NRS・VAS・VRS・フェイススケール。痛みの自己評価のスケールをどう使い分けるか、根拠を持って説明しにくいと感じることがあります。
この記事では、成人の痛みの自己評価スケールを比べたレビュー(Safikhani 2018)をもとに、そこで確認できる使い分けの傾向と、その限界を整理します。
オープンアクセスで読めるレビューの本文に基づいています。このレビューは、臨床試験などで使う患者報告アウトカム(PRO)尺度の反応スケールの選び方を調べたもので、理学療法の臨床での使い分けを直接検証したものではありません。
このレビューは、何を調べたものか

Safikhaniらのレビュー(2018年)は、成人の痛みを測定する反応スケール(NRS・VAS・VRS・フェイスなど)の選択の根拠を、文献から整理したものです[1]。
文献は、Embase・MEDLINE(2004〜2014年、英語のみ)と、2つの学会の抄録(2012〜2014年)を検索しています。6,918件の抄録を適格基準で確認し、対象件数は、抄録では42件(レビュー記事・合意ガイドライン・専門家意見・一次研究)、結果の節ではレビュー・合意ガイドライン・専門家意見14件と一次研究29件と記載されています。(注:結果の節の合計は43件で、抄録の42件と一致しません。この記事では原文の記載をそのまま併記しています)[1]。
資金は、PRO ConsortiumのMeasurement Projects Fundで、コンソーシアムはFDAの助成を一部受けています。著者の一部は製薬企業の従業員で、利益相反が開示されています[1]。
NRS・VAS・VRS・フェイスは、どう比べられたか

| スケール | レビューで確認できたこと |
|---|---|
| NRS | ガイダンス文書で最も多く推奨された。直接の実証研究29件のうち11件がNRSを他のスケールと比べ、VASより実施・採点が容易、反応性が高い、などの結果が挙げられた。他のスケールよりやや優れた測定特性(信頼性・妥当性・反応性など)が示された |
| VAS | 患者はVRS・NRSを好み、欠損データが多く、高齢者やオピオイド使用者に分かりにくいとされた。一方で、VASを信頼性・感度の高い方法とする専門家意見もある |
| VRS | 直接比較の研究が3件。VRS・NRS・VASはいずれも変化に敏感で、VRSは教育水準に左右されないとされた。英国の介護施設の1研究では、最も良好だった |
| フェイス | NRSと同程度に理解された研究がある。スワヒリ語圏の患者では、フェイスが好まれた研究もある |
出典:[1]
レビューでは、NRSが最も推奨され、測定特性がやや優れるとされました。一方で、VASを評価する意見や、VRS・フェイスが好まれた状況もあり、NRSだけが選ばれる、とはされていません。
選ぶときの条件(レビュー内の記載)
- 11段階のNRS(0=痛みなし、10=想像できる最も強い痛み)は、Dworkin 2005の合意ガイドラインが推奨しています。レビューの著者らも、認知機能障害のない成人では最適な可能性が高いとしています[1]
- VASについて、Dworkin 2005は、患者はVRS・NRSを好み、欠損データが多く、高齢者やオピオイド使用者に分かりにくいとしています。一方、Ong and Seymour 2004の専門家意見は、VASを、最も信頼性と感度が高い方法だろうとしており、評価は一致していません[1]
- 認知機能障害がある場合は、レビュー内のDworkin 2005が、NRSでの評価が難しいことがあり、VRSのほうが容易かもしれない、としています[1]
- 英国の介護施設の1研究では、VRSが最も良好で、次がNRSでした(Schofield 2006のレビュー内)[1]
- フェイスは、NRSと同程度に理解された研究がある一方、スワヒリ語圏の患者では、フェイスが好まれた研究もあります。フェイスの測定特性そのものを評価した記載は、確認した範囲にはありません[1]
著者らの結論と、この資料から言えないこと

抄録の結論は、「実証研究とレビュー記事は、11段階のNRSが、認知機能障害のない成人の痛みを評価する最適な反応スケールである可能性が高いという根拠を示している」というものです[1]。本文の結論でも、文献全体としてNRSが望ましいスケールであることを支持している、とされています[1]。
著者ら自身が、次の限界を挙げています[1]。
- 急性痛・慢性痛などの痛みの表現型ごとの検討はしていない
- 単一項目の質問と、多次元の質問票を区別していない
- 認知機能障害のある人、小児、観察者による評価は対象外
- 文献検索は2015年初めで、2004〜2014年の英語論文に限る(2014年以降を簡単に確認した範囲では、結論を変える重要な根拠は見つからなかったとされている)
このため、レビューの結論は、認知機能障害のない成人が対象で、臨床試験などでのPRO尺度の選び方についてのものです。NRSの何点以上が強い痛みか、個々の患者にどのスケールを使うべきか、といった点は、この資料からは分かりません。
まとめ:痛みのスケールは、対象と目的とセットで選ぶ

- レビューでは、NRSが最も推奨され、測定特性がやや優れるとされた
- VASには欠損データの多さが指摘される一方、評価する専門家意見もある。VRSやフェイスが好まれた研究もある
- 結論の対象は、認知機能障害のない成人で、臨床試験などでのPRO尺度の選び方
スケールを選ぶときは、対象に認知機能障害がないか、どの場面で何のために測るのかを、先に確認する方法があります。
引用文献
[1] Safikhani S, Gries KS, Trudeau JJ, et al. Response scale selection in adult pain measures: results from a literature review. J Patient Rep Outcomes. 2018;2:40. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6127068/. 2018. 2026年10月22日アクセス.





