「毎日、同じ病院、同じような業務の繰り返し… たまには違う環境で自分の力を試してみたい」
「今の働き方、本当にこのままでいいんだろうか…?」
そんな風に、日々の業務に追われながらも、自身のキャリアや働き方について漠然とした疑問や願望を抱いている理学療法士の方、あるいは他の医療従事者の方はいませんか?
私は普段、回復期リハビリテーション病院という、急性期を脱した患者さんが集中的にリハビリを行い、在宅復帰を目指す環境で理学療法士として働いています。
しかし、幸運なことに、月に一度だけ、法人内の関連施設であるデイサービスで「副業」としてバイトをする機会を得ています。
本業とは全く異なる環境、役割、そして勤務時間。
この月イチのバイト経験は、私に多くの学びを与えてくれると同時に、自分自身の「理想の働き方」と「厳しい現実」について、深く、そして真剣に考えさせられる貴重なきっかけとなりました。
この記事では、私のリアルな副業(バイト)体験談と、そこから見えてきたワークライフバランスやキャリアに対する考えの変化について、包み隠さずお話ししたいと思います。
あなたの働き方や今後のキャリアを考える上で、何かしらのヒントや共感、あるいは反面教師となる部分が見つかれば幸いです。
本業だけでは得られない「学び」と「気づき」
なぜ、私がこの月イチバイト経験を「貴重だ」と感じているのか?
それは、本業である回復期病院での業務だけでは決して得られない、多くの「学び」と「気づき」があるからです。
- 異なる環境での経験価値:回復期が「病院から在宅へ」という移行期であるのに対し、デイサービスは「在宅生活を支える」生活期の最前線です。対象となる方の状態や目標、関わる期間、求められる視点も異なります。この違いを肌で感じることは、リハビリテーションというものをより広く、深く理解する上で非常に重要です。
- 指導経験によるスキルアップ: バイト先では、若手スタッフへの臨床指導も役割の一つです。人に教えるためには、自分自身の知識や技術を再確認し、分かりやすく言語化する必要があります。これは、自身のスキルを棚卸しし、体系的に整理する絶好の機会となります。「教えることは、最も効果的な学びの手段である」ことを実感しています。
- 視野の拡大と多角的な視点: 普段関わることの少ない職種の方(デイサービスの介護スタッフさんなど)と連携したり、異なる運営方針に触れたりすることで、物事を多角的に捉える視点が養われます。
- 自身の働き方を客観視する機会: いつもと違う環境に身を置くことで、普段当たり前だと思っている本業の働き方や環境を、客観的に見つめ直すことができます。これが、後述する「働き方への意識の変化」に繋がりました。
このように、副業バイトは単なる収入源ではなく、自己成長のための貴重な投資でもあるのです。
いざ、デイサービスへ!回復期PT、月イチバイトの始まり
私がこのバイトをできるようになったのは、勤め先の法人内にそうした制度があったからです。
リハビリテーション部内には経験年数などに応じた階層があり、一定のレベルに達すると、希望者は関連施設でのバイトに応募できる仕組みになっています。(定員があるため、階層が上の希望者から優先的に選ばれる形です。)
幸運にも私の希望が通り、月に一度、週末にデイサービスで働く機会を得ることができました。
バイト先となるデイサービスは、比較的若手のスタッフさんが中心となって運営されており、常勤の指導的立場のセラピストが不在でした。
そのため、私の役割は、外部からの専門職として、
- 書類(計画書や報告書など)の確認・助言
- 若手スタッフからの臨床的な相談対応や実技指導
が中心となりました。
普段の患者さんへの直接的なリハビリ提供とは少し異なり、「指導者」「アドバイザー」としての側面が強い役割です。
教える喜び、生活期を知る学び:バイトで得られた貴重な経験
実際にバイトを始めてみると、多くの発見がありました。
若手スタッフさんたちは非常に熱心で、日々の臨床で感じている疑問や悩みを率直にぶつけてくれます。
「こういう利用者さんには、どんなアプローチが良いでしょうか?」「この動作分析、合っていますか?」といった具体的な質問に、自分の知識と経験を総動員して答えるプロセスは、非常に刺激的です。
うまく伝えられた時や、彼らが「なるほど!」と納得してくれた時の喜びは、また格別なものがあります。
同時に、生活期リハビリの奥深さも改めて感じています。
回復期では「いかに機能を回復させ、安全に退院させるか」が主眼となりがちですが、デイサービスでは「その人らしい在宅生活を、いかに長く、より良く続けていけるか」という視点がより重要になります。
身体機能だけでなく、生活環境、介護力、本人の意欲、社会参加など、考慮すべき要素は多岐にわたります。
回復期での関わりが、その後の生活期にどう繋がっていくのかを具体的にイメージできるようになり、本業へのフィードバックも大きいと感じています。
実働6時間 vs 8時間+α:勤務時間が問いかける「時間の価値」
そして、このバイト経験が私に与えた最も大きな衝撃は、「勤務時間」の違いでした。
- バイト(デイサービス)の勤務時間:
- 9:00~12:00(3時間)
- 12:00~13:00(休憩1時間)
- 13:00~16:00(3時間)
- 合計:実働6時間、休憩1時間
これに対し、
- 本業(回復期病院)の勤務時間:
- 8:30~12:15(3時間45分)
- 12:15~13:15(休憩1時間)
- 13:15~17:30(4時間15分)
- 合計:実働8時間、休憩1時間
数字だけ見れば、実働で2時間の差です。
しかし、現実はそれだけではありません。本業では、これに加えて月平均15~20時間以上の残業が常態化しており、さらに自宅からの通勤時間は往復で約1時間30分かかります。
バイトの日は、16時に仕事が終わり、通勤時間も短い(もしくは無い)ため、夕方以降に圧倒的な「自由時間」が生まれます。
趣味に時間を使ったり、ゆっくり自己学習したり、家族と過ごしたり…。心身への負担も明らかに軽く、翌日の目覚めも爽快です。
この「実働6時間勤務」を体験してしまったことで、私は本業の働き方に対して、これまで以上に強い疑問を感じるようになりました。
毎日、時間に追われ、疲れ果てて帰宅し、寝るだけの生活。これが本当に自分の望む人生なのだろうか? 「もっと時間にゆとりのある働き方、いわゆる『時間リッチ』な生活を送りたい」という想いが、日に日に強くなっていったのです。
理想と現実の狭間で:立ちはだかる壁と現状分析
「毎日6時間勤務だったら最高なのに…」
そんな理想を抱きつつも、現実は厳しいものです。理想の働き方を実現するためには、いくつかの大きな壁が存在します。
- 時間とお金のトレードオフ: 一般的に、労働時間を短縮すれば、収入も減少します。生活を維持しながら、どうやって時間のゆとりを生み出すか?
