞれのタイプに合った自宅での練習方法から、ご家族としての関わり方、教材やアプリの選び方、専門職に相談すべきタイミングまで、今日から実践できる形でお伝えしていきます。
言語聴覚士との連携経験や公的な資料をもとに、無理なく続けられる方法だけを厳選してご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
自宅リハビリや自主トレ全体の考え方は自宅リハビリの自主トレガイドで、呼吸・嚥下・言語など、神経難病や症状別の自宅リハビリは、自宅でできる呼吸リハビリの記事から各記事をたどれます。
構音障害・失語症は自宅でのリハビリ継続が回復のカギ

構音障害も失語症も、病院でのリハビリだけで完結するものではなく、自宅での積み重ねがその後の回復を左右するといっても過言ではないんですね。
脳卒中治療ガイドラインでも、言語聴覚療法は言語機能やコミュニケーション能力の改善に有効だとして、強く推奨されています。
さらに大切なのは、退院後の生活期に入ってからも訓練を続けることです。
脳には可塑性、つまり機能を再編成しようとする力がある一方で、使わない機能は落ちていってしまう側面もあります。
だからこそ、
- 日常的に発話する機会を意識してつくる
- 音読や発声を計画的に続ける
- 会話の実践を日々の生活に組み込む
といったことが、維持期における言語機能の回復・定着の土台になっていくわけですね。
(とはいえ、退院直後は家族も本人も手探りで、何から始めればいいか迷ってしまうもの…その気持ち、私もよく分かります)
このあとの章で、具体的な自主トレの方法を一緒に見ていきましょう。
発声練習と口・舌の体操で構音障害を改善できる
構音障害のリハビリでは、口や舌、頬まわりの筋肉をしっかり動かすことが大切です。自宅での自主トレは、病院でのリハビリを補う位置づけとして取り入れてみてください。
口・舌・頬をほぐすストレッチ体操
- 頬を膨らませたり、すぼめたりする
- 舌を前後・左右にゆっくり動かす
- 口を大きく開けたり閉じたりする
毎日少しずつ、無理のない範囲で続けてみましょう(張り切りすぎず、ほどほどのペースで・笑)。
発声発語訓練の具体的なやり方
「パ・タ・カ・ラ」など、口の動きが異なる音を繰り返し発声する練習は、言語聴覚士さんの指導でもよく用いられます。家庭では、その延長として同じ音をゆっくり丁寧に繰り返してみるとよいでしょう。
家族が確認したい練習時の姿勢と環境
- 背筋が伸びた安定した姿勢か
- テレビなど気が散るものがないか
- 疲れが出る前に切り上げているか
こうした点を見守っていただけると、練習の質も上がっていくと感じています。
失語症の自主トレは絵カード・プリント教材が効果的

失語症のリハビリでは、絵カードやプリント教材を使った自主トレが取り入れられることが多いですね。
構音障害の練習が「口の動かし方」を鍛えるものだとすると、失語症の練習は「言葉と意味の結びつき」を思い出す・鍛え直すイメージに近いといえます。
絵カードを使った呼称訓練の進め方
絵カードを使った呼称訓練は、以下のような流れで進めることが多いです。
- 絵カードを見せて、名前を答えてもらう
- 出てこない場合は、最初の音だけヒントを出す
- それでも難しければ、正解を伝えて復唱してもらう
焦らず、できたところを一緒に喜ぶ姿勢が大切だと感じています。
音読・書字プリントの活用法
音読や書字のプリントも、言語聴覚士の指導のもとで補助的に使われることが多いですね。
ただし、これらはあくまで病院でのリハビリを補う家庭学習という位置づけです。
自己流で難易度を上げすぎず、必ず言語聴覚士に相談しながら進めていただけると安心です。
家族との会話が最良の言語リハビリになる理由
毎日のちょっとした会話こそが、実は一番身近で継続しやすいリハビリになるんですよね。
特別な訓練の時間を作らなくても、食事中や何気ない雑談の中で「話す・聞く・理解する」練習は自然と積み重なっていきます。
話を聞く時に意識したい3つの工夫
- ゆっくり、はっきり話す(早口だと聞き取りにくくなってしまいます)
- 急かさずに、言葉が出てくるのを待つ
- 話の内容を先読みして遮らない
つい先回りして言葉を継いであげたくなりますが、本人が自分で言葉を探す時間そのものが練習になっていますね。
ジェスチャーや文字盤も活用する
言葉だけにこだわらず、身振りや指差し、文字盤なども組み合わせてみるのがおすすめです。
伝わる手段が複数あると、本人の「伝わらないもどかしさ」がやわらぎ、会話へのハードルも下がっていくのではないかと感じています。
ただし、失語症と構音障害では言葉が出にくい原因が異なるため、対応の仕方も少し違ってくる点は意識していただけると嬉しいです。
症状のタイプ別に自宅訓練を工夫すると効果が高まる

