パニック障害は、突然の激しい不安や恐怖に襲われるパニック発作を特徴とする精神疾患です。
発作が生じ、動悸、息切れ、めまい、吐き気など、様々な身体症状を伴い、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

パニック障害の原因は、まだ完全には解明されていませんが、脳の構造や機能に変化が生じている可能性が示唆されています。
従来、パニック障害の診断では、発作時の様子を中心とした問診などが中心で、脳画像検査が行われることはほとんどありませんでした。
しかし、近年の脳科学研究の進展により、パニック障害の病態解明が進み、脳画像検査が診断や治療に役立つ可能性が出てきました。
特に、最新の研究では、脳の 灰白質 の変化に注目が集まっています。
パニック障害と灰白質
脳は、神経細胞が集まってできた灰白質と、神経線維が集まってできた白質で構成されています。
灰白質は、思考、感情、記憶、運動など、様々な機能を担っています。
パニック障害の患者さんの脳では、この灰白質の体積や密度に変化が見られることが報告されています。
最新の研究で何が分かったのか?
An et al. (2023) は、パニック障害患者における灰白質の変化を調べるために、ボクセルベースの形態計測(VBM) 研究のメタアナリシスを行いました。
ボクセルベースの形態計測(VBM) とは、MRI画像を用いて、脳の灰白質の体積や密度を詳細に分析する手法です。
最新のメタアナリシスにより、パニック障害患者において、以下の脳領域で灰白質の変化が見られることが分かりました。
- 扁桃体: 感情処理、特に恐怖反応に関与する
- 帯状回: 感情、認知、運動機能など、様々な機能に関与する
- 前頭葉: 思考、判断、計画、行動制御など、高次認知機能に関与する
これらの領域は、 恐怖 や 不安 の 処理、 感情調節、 認知機能 などに 重要 な役割を果たしており、パニック障害の病態に深く関わっていると考えられています。
臨床的な重症度との関連
An et al. (2023) のメタアナリシスでは、臨床的な重症度 と 灰白質の変化 の間に 関連性 が見られることも示されました。
具体的には、パニック障害の症状が 重い 患者さんほど、 前頭葉 の 灰白質 の 体積 が 減少 している傾向がありました。
この結果は、 灰白質 の 変化 が パニック障害 の 重症度 を 反映 している可能性を示唆しています。
最新研究から見えてきたこと
An et al. (2023) のメタアナリシスは、パニック障害における灰白質変化のパターンを明らかにした重要な研究です。
この研究により、パニック障害の病態解明や治療法開発がさらに進むことが期待されます。
メタアナリシスの限界と解釈の注意点
An et al. (2023) のメタアナリシスは、信頼性の高い研究結果を提供していますが、解釈 にあたっては いくつか注意点 があります。
- サンプルサイズ: メタアナリシスに含まれた個々の研究のサンプルサイズが小さい場合、結果の信頼性が低くなる可能性があります。
- 研究方法のばらつき: 対象となった研究で、MRI装置、撮像条件、解析方法などが異なると、結果に偏りが生じる可能性があります。
- 患者の特性: 患者の年齢、性別、病歴、薬物治療歴などが異なると、結果に影響を与える可能性があります。
これらの限界点を考慮しながら、メタアナリシスの結果を解釈する必要があります。
パニック障害と向き合うために
パニック障害 は、 適切な治療 を 受ける ことで、 症状 を コントロール し、 日常生活 を 送る ことが 可能 な病気です。

もし パニック発作 のような症状に 悩まされている 場合は、 早めに医療機関 に 相談 するようにしましょう。
重要なお知らせ
本記事は、パニック障害と脳の灰白質に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 パニック障害の診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。
参考文献
- An, G., et al. (2023). Gray matter alterations in panic disorder: A voxel-wise meta-analysis. Frontiers in Psychiatry, 14, 11082626.