- 収入の安定性: 現在の正規雇用という安定した身分を手放し、例えばフリーランスのような働き方を選択した場合、収入の不安定さというリスクをどう管理するか?
- 自身のスキルと市場価値: そもそも、今の自分のスキルや経験で、より自由な働き方を選択できるだけの市場価値があるのか? 収入を維持・向上させられるだけの専門性や付加価値を提供できるか?
これらの点を冷静に自己分析すると、残念ながら、現時点ですぐに本業を辞めてフリーランスを目指したり、大幅な時短勤務を実現したりするのは、非常に困難であると言わざるを得ません。
理想と現実の間には、まだ大きなギャップが存在するのです。
それでも、未来を描く:現状から始める自己成長
しかし、現状を変えるのが難しいからといって、諦めてしまうつもりはありません。
今回のバイト経験は、私に現状への不満だけでなく、「変わりたい」「成長したい」という強い意欲も与えてくれました。
今すぐ大きな変化を起こすことはできなくても、未来の選択肢を広げるために、今日からできることはあるはずです。
- 専門性の深化: 理学療法士としての知識・技術を磨き続けることは、将来の働き方の選択肢を広げる上で最も基本的な要素です。
- 新たなスキルの習得: 例えば、ライティングスキル、マーケティング知識、オンラインでの指導スキルなど、専門職+αのスキルを身につけることで、活躍の場を広げられる可能性があります。
- 情報発信: このブログ活動も、その一環です。自分の考えや経験を発信することで、知識の整理や思考の深化につながるだけでなく、同じような悩みを持つ人との繋がりや、新たなチャンスが生まれる可能性も秘めています。
今はまだ、理想の働き方への道筋は明確には見えていません。
しかし、日々の自己成長を怠らず、アンテナを張り続けることで、いつかチャンスが巡ってきたときに、それ掴むことができる自分でありたい。そう考えています。
あなたの「理想の働き方」は?現状を見つめ直すきっかけに
ここまで、私の個人的な体験談と思いを綴ってきました。
この記事を読んでくださっているあなたに、ぜひ問いかけてみたいことがあります。
- あなたは、今の働き方に心から満足していますか?
- もし何の制約もなかったとしたら、どんな働き方が理想ですか? (働く時間、場所、内容、収入、仕事仲間、仕事から得たいもの…など、具体的に想像してみてください)
- その理想に少しでも近づくために、今のあなたにできる「小さな一歩」は何でしょうか? (情報収集をする、本を読む、誰かに相談する、新しい勉強を始めてみる、副業を探してみる…など)
忙しい毎日の中で、立ち止まって自分の働き方や価値観と向き合う時間を持つことは、簡単なことではないかもしれません。
しかし、この問いかけが、あなたがより自分らしいキャリアを築いていくための、何かしらのきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
まとめ:副業体験はキャリアを見つめ直す羅針盤
今回は、理学療法士である私の月イチ副業バイト体験談を通して、そこから得られた学びや、働き方に対する考え方の変化についてお話ししました。
- 本業とは異なる環境での副業(バイト)経験は、スキルアップだけでなく、自身のキャリアや価値観を見つめ直す貴重な機会となる。
- 理想の働き方(例:時間リッチ)と、現状の働き方(長時間労働、時間的制約)とのギャップを認識することが、変化への第一歩となる。
- 現状をすぐに変えることは難しくても、自己成長への意欲を持ち続け、スキルアップや情報収集を継続することで、未来の選択肢は広がっていく。
副業体験は、私にとって、自分の現在地を確認し、未来への進むべき方向性を照らしてくれる「羅針盤」のような役割を果たしてくれました。現状に甘んじることなく、しかし焦らず、一歩一歩着実に、理想の働き方を模索し続けていきたいと思います。
健康・医学関連情報の注意喚起
本記事は、理学療法士の働き方やキャリアに関する一個人の体験談や考察を述べたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 過重労働やストレスによる心身の不調を感じる場合は、休息を取るとともに、必要であれば産業医や医療機関にご相談ください。特定の疾患などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。