入院や病気をきっかけにご家族が動かなくなり、筋力や認知機能の衰えが心配だけど、自宅でどうリハビリしてあげればいいのか分からず戸惑っている……そんな方も多いのではないでしょうか。
この記事では、廃用症候群が起こる仕組みと、ご自宅でできる症状のセルフチェック方法をお伝えしていきますね。
その上で、ベッドの上や座った状態からでも今日から始められる段階的なリハビリと、生活リズムの整え方まで、具体的にご紹介していきます。
理学療法士としての専門知識と、公的な資料の両方をもとにお伝えしていきますので、専門知識がない方でもすぐに実践していただける内容になっていますので、どうぞ安心して読み進めていただけると嬉しいです。
自宅リハビリや自主トレ全体の考え方は自宅リハビリの自主トレガイドで、高齢者の方の進め方は高齢者の自宅リハビリで詳しくお伝えしていますので、あわせてご覧いただけると嬉しいです。
廃用症候群は「動かない時間」が招く機能低下

動かないことで全身に起こる悪循環
廃用症候群(生活不活発病)とは、病気やケガでの過度な安静や活動量低下など「身体を動かさない状態」が続くことで起こる、心身機能低下の総称です[1]。
筋力低下や筋萎縮だけでなく、関節拘縮、骨萎縮、起立性低血圧などの循環器機能低下、心肺機能低下、うつ状態やせん妄などの精神・認知機能低下まで、影響は全身に及びます[2]。
一度機能が落ちると「動きにくいから動かない、動かないからさらに動けなくなる」という悪循環に陥りやすく、この連鎖が寝たきりへの進行を早めてしまいます。
廃用症候群の症状はセルフチェックで早期発見
全身に表れる廃用症候群の主な症状一覧
廃用症候群は筋力低下より先に「活動(生活行為)」の低下として現れやすい特徴があります[3]。
- 屋外を1人で歩ける範囲が狭くなった
- 家具伝いや這って動くようになった
- 食事・トイレ・入浴で介助が必要になった
- 座位・臥床時間が増えた
こうした変化は見逃されがちですが立派なサインです。
家庭でできる廃用症候群セルフチェック表
「発症前・入院前と比べてどうか」という視点で比較しましょう。
1段階でも活動レベルが下がっていたら要注意です。「様子見」したくなる気持ちも分かりますが、早めに気づけるとその後の対応がぐっと楽になりますよ。
自宅リハビリは寝たきり期から座位保持期へ進める

自宅でのリハビリは、いきなり歩行練習から始めず、寝たきり期→座位保持期という段階を踏んで進めることが大切です。焦って一気に起こそうとすると、転倒や体調不良につながることもあるので、無理せず段階的に進めましょう。
寝たきり期はベッド上の関節可動域訓練から
寝たきりの時期は、まずベッド上でできる関節可動域訓練から始めるのがおすすめです。
- 手足の関節をゆっくり曲げ伸ばしする
- 痛みが出ない範囲で動かす
- 1日数回、短時間から始める
(無理に大きく動かすと逆効果になることもあるので、あくまで優しく)
座位保持期は座って行う筋力・バランス訓練
ベッドから起き上がれるようになってきたら、次は座位保持期として座って行う筋力・バランス訓練に進めます。
- 座った姿勢を保つ練習
- 体幹や下肢の軽い筋力訓練
- バランスを崩さない範囲での動作練習
この先の立つ・歩く段階については、別記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
起立・歩行練習は状態に応じて専門的に行う
座位が安定してきたら、いよいよ「立つ」「歩く」という段階に近づいていきますね。
ただ、この起立・歩行練習は、筋力やバランス、血圧の変動など様々な要素を見ながら進める必要があり、正直なところ専門的な判断が求められる領域です。
自己流で進めてしまうと、転倒などのリスクにつながることもあるため、この段階に来たら医師やケアマネジャー、訪問リハビリなど専門職に相談していただくのが安心ですね。
(私自身も、病院時代に培った評価の視点を土台にしながら、今も慎重に進めるようにしています)
具体的な歩行練習のメニューについては、こちらで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください(歩行リハビリについて詳しくはこちら)。
生活リズムを整えることが廃用症候群を防ぐ鍵

