「転んでお尻を打ってから、足の付け根が痛くて歩けない…もしかして骨折?」
「大腿骨転子部骨折って診断されたけど、ガンマネイル手術って何?」
大腿骨転子部骨折は、高齢者に多い骨折の一つで、歩行能力の低下に直結する可能性があります。
手術が必要になることも多く、その際に用いられるのが「ガンマネイル」と呼ばれるものです。
今回は、理学療法士の「PTケイ」が、大腿骨転子部骨折の手術、特にガンマネイルについて、患者さんや新人理学療法士さんにもわかりやすく解説していきます。
大腿骨転子部骨折とガンマネイル手術の概要
2010年 日本の研究グループは、大腿骨転子部骨折に対するガンマネイル手術についての比較検討を行いました(針金ら 2010)。
その結果、ガンマネイルには様々な種類があり、それぞれ特徴があることが報告されています。
また、2017年上甲らの研究グループは、TFNAについての研究を行いました(上甲ら 2017)。
その結果、TFNAは、髄腔へのフィット感が向上していると報告されています。
ガンマネイルとは?
ガンマネイルとは、大腿骨転子部骨折の治療に用いられる髄内釘の一種です。
髄内釘とは、骨折した骨の内部(髄腔)に挿入して固定する金属製の棒状の器具です。
TFNAやPFNAといった名称を聞いたことがあるかもしれませんが、これらは全てガンマネイルの一種です。
ガンマネイルの種類と特徴
ガンマネイルには、主に以下の3つの種類があります。
- Gamma3 U-Lag screw (Stryker社)
- ラグスクリューの先端でU字型のブレードが広がり、骨との接触面積を増やします。
- 回旋安定性とカットアウト(後述)抵抗力を向上させています。
- スクリューのスレッド(ネジ山)が軸方向に対して垂直面をなし、軸方向への移動抵抗力に優れています。
- PFNA: Proximal Femoral Nail Antirotation (Synthes社)
- 先端をブレード状にし、骨との接触面積を大きくして、カットアウト抵抗力を向上させています。
- ブレードの断面をレモン型にし、骨頭との間の回旋運動に対する抵抗力を向上させています。
- ブレード状のためスレッドがなく、軸方向への移動抵抗力が小さいという側面もあります。
- TFN-ADVANCED Proximal Femoral Nail Antirotation (Synthes社)
- PFNAを改良し、髄腔へのフィット感を向上させたものです。
- ラテラルカットの延長、ベンドポイントの上方移動、ネイル近位径の短縮などの変更点があります。

針金弘之, 他:大腿骨転子部骨折に対するGamma3 U-lag screwとPFNAの比較検討.骨折, 32(2),349-352, 2010.より引用

針金弘之, 他:大腿骨転子部骨折に対するGamma3 U-lag screwとPFNAの比較検討.骨折, 32(2),349-352, 2010.より引用
大腿骨転子部骨折の手術で知っておきたいこと
三点固定の原則とは?
ピンやスクリューで固定する場合、スクリュー刺入部、頸部内側皮質、スクリュー先端の3点で固定することで、骨頭の内反転移(骨が内側に曲がってしまうこと)を防止する原則です。
しかし、中間部剪断骨折や頚基部骨折では、三点固定が難しいため、角度安定性のあるSliding Hip Screw(SHS)が用いられることが多いです。
カットアウトとは?
骨頭頸の短縮により、骨頭側からスクリューやピンが飛び出してしまう現象です。
ガンマネイルにおいては、特に注意が必要な合併症の一つです。
テレスコーピングとは?
携帯型望遠鏡のように、重なり合った筒が伸び縮みする構造のことです。
SHSやShort femoral nailなどに搭載されており、スクリューが骨頭頸の短縮に伴い抜けてしまうのを防ぎます。
しかし、過度のテレスコーピングは、治療成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
ラグスクリューに求められることとは?
ラグスクリューとは、ガンマネイルの部品の一つであり、大腿骨頭に挿入されるネジのことです。
カットアウト、回旋運動、軸方向へのスライディングなど、あらゆる方向への移動に対する抵抗力が求められます。
【日常生活での注意点】転倒予防と骨粗鬆症対策
大腿骨転子部骨折の多くは、転倒によって起こります。
高齢者の場合、骨粗鬆症によって骨がもろくなっていることが多いため、ちょっとした転倒でも骨折してしまうことがあります。
転倒予防のためには、以下のようなことに気をつけましょう。
- 家の中の段差をなくす
- 手すりを設置する
- 滑りにくい靴を履く
- 適度な運動で筋力やバランス能力を維持する
また、骨粗鬆症の予防と治療も重要です。
食事、運動などの生活習慣を改善しましょう。
まとめ|大腿骨頸部骨折の治療と知識
今回は、大腿骨転子部骨折の手術、特にガンマネイルについて解説しました。
ガンマネイルには様々な種類があり、骨折のタイプや患者さんの状態に合わせて適切なものが選択されます。
手術後のリハビリテーションも重要です。理学療法士の指導のもと、焦らず、着実に機能回復を目指しましょう。
参考文献
- 針金弘之, 他:大腿骨転子部骨折に対するGamma3 U-lag screwとPFNAの比較検討.骨折, 32(2),349-352, 2010.
- 上甲健二, 他:CTを用いたTFNAの適合性評価.中部整災誌, 60, 117-118, 2017.
本記事は、大腿骨転子部骨折に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。
大腿骨転子部骨折などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。