TUG(Timed Up and Go)のカットオフ値の読み方|地域在住高齢者と脳卒中後の論文から

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TUGカットオフ値の真実!13.5秒で転倒リスクは測れる?
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TUGのカットオフ値、例えば「13.5秒」という数字だけを見て、臨床判断にどう使えばよいのか迷うことはないでしょうか。

この数字は、対象集団や感度・特異度とセットで読まないと、使い方を誤る可能性があります。

この記事では、地域在住高齢者を対象としたBarry 2014のメタ解析と、脳卒中後を対象としたMatsumoto 2024のスコーピングレビューを、それぞれの対象・条件とともに整理します。

公開されている論文の本文をもとに、言えることと言えないことを分けて見ていきます。今回扱う研究では、TUGのカットオフ値だけで個人の転倒を予測できるとはされていません。この点を確認します。

目次

TUGの位置づけと、カットオフ値の読み方

TUGの位置づけと、カットオフ値の読み方

TUGとは

TUG(Timed Up and Go test)は、1991年に、Get Up and Goテストを時間計測式に改変して開発された評価です[1]。

転倒リスクの高い人を見つけるためのスクリーニングツールとして、臨床で広く使われています[1]。

「13.5秒以上」というカットオフ値は、2000年にShumway-Cookらが示したもので、よく引用される数値です[1]。Barry 2014のメタ解析でも、転倒の高リスク者を分類する値として、この13.5秒が使われています[1]。

カットオフ値は、対象と条件ごとに値が異なる

カットオフ値は、対象集団や条件によって変わります。

同じ「13.5秒」という数字でも、

  • 地域在住の高齢者を対象とした研究
  • 脳卒中後の方を対象とした研究

では、報告されている精度も、数値の意味合いも異なります。この違いは、次の項目から具体的な数値とあわせて整理します。

なお、この記事はカットオフ値の解釈に絞り、測定手順は扱いません。

地域在住の高齢者で確認できること(Barry 2014)

地域在住の高齢者で確認できること(Barry 2014)

TUGのカットオフ値でよく引用されるのが、Barry 2014のメタ解析です[1]。

この結果は、80%以上が地域在住、または自立・セルフケア可能とされた高齢者を含む研究から得られています。25の研究をレビューし、そのうち10のデータセット・合計2,314人分をメタ解析にまとめています[1]。施設入所者が多い研究や、特定の疾患に限定した研究は含まれていません。

感度・特異度

感度は転倒した人のうち高リスクと分類できた割合、特異度は転倒しなかった人のうち低リスクと分類できた割合です[1]。

13.5秒以上をカットオフとした場合、抄録では特異度0.74(95%CI 0.52〜0.88)、感度0.31(95%CI 0.13〜0.57)と報告されています[1]。

なお、本文(Predictive accuracy)では、特異度0.73(95%CI 0.51〜0.88)、感度0.32(95%CI 0.14〜0.57)と、わずかに異なる数値が記載されています[1]。この記事では、抄録の値を主に示します。

著者らは、感度より特異度が高いことから、TUGは転倒を「除外する(ruling out)」ためよりも「見込む(ruling in)」ために有用だとしています[1]。ただし、感度が0.31と低いため、13.5秒未満であることをもって転倒しないと判断することはできません。

条件による推定値の変動

解析から特定の研究を除いた5通りの感度分析(「できるだけ速く」実施した研究、追跡期間が1年でない研究、選択バイアスのある研究、検査の記載が不明確な研究、転倒の定義が不明確な研究をそれぞれ除く)では、感度は0.28〜0.44、特異度は0.64〜0.81の範囲でした[1]。同じ13.5秒でも、どの研究を含めるかによって推定値が動きます。

著者らは、研究間でTUGの実施方法にばらつきがあり、靴、床面、椅子の座面と肘掛けの高さ、線まで歩くか床の印まで歩くかといった条件が十分に報告されていないことを、限界として挙げています[1]。

また、ROC曲線分析では、曲線下面積(AUC)は0.57(95%CI 0.54〜0.59)で、著者らはTUGの判別能力は限定的としています[1]。

著者らの結論

著者らは、地域在住の高齢者において、TUGの転倒予測能力は限定的であり、TUGだけで転倒の高リスク者を同定すべきではないと結論づけています[1]。

脳卒中後で確認できること(Matsumoto 2024)

脳卒中後で確認できること(Matsumoto 2024)

脳卒中後の転倒リスクのスクリーニングについては、Matsumoto 2024(J Rehabil Med)という、10か国21研究を対象にしたスコーピングレビューがあります[2]。

対象は脳卒中を経験した人で、急性期の入院中の転倒を扱う研究は除外されています[2]。

TUGは21研究のうち4研究で使われていました。感度・特異度が50%を超えるカットオフ値を算出できた3研究では、

  • カットオフ値:15〜19秒
  • AUC:0.66〜0.70

という結果でした[2]。

著者らは、AUCは低く精度は限られるとして、TUGのカットオフ値だけに頼ることには注意が必要と述べています[2]。

地域在住高齢者の値(Barry 2014)とは、対象も条件も異なります。数値を単純に比べることはできません。この論文から言えるのは、数値には幅があり、精度にも限界があるという点までです。

この資料から言えることと、言えないこと

この資料から言えることと、言えないこと

2つの研究は、対象も、カットオフ値も、精度の指標も異なります[1][2]。

  • 地域在住の高齢者:13.5秒以上、感度0.31・特異度0.74(本文では0.32・0.73)[1]
  • 脳卒中後:15〜19秒、AUC 0.66〜0.70[2]

対象が違うため、数値の大小で優劣を比べることはできません。

また、今回扱った2つの研究の著者は、いずれも、TUGのカットオフ値だけで転倒リスクを判断しないよう述べています[1][2]。

この2つの論文からは、個々の患者の転倒を予測できるかどうかや、TUGの具体的な測定手順は分かりません。

まとめ:カットオフ値は、対象と条件とセットで読む

まとめ:カットオフ値は、対象と条件とセットで読む
  • TUGのカットオフ値は、対象集団や条件によって、数値も精度も変わる
  • 地域在住高齢者(Barry 2014):13.5秒以上で感度0.31・特異度0.74(抄録の値。本文では0.32・0.73)。著者らは、予測能力は限定的としている[1]
  • 脳卒中後(Matsumoto 2024):15〜19秒、AUC 0.66〜0.70。精度は限られる[2]
  • 今回扱った2つの研究は、いずれもTUGだけで判断しないよう述べている

数値だけを切り出して、疾患や年齢を問わず当てはめることは避け、対象・条件とセットで読みます。

引用文献

[1] Barry E, Galvin R, Keogh C, Horgan F, Fahey T. Is the Timed Up and Go test a useful predictor of risk of falls in community dwelling older adults: a systematic review and meta-analysis. BMC Geriatr. 2014;14:14. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3924230/

[2] Matsumoto H, et al. Screening cutoff values to identify the risk of falls after stroke: a scoping review. J Rehabil Med. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11520422/

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TUGカットオフ値の真実!13.5秒で転倒リスクは測れる?

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