脳卒中リハビリを勉強しようと本屋さんに行ってはみたものの、専門書の多さに圧倒されて、結局何も選べずに帰ってきた…なんて経験、ありませんか。
この記事では、評価・治療技術・高次脳機能障害という学習テーマと、新人〜中上級者という経験年数を掛け合わせながら、今のあなたに合った一冊がどれなのか具体的にわかるようにご紹介していきますね。
出版社の公式情報として公開されている発行年や版、対象読者、目次といった書誌情報をひとつずつ確認した上で選んでいますので、根拠を持って選書の理由をお伝えできるかなと思っています。
脳卒中リハビリの本選びは目的別に分けると失敗しない

脳卒中のリハビリ本は種類が多く、いきなり選ぼうとすると迷ってしまいますよね。まずは「評価」「治療」「高次脳機能障害」の3軸で整理してみるのがおすすめです。そのうえで、同じ「評価」を学ぶにしても新人か中堅かで手に取るべき一冊は変わってきますので、この記事では目的軸と経験年数軸をあわせて見ていきます。
「評価」「治療」「高次脳機能障害」の3軸で整理する
- 評価・予後予測:『脳卒中機能評価・予後予測マニュアル』[1]、『脳画像の読み方』[2]
- 治療:『脳卒中理学療法マネジメント』[3]、『脳卒中理学療法の理論と技術 第5版』[4]
- 高次脳機能障害:『高次脳機能障害学 第3版』[5]
これに加えて、入門段階では『First STEP』[6]や『脳卒中リハビリテーションマニュアル』[7]、確認用の一次資料としては『脳卒中治療ガイドライン』[8]を手元に置く、という位置づけです。なお、書籍の情報の新しさは発行年(今回紹介する本は2013〜2025年刊)によっても変わるため、発行年にも目を向けておくと安心です。
経験年数別の本の選び方早見表
- 新人・実習生:『First STEP』(全体像の把握)、『脳卒中リハビリテーションマニュアル』(急性期〜維持期の基礎知識)
- 若手:『脳画像の読み方』(画像所見と症状の結びつけ)、『機能評価・予後予測マニュアル』(評価と予後予測)
- 中堅以上:『脳卒中理学療法マネジメント』『理論と技術 第5版』(治療の思考過程と網羅的な理論・技術)、『高次脳機能障害学』(高次脳機能障害の専門的な学習)
評価法を体系的に学べるおすすめの本
評価と予後予測を体系的に学べる書籍
評価と予後予測をセットで学びたいなら『脳卒中機能評価・予後予測マニュアル』が候補です。予後予測はゴール設定や入院期間の見通しに欠かせません[1]。
- 第Ⅰ部:予後予測のための脳卒中機能評価(11章)
- 第Ⅱ部:脳卒中機能予後予測(6章)
- 第Ⅲ部:予後予測の実践事例(7症例)
- 第Ⅳ部:評価マニュアル
という構成で体系的にたどれます[1]。ただし2013年刊行なので、最新知見は他資料で補うと安心です。
脳画像から症状と予後をイメージする書籍
画像の見方が分からない方には『リハに活かす!機能解剖から学ぶ脳画像の読み方』が向いています。機能解剖・機能連携の視点で症状・経過・予後をイメージでき、初学者にも理解しやすい内容です[2]。
治療技術・アプローチを学べるおすすめの本

臨床推論をどう治療につなげるか、新人時代からの悩ましいテーマですよね。ここでは目的別に2冊をご紹介します。
基本動作の臨床推論から治療へつなぐ書籍
座位・立ち上がり・立位・歩行という基本動作から学びたいなら、『脳卒中理学療法マネジメント』が候補です[3]。「仮説→検証(評価)→治療」という流れでクリニカルリーズニングを習得できる構成が特徴で、章立ては次のとおりです。
- 第1章:思考過程と高次脳機能への対応
- 第2章:病態と改善方法
- 第3章:「仮説→検証(評価)→治療」に沿った解説
- 第4章:ケーススタディ
「なんとなく治療している気がする…」という方は、一度目を通してみるのもおすすめです。
治療理論と技術を網羅するレファレンス
より網羅的に理論と技術を押さえたいなら、『脳卒中理学療法の理論と技術 第5版』が候補です[4]。出版社の紹介では『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕』に対応し、栄養管理と機能的電気刺激の項目が新規追加されています。
- 解剖生理学の知識
- 脳卒中の病態と治療
- 評価の知識
- 理論と理学療法(超急性期〜回復期、歩行練習、CI療法、ニューロリハビリテーション、嚥下理学療法など)
分量が多い網羅的な一冊なので、通読というより「困ったときに開く辞書」として手元に置く使い方が合いそうです。
高次脳機能障害を学べるおすすめの本
高次脳機能障害の全体像がわかる教科書
高次脳機能障害を体系的に学ぶなら、『高次脳機能障害学 第3版』が中心的な一冊になりますね[5]。新しい診断基準や検査評価法を追加・修正した改訂版で、出版社の紹介では「初学者から臨床家まで必読」とされています[5]。図表も充実しています。
脳卒中で遭遇する症状はどの章で学ぶか
脳卒中の臨床で出会いやすい症状は、以下のように章立てが整理されています[5]。
- 失語・失行・失認:第2〜4章
- 無視症候群:第5章
- 注意・記憶・遂行機能:第6章
運動麻痺に目が向きやすい分、こうした症状の評価も意識して確認したいですね。
新人・若手PTにおすすめの入門書