ここまで寝たきり期から座位保持期、そして起立・歩行練習へと進む流れを見てきましたが、こうした運動面のケアと並行して欠かせないのが「生活リズムを整える」ことです。寝たきりや座りきりが続くと、昼夜の区別が曖昧になりがちですよね。
実はこの「生活リズムの乱れ」自体が、廃用症候群を進行させる隠れた要因になっていることも多いんです。
起床・食事・日光浴で体内時計を整える
- 毎朝同じ時間に起こす(カーテンを開けて日光を入れる)
- 食事は可能なら座った姿勢で摂る
- 日中に日光を浴びる時間を作る
こうした積み重ねが体内時計を整え、夜の睡眠の質にもつながります。
座る時間・活動時間を1日の中で増やす工夫
いきなり長時間座るのは負担が大きいので、「短時間でも回数を増やす」イメージで取り組んでみてください。
- 食事の時間だけでもベッドから起こす
- テレビを見る時間を座位で過ごす
- 家族との会話をベッドサイドで座って行う
(無理に長時間頑張らせると本人もご家族も疲れてしまうので、焦らずいきましょう)
このあたりは、先ほどお伝えした座位保持の練習とも深く関わってきます。
廃用症候群が進行したら専門職への相談が必要
「安静第一」「無理はさせられない」と自己判断で活動を制限してしまうのは、実はあまりおすすめできません。
座位保持が難しくなってきた、飲み込みに不安が出てきた…そんな変化があれば、自己流で頑張り続けるより、早めに専門職へつなげることが大切ですね。
訪問リハビリ・デイケアを検討すべきサイン
要介護・要支援の認定を受けていれば、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリの利用が可能です。
専門職が生活環境に合わせた動作指導や、ご家族への介護方法の助言も行ってくれますので、悪循環を防ぐという意味でも心強い選択肢になります。
かかりつけ医・ケアマネへ相談する際の流れ
まずはかかりつけ医、そして地域包括支援センターやケアマネジャー、保健師といった身近な窓口に相談してみてください。
(一人で抱え込まず、頼れる人にはどんどん頼っていい、という視点を持ってみるのもおすすめです)そこから必要な医療・介護サービスへとつないでもらえますよ。
家族の関わり方が廃用症候群予防を左右する

声かけと役割づくりで活動意欲を引き出す
「頑張って」だけでは、なかなか本人の気持ちは動いてくれないものですね。
それよりも、
- 「これ、お願いできる?」と役割を渡す
- できたことを具体的に言葉にする
- 本人のペースを否定しない
こうした関わりの方が、活動意欲につながりやすいという印象があります(もちろん個人差はありますが…)。
頑張らせすぎない家族の関わり方の工夫
一方で、ご家族が「良かれと思って」つい頑張らせすぎてしまうケースもあります。
支える側も無理をしないことが、結果的に本人のペースを守ることにつながるという視点を持ってみるのもおすすめです。
もし座位保持が難しくなったり、疲労の様子が強く出てきたりした場合は、自己判断で続けず、医師やケアマネジャー、訪問リハビリなど専門職への相談をおすすめします。
まとめ:廃用症候群は早期の自宅リハビリで予防・改善できる
ここまで、廃用症候群の仕組みやセルフチェック、寝たきり期から座位保持期にかけての自宅リハビリについてお伝えしてきましたね。
大切なのは、「気づいた時点で、できることから少しずつ始める」という姿勢だと感じています。
- 焦って一気に頑張りすぎない
- 変化を記録して専門職と共有する
- 座位保持が難しい、飲み込みに不安がある、転倒が増えたなど症状が進んでいる場合は自己判断せず、必ず医師・ケアマネジャー・訪問リハビリに相談する
(とはいえ、昔の私はこれが全くできずに抱え込んでいたんですが…)無理のないペースで、ご家族と専門職が一緒に支えていくという視点を持ってみるのもおすすめです。
なお、起立・歩行練習以降のリハビリについては、別記事で詳しくご紹介していますので、そちらも参考にしていただけると嬉しいです。
引用文献
[1] 廃用症候群. 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団). https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/haiyo-shokogun.html. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月23日.
[2] 廃用症候群に関する資料. 東京都保健医療局. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/siryou162. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月23日.
[3] 生活不活発病(廃用症候群)予防マニュアル. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000122331.pdf. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月23日.





