「もう辞めたいな」。そんな気持ちが頭をよぎって、一人で抱え込んでいませんか。
理学療法士として働いていると、人間関係、業務量、将来への見通しなど、辞めたいと感じるきっかけはいくつもあります。
この記事では、「辞めたい」という気持ちを、結論を急がずに整理するための考え方を、公的な情報や研究をもとにお伝えします。
辞めるか続けるかの結論は、急がなくて大丈夫です。まず、自分の「辞めたい」がどこから来ているのかを、一緒に整理してみましょう。
「辞めたい」と感じる気持ちとの向き合い方

辞めたいと感じる背景には、さまざまな事情があります。特に新人のうちは、学生時代に思い描いていた姿と、実際の臨床現場とのギャップに戸惑う方がいます。
新人理学療法士を対象にした調査では、就職後に理想と現実の差(リアリティショック)を感じた人は、就職後に情緒的消耗感が有意に高かったと報告されています[1]。この研究は、4年制大学の学生237名に調査して、卒業前と就職3か月後の両方に有効回答があった46名を分析したものです[1]。
これは、この調査の対象となった新人における関連を示したもので、辞めたいと感じる人の割合や、理学療法士全体の退職理由を示すものではありません。人数も限られています。それでも、新人期に心身の消耗を感じる人がいることは示されています。つらいと感じるのは、努力不足とは限りません。
辞めたい理由を切り分けて整理する
「辞めたい」という一つの言葉の中には、いくつかの違う悩みが混ざっていることが多いです。次のように、大きく5つに分けて整理してみることをおすすめします。
- 仕事内容:担当する患者さんや業務が合わない
- 人間関係:上司や同僚との関係がつらい
- 労働条件:給与、残業、休日などの条件が合わない
- 将来性:この先のキャリアの見通しが持てない
- 心身の状態:疲れが取れない、眠れない、気分が落ち込む
紙に書き出して、一番重いものに印をつけてみるだけでも、頭の中が整理されやすくなります。理由が違えば、取れる対応も変わります。
「今の職場を辞めたい」のか、「理学療法士を辞めたい」のか
もう一つ、分けて考えたいのが、辞めたい対象です。今の職場の環境や条件が合わないのか、理学療法士という仕事そのものが合わないのかで、選べる道は変わります。
職場が合わないだけなら、配置や担当、働き方の調整、職場を変えるといった選択肢があります。仕事そのものが合わないと感じる場合は、時間をかけて、自分が大切にしたいことを整理してみましょう。
休養や相談を優先したほうがよい場合

心身の不調が続いているとき
眠れない、食欲がない、出勤前に強い不安や吐き気がある、といった状態が続いているときは、転職の判断より先に、休養と相談を優先してください。かかりつけ医や産業医など、医療や健康の専門家に相談することをおすすめします。
心身の不調が強いときは、一人で結論を出さず、休養や相談も選択肢に入れてください。休職や異動の制度は職場によって異なるため、就業規則や上司、人事に確認することもできます。
ハラスメントや、危険を感じる環境にいるとき
ハラスメントや、安全を脅かされていると感じる環境にいる場合は、早めに外部の相談先を使うことも考えてください。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」サイトには、都道府県労働局や労働基準監督署などの所在地と連絡先の一覧があります[2]。
条件や環境の悩みなら、整理してから考える
給与や業務内容、将来性への不安が中心なら、すぐに辞めると決めなくても大丈夫です。今の職場でできることがないか、他の職場の条件はどうかを、まず確認してみましょう。
上司に相談しにくい場合は、人事や、信頼できる同僚、職場の外の相談先に話してみる方法もあります。
- 今の職場で変えられること(担当、勤務時間、配置など)は何か
- 相談できる人は、誰か(上司に相談しにくい場合は、他の相談先は)
- 他の職場と比べると、どの条件が違うのか
転職を考えるタイミングの目安

転職のタイミングに、決まった正解はありません。ここでは、考えるときの目安をいくつか挙げます。
- 整理がついて、動く理由が明確になったとき:不満の中身を言葉にできているか
- 今の職場での調整を、検討したか:今の職場で解決を試すことが、前提というわけではありません。安全に相談できる環境なら、配置や働き方の調整を相談する方法もあります
- 心身の状態が落ち着いているとき:休養して判断しやすい状態か
- ライフイベントが変わるとき:結婚、出産、介護、引っ越しなど
job tagに掲載された全国の有効求人倍率は4.67(令和7年度)です。ただし、地域や希望条件によって求人状況は異なり、この数値だけで自分に合う職場の見つけやすさは判断できません。[3]
よくある質問
Q. 辞めたいと感じるのは、甘えでしょうか?
A. 気持ちそのものを、甘えと決めつける必要はありません。新人期の調査でも、心身の消耗を感じる人がいることが示されています。まず、理由を切り分けて整理してみましょう。
Q. すぐに辞めるかどうか、決めないといけませんか?
A. 結論を急ぐ必要はありません。ただし、心身の不調が強いときや、危険を感じる環境にいるときは、休養や外部の相談を優先してください。
Q. 上司に相談できません。どうすればいいですか?
A. 人事や、信頼できる同僚に相談する方法があります。都道府県労働局などの相談先は、厚生労働省のサイトで調べられます。心身の不調が強い場合は、医療機関への相談を優先してください。
まとめ:気持ちと条件を整理して次の一歩を選ぶ
- 辞めたい気持ちの背景には、さまざまな事情がある
- 理由を5つに切り分け、「職場を辞めたい」のか「理学療法士を辞めたい」のかも分けて考える
- 心身の不調が強いときは、休養と相談を優先する
- 条件や将来性の悩みなら、動く前に整理する余地がある
辞めるか続けるかの結論を急がず、今の負担を整理することから始めましょう。
引用文献
[1] 和田三幸, 小野田公, 丸山仁司. 理学療法士のリアリティショックおよびバーンアウトの状況調査 ─卒業前と就職3ヵ月後の比較─. 理学療法科学. 2020;35(1):121-124. https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/35/1/35_121/_article/-char/ja/. doi:10.1589/rika.35.121. 2026年10月20日アクセス.
[2] 厚生労働省. 確かめよう労働条件(労働条件に関する総合情報サイト). 相談機関のご紹介. https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/soudan/index.html. 発行年不明. 2026年10月20日アクセス.
[3] 厚生労働省. 理学療法士(PT). 職業情報提供サイト(job tag). https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/167. 発行年不明. 2026年10月20日アクセス.