ここまで「評価」「治療」「高次脳機能障害」という目的別に本を紹介してきましたが、どの目的の本から手を付けてよいか迷う場合は、経験年数を軸にして選ぶという方法もあります。特に新人〜若手のうちは、3つの目的を横断して脳卒中全体の地図を先につかんでおくと、後から目的別の専門書に進みやすくなります。
卒後1〜3年目が最初に読むべき1冊
まず1冊を通読して脳卒中全体の地図を頭に入れる、という選び方から始めてみるのもおすすめですね。
その候補になるのが『脳卒中リハビリテーション治療・支援のFirst STEP[Web動画付]』です[6]。PT・OTの初学者向けに、画像の見方から病態、運動麻痺、治療デバイス、歩行練習まで全10章で網羅し、Web動画で動作イメージも補える構成です。
リスク管理から社会資源まで押さえる実用書
臨床に出るとすぐ直面するのが、リスク管理やゴール設定、社会資源の知識ですよね。
その点を一冊でカバーできるのが『脳卒中リハビリテーションマニュアル』です[7]。急性期から維持期・在宅まで、評価・治療・チーム医療・社会資源を体系立てて確認できます。ただし2014年刊のため、最新のガイドライン情報は別資料で補う必要がある点は押さえておきたいところです。
専門性を高めたいPT向けの中〜上級書
評価・治療・高次脳機能障害それぞれの専門書で知識を積み上げてきた方が、次に手元に置いておきたいのが、すべての土台となる一次資料です。
ガイドラインの推奨を手元で確認する
中堅以上になると、一次資料を手元に置いておきたくなります。
欠かせないのが『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』[8]です。140項目中52項目が改訂され、Ⅳくも膜下出血、Ⅶ亜急性期以後のリハビリテーション診療なども収録されています[8]。
なお『脳卒中理学療法の理論と技術 第5版』[4]が対応しているのは一つ前の「改訂2023」です。教科書とガイドラインは発行年をセットで確認する視点を持つのがおすすめです。
刊行年の古い書籍は最新の知見で補う
『脳卒中機能評価・予後予測マニュアル』(2013年刊)[1]や『脳卒中リハビリテーションマニュアル』(2014年刊)[7]は、刊行から年数が経っている点に注意が必要です。こうした書籍は単独で使わず、最新のガイドラインや新しい書籍・論文と組み合わせて補完するのが安全です。発行年を確認したうえで、最新情報で補いながら使う感覚がちょうど良いのではないでしょうか。
まとめ:理学療法士におすすめの脳卒中本

ここまで、評価・治療技術・高次脳機能障害という3つの切り口と、新人〜中上級者という経験年数の切り口をあわせて、おすすめの本を紹介してきました。
大切なのは、「今の自分に必要な視点」で本を選ぶことですね。
- 評価の型がまだ不安な新人さんは、まず評価の基本書から
- 治療の引き出しを増やしたい中堅の方は、治療技術の専門書へ
- 高次脳機能障害への苦手意識がある方は、その分野に絞った1冊を
- まだ全体像がつかめていない新人〜若手の方は、目的別の専門書より先に入門書を1冊通読するのもおすすめ
- 中堅以降で知識を最新化したい方は、ガイドラインなどの一次資料もあわせて手元に
こんなふうに、目的と経験年数を軸に選んでいただけると、無駄なく知識が積み上がっていくと思います。
一気に全部読もうとせず、今の自分に一番刺さる1冊から手に取ってみる。それくらいのペースで十分ではないかと感じています。
この記事が、あなたの臨床の引き出しを増やす一助になれば嬉しいです。
引用文献
[1] 道免和久, 編. 脳卒中機能評価・予後予測マニュアル. 医学書院; 2013. https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/84349. アクセス日: 2026年09月22日.
[2] 佐々木信幸, 編. リハに活かす!機能解剖から学ぶ脳画像の読み方—症状・経過・予後を予測し臨床に役立てる. 羊土社; 2024. https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758110037/. アクセス日: 2026年09月22日.
[3] 杉本諭, 藤野雄次, 編. 理学療法マネジメントシリーズ 脳卒中理学療法マネジメント. メジカルビュー社; 2022. https://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN978-4-7583-2053-5.html. アクセス日: 2026年09月22日.
[4] 原寛美, 吉尾雅春, 編. 脳卒中理学療法の理論と技術. 第5版. メジカルビュー社; 2025. https://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN978-4-7583-2278-2.html. アクセス日: 2026年09月22日.
[5] 石合純夫. 高次脳機能障害学. 第3版. 医歯薬出版; 2022. https://www.ishiyaku.co.jp/search/details?bookcode=266510. アクセス日: 2026年09月22日.
[6] 川手信行, 監修. 髙橋忠志, 栗田慎也, 編. 脳卒中リハビリテーション治療・支援のFirst STEP[Web動画付]. メジカルビュー社; 2023. https://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN978-4-7583-2091-7.html. アクセス日: 2026年09月22日.
[7] 宮越浩一, 編. 脳卒中リハビリテーションマニュアル. 医学書院; 2014. https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/84828. アクセス日: 2026年09月22日.
[8] 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会, 編. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕. 協和企画; 2025. https://www.kk-kyowa.co.jp/stroke2021/. アクセス日: 2026年09月22日.





