はじめに：「悔しい…」その感情こそ、成長の起爆剤になる
高い目標を掲げて努力したにもかかわらず、届かなかった経験。
特に、キャリアを左右するような資格試験での不合格は、言葉にできないほどの悔しさと無力感をもたらします。
2018年、私もまた、2年間という時間を費やし、2度目の挑戦となったBiNIアプローチのアシスタント試験で不合格という結果を突きつけられました。
当時のブログには、「予想通りだった」と強がりながらも、「悔しすぎる」という正直な気持ちが綴られています。
それは、自分の努力や知識が、求められるレベルに達していなかったという厳しい現実を直視させられた瞬間でした。
しかし、今振り返ると、あの「失敗」こそが、私の理学療法士としての在り方や学習方法を根本から見つめ直す、最も価値のある転機だったと確信しています。
この記事では、当時の私の痛恨の失敗談を元に、単なる精神論ではない、「失敗」という名の貴重なフィードバックをいかに分析し、次なる飛躍のための具体的な成長戦略へと昇華させていくか、その思考プロセスと実践法について、2025年の視点からお伝えします。
1. 失敗の解剖学：なぜ私は「あと一歩」が届かなかったのか？
「頑張りが足りなかった」と一言で片付けてしまうのは簡単です。
しかし、それでは次に繋がりません。
まずは、当時の私がなぜ不合格という結果に至ったのか、その要因を冷静に分析することから始めます。
- 要因①：リソースの分散と戦略の欠如 当時の私は、認定理学療法士試験とBiNIアシスタント試験という、二つの大きな目標を同時並行で追いかけていました。その結果、一つの目標に注力できる時間とエネルギーが分散し、特にBiNIアプローチに対する学習量が絶対的に不足してしまいました。「両方頑張る」という意気込みが、結果として「どちらも中途半端」というリスクを生んでいたのです。
- 要因②：「知っている」と「できる」の致命的なギャップ 試験で求められていたのは、単に教科書の内容を知っていることではありませんでした。「その知識を咀嚼し、簡潔に説明し、根拠を持って実践し、それを相手に伝えながら実行できるレベル」でした。私に欠けていたのは、まさにこの「血肉として活用できる知識」への転換プロセスでした。知識が点として存在し、臨床の文脈の中で線や面として繋がっていなかったのです。
- 要因③：外的要因を「言い訳」にしてしまう思考の癖 「年度末は仕事が忙しく、勉強できない状態になってしまう」「新しい内容がテストに出た」…。これらは事実かもしれませんが、同時に、自分の準備不足を外的要因に転嫁しようとする思考の表れでもありました。本当に求められるレベルとは、「どんな状況下でも安定してパフォーマンスを発揮できる状態」であり、そのレベルに到達するための準備ができていなかった、という事実に他なりません。
2. 「失敗」を最強の学習ツールに変える思考転換
この手痛い失敗経験は、私に「頑張る」ことの意味を問い直し、学習へのアプローチを根本から変えるきっかけを与えてくれました。
思考転換①：「頑張る」から「設計する」へ – GTDシステムの再構築
「気合と根性で乗り切る」というアプローチには限界があります。
特に、多忙な社会人が継続的に学び、成果を出すためには、意志力に頼るのではなく、成果を生み出すための「仕組み（システム）」を設計することが不可欠です。
当時、私が「GTDシステムの再構築」に思い至ったのは、まさにこの点に気づいたからです。
- 情報のインプット方法: いつ、どの情報を、どのようにインプットするのか？
- 情報の整理・保管方法: 学んだ知識を、いかにして検索・再利用可能な形で蓄積していくのか？（当時の私はEvernoteの活用を模索していました）
- タスク管理と計画: 複数のプロジェクト（仕事、試験勉強、プライベート）を、どのように優先順位付けし、実行可能なタスクへと落とし込むのか？
失敗は、自分の学習・情報管理システムのどこに欠陥があったのかを教えてくれる、最高の「デバッグツール」です。
システムを再構築し、「無駄を最小限にし、必要な知識を効率的に蓄え、活用できる仕組み」を作ることで、初めて持続可能な成長が可能になります。
思考転換②：「知識の量」から「臨床での実践」へ – 現場こそが最高の学びの場
試験に落ちた悔しさの中で、私が改めて強く感じたのは、「結局は目の前の患者様に対して、深く考え、行動し、対応していけることが重要」だという、理学療法士としての原点でした。
資格や知識は、それ自体が目的なのではなく、あくまで患者さんのQOLを向上させるための「手段」です。
試験勉強で得た知識も、日々の臨床で「この患者さんの場合はどうだろうか？」「このアプローチはなぜ効果的なのか？」と自問自答し、試行錯誤する中でしか、本当の意味で「自分のもの」にはなりません。
失敗を機に、インプット偏重の学習から、日々の臨床の一つひとつを「学びの機会」と捉え、アウトプットを通じて知識を血肉に変えていくという意識へとシフトすることができました。
思考転換③：「プライド」と向き合い、謙虚に学び直す
「2年間やれるだけやって、2回試験に落ちる」という現実は、正直に言って、非常にプライドが傷つく経験でした。
しかし、この経験は、自分自身の「現在地」を謙虚に受け入れ、本当に足りないものは何かを直視する機会を与えてくれました。
- 「自分はもっとできるはずだ」という過信を捨てる。
- 「わからないこと」を素直に認め、学び直す。
- 他者からのフィードバックを真摯に受け止める。
このプロセスを経て、初めて真の成長が始まります。
悔しさや挫折感は、時に私たちを強く、そして謙虚にしてくれるのです。
まとめ：失敗は「終わり」ではない。「再設計」の始まりだ
誰しも失敗は避けたいものです。
しかし、高い目標に挑戦する限り、失敗や挫折は避けて通れない道かもしれません。
重要なのは、その失敗をどう受け止め、次にどう繋げるかです。
- 感情的に落ち込むだけでなく、失敗の要因を客観的に分析する。
- 意志力に頼るのではなく、失敗を繰り返さないための「仕組み」を再設計する。
- 知識のインプットだけでなく、日々の実践（アウトプット）で血肉に変えることを意識する。
- 傷ついたプライドと向き合い、謙虚に学び直す勇気を持つ。
これらの思考プロセスを経ることで、失敗は単なる「負の経験」から、自分を次のステージへと押し上げるための最もパワフルな「成長のエンジン」へと姿を変えます。
2018年当時、試験に落ちた私は、悔しさの中でブログの質を上げることを誓いました。
それは、自身の思考を整理し、学びを深めるための、私なりの「システム再構築」の一歩でした。
もし今、あなたが何らかの壁にぶつかっているのなら、それはあなたにとって、これまでの自分を乗り越え、大きく飛躍するための絶好の機会なのかもしれません。
