「朝の挨拶を無視された」「会議で意見を遮られた」「陰口を言われているのを聞いてしまった」…
職場で、このような 嫌な経験 をしたことはありませんか?
このような 「無礼な行為」 は、 「ハラスメント」 とまでは言えないまでも、 心の健康 に悪影響を及ぼす可能性があります。
今回は、 職場における無礼な行為 と、 従業員の心の健康 について、最新の研究を交えながら解説します。
職場における「無礼な行為」とは?
職場における 「無礼な行為(Workplace Incivility)」 とは、 「相手を傷つける意図が曖昧で、相互尊重という職場の規範に違反する、低強度の逸脱行動」 と定義されています (Andersson & Pearson, 1999)。
職場で無礼な行為が行われている場面のイメージ
つまり、 悪意 が はっきり としている ハラスメント とは異なり、 「軽い気持ち」 で行われる 失礼な言動 も含まれます。
例えば、
- 軽蔑的な言葉遣い: 「そんなことも分からないの?」「使えないね」
- 他人の前で同僚を貶める: 「あの人は仕事が遅いから」
- 敵意のある視線を向ける: じろじろと睨みつける
- 大声で叫ぶ、罵る: 「なんでできないんだ!」と怒鳴る
- プライベートを侵害する: 休日に仕事の連絡をしてくる、プライベートなことを根掘り葉掘り聞いてくる
無礼な行為が心に与える影響
職場における 無礼な行為 は、 従業員のメンタルヘルス や 仕事のパフォーマンス に 悪影響 を及ぼす可能性があります。
UAEの企業で働く従業員を対象とした研究では、 無礼な行為 を受けた従業員は、 不安 や 抑うつ などの 精神的な不調 を訴えることが多く、 仕事へのモチベーション や 集中力 が 低下 する傾向が見られました (Alshammari et al., 2023)。
また、 無礼な行為 を経験した従業員は、 信頼できる人 に 相談 したり、 経験 を 共有 したりする傾向があることも明らかになりました。
無礼な行為への対処法:コーピング戦略
無礼な行為 に直面した時、人はどのように対処するのでしょうか?
心理学では、ストレスfulな状況に対処するための方法を 「コーピング戦略」 と呼びます。
コーピング戦略には、問題焦点型、情動焦点型、認知的コーピング、社会的支援探索型、気晴らし型など、様々な分類がありますが、今回の論文では、以下の3つのコーピング戦略に焦点を当てています。
- 回避的コーピング:
- ストレスの原因から逃げることで、一時的に不安や緊張を軽減できますが、根本的な解決にはなりません。
- 例:
- 無礼な相手を避ける
- 仕事を休む
- 考えないようにする
- タスク焦点型コーピング:
- 積極的に問題解決に取り組むことで、状況を改善できる可能性があります。
- 例:
- 無礼な行為について相手に伝える
- 上司や人事部に相談する
- 状況を変えるために、部署異動を願い出る
- 感情焦点型コーピング:
- 感情をコントロールすることで、ストレスによる精神的なダメージを軽減することができます。
- 例:
- リラックス法を実践する
- 趣味に没頭する
- 友人や家族に話を聞いてもらう
Alshammari et al. (2023) の研究では、 無礼な行為 を受けた従業員は、 回避的コーピング や 感情焦点型コーピング を用いる傾向があることが分かりました。
つまり、 問題 から 目を背け たり、 感情的 になってしまったりする傾向があるということです。
しかし、 無礼な行為 がエスカレートし、 より深刻な問題 に発展するのを防ぐためには、 タスク焦点型コーピング、すなわち 問題解決 に焦点を当てた 対処法 が重要になります。
具体的には、 無礼な行為 を行った相手に 直接伝える、 上司 や 人事部 に 相談する といった行動が考えられます。
組織ができること
職場における 無礼な行為 を 防ぐ ためには、 組織 の 積極的な取り組み が不可欠です。
従業員が 無礼な行為 や ハラスメント について正しく理解し、 適切な行動 を取れるように、 様々な研修 を実施することが重要です。
例えば、
- アンコンシャスバイアス研修 では、 無意識の偏見 に気づき、 多様な価値観 を尊重することを学びます。
- ハラスメント防止研修 では、 ハラスメント の 定義 や 種類、 防止策 について学びます。
- コミュニケーション研修 では、 相手 に 配慮 した コミュニケーション 方法を学び、 良好な人間関係 を築くためのスキルを習得します。
また、 相談窓口 を設置し、 従業員 が 安心して相談できる環境 を作ることや、 無礼な行為 を 早期に発見 し、 適切な対応 を取ることも重要です。
さらに、 従業員 が ストレス に うまく対処 できるよう、 メンタルヘルス に関する サポート を充実させることも大切です。
自分自身でできること
無礼な行為 を受けた時は、 一人で抱え込まず、 信頼できる人 に 相談 することが大切です。
また、 自分自身 の メンタルヘルス を守るために、 ストレス対処法 を身につけることも重要です。
マインドフルネス や ヨガ、 リラクゼーション など、 ストレス を 軽減 するための方法はたくさんあります。
色々な方法を試してみて、 自分に合った方法 を見つけてみましょう。
さらに、 プロアクティブコーピング の考え方を参考に、 「ストレスに強い自分」 を作ることも重要です。
プロアクティブコーピングとは、将来の目標や挑戦に向けて、積極的に準備し、能力を高めることで、ストレスを軽減し、成長を促す方法です。
目標達成に向けて努力することで、間接的にストレスを軽減し、問題に対処できる能力を高めることができます。
例えば、キャリアアップを目指して資格取得の計画を立て、勉強を始める、起業という目標を達成するためにビジネスプランを作成する、などが挙げられます。
まとめ
職場における 無礼な行為 は、 従業員の心の健康 に 悪影響 を及ぼす可能性があります。
無礼な行為 を 減らす ためには、 組織 の 積極的な取り組み が重要です。
しかし、 ハラスメント にはならないレベルの 軽微な行動 を 完全にゼロにする ことは、 現実的に難しい 場合もあるでしょう。
だからこそ、 従業員一人ひとり が ストレス対処法 を身につけ、 心の健康 を守る努力をすることが大切です。
コーピング戦略 を 理解 し、 実践 することで、 無礼な行為 などの ストレス要因 に うまく対処 し、 心身ともに健康な状態 を保ちましょう。
組織 と 従業員 が 協力 し、 より良い職場環境 を作っていくことが、 無礼な行為 を 減らし、 従業員の心の健康 を守ることに繋がります。
参考文献
- Alshammari, F. M., Al Youha, A. A., & Mohamed, A. A. (2023). Workplace Incivility and its Impact on Employees’ Choice of Coping Strategies: A Mixed-Methods Study. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(17), 8572.