失語症は「話す・聞く・読む・書く」という言語機能そのものが障害された状態で、構音障害とは原因が異なり、タイプに合わせた工夫が効果を高めてくれますね[1]。
運動性失語(ブローカ失語)への対応
理解はできるのに言葉がスムーズに出てこないタイプです。
- 絵カードや実物を使った呼称訓練
- 短文の音読・復唱
- ジェスチャーや筆談も併用する練習
もどかしそうなご家族に、つい先回りして言いたくなりますが、少し待つ姿勢も大切な支援だと感じています。
感覚性失語(ウェルニッケ失語)への対応
言葉は滑らかに出るものの、言い誤りが多く理解が難しいタイプです。
- 短い文と絵・文字を照合させるマッチング課題
- Yes/Noで答えられる簡潔な問いかけ
こうした聴理解の再獲得を目指す訓練が用いられます。
教材・アプリは目的に合わせて選ぶと上達が早まる
教材やアプリは「なんとなく良さそう」で選ぶより、目的に合わせて選ぶ方が上達が早まりやすいですね。構音障害と失語症では練習方法が異なるので、特に意識していただけると嬉しいです。
教材・アプリを選ぶ3つのポイント
- 対象が構音障害向けか失語症向けか(混同しないことが大切です)
- 難易度が今の症状に合っているか(簡単すぎても難しすぎても続きにくいですね)
- 音声や写真など視覚・聴覚のフィードバックがあるか
市販教材は種類が多く迷いがちです(私も欲張って難しいものを選び、続かず失敗した経験があります・笑)。まずは主治医や言語聴覚士に相談しながら選ぶ視点を持ってみるのもおすすめです。
家族が用意できる手作り教材の工夫
- 家族の顔写真に名前を添えたカード
- よく使う日用品の写真カード
- 大きめの文字で書いた単語カード
あくまで病院でのリハビリを補完するものとして、無理なく取り入れていただけると良いのではないかと感じています。
効果が出にくい時は専門職への相談が回復の近道

自宅での自主トレを続けても回復を実感できない時は、障害のタイプと訓練内容が合っていなかったり、難易度設定が合っていない可能性があります。自己流で頑張り続けるのは遠回りになりがちです。うまくいかないと感じたら、抱え込まずに早めに専門家へ相談してみましょう。
言語聴覚士(ST)へ相談すべきサイン
- 同じ訓練を続けても変化が感じられない
- 何を目標に練習すればいいか分からない
- 家族とのコミュニケーション自体がしんどい
こうしたサインがあれば相談のタイミングです。言語聴覚士は各種検査を実施し、状態に合わせた個別プログラムを立ててくれます[1]。
訪問リハビリ導入を検討する目安
- 外来への通院が体力的・介護負担的に難しい
- 生活の場で実践的な訓練や助言がほしい
- 家族への声かけ方法や代償手段も相談したい
まとめ:構音障害・失語症の自宅リハビリを毎日続けるために
ここまで、構音障害と失語症それぞれの自主トレについてお伝えしてきましたが、大切なのは完璧を目指さず、毎日続けられるペースを見つけることですね。
- 構音障害と失語症は原因も練習方法も違うこと
- 家庭での自主トレは、あくまで病院でのリハビリを補完するものであること
- 効果が感じられない、あるいは悪化していると感じたら、自己判断せずに言語聴覚士や主治医に相談すること
この3点は、ぜひ忘れずにいていただけると嬉しいです。
(無理に頑張りすぎて燃え尽きてしまうのが一番もったいないので…笑)
ご家族と本人が焦らず、60%くらいの力で長く続けられることが、結果的に一番の近道ではないかと感じています。
引用文献
[1] 公益財団法人長寿科学振興財団. 言語聴覚士によるリハビリテーション. 健康長寿ネット. https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rehabilitation/gengo-ryouhou-shi.html. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月23日.





