「また突然、あの発作が起きるんじゃないか…」
パニック障害を抱えている方は、常に不安と隣り合わせで、日常生活を送るのも大変ですよね。
パニック障害の治療法としては、薬がよく使われますが、運動でも効果があることをご存知ですか?
今回は、ドイツのゲッティンゲン大学で行われた研究をもとに、パニック障害に対する運動療法の効果について、わかりやすく解説していきます。
研究の概要:運動 vs 薬 vs 偽薬
この研究では、パニック障害の患者さんを3つのグループに分けました。
- ランニングなどの有酸素運動をするグループ
- 薬(クロミプラミン)を飲むグループ
- 偽薬(プラセボ)を飲むグループ
そして、10週間後の効果を比べてみました。
※クロミプラミンは、副作用が少し強めの薬です。
すると、運動をしたグループは、偽薬を飲んだグループよりも症状がよくなり、薬を飲んだグループとほとんど変わらないくらい効果があったんです!
なぜ運動がパニック障害に効くの?

運動がパニック障害に効く理由は、まだはっきりとはわかっていません。
でも、いくつか考えられることがあります。
- ドキドキする感覚に慣れる
パニック発作が起きると、心臓がドキドキしたり、息苦しくなったりしますよね。
実は、パニック発作を経験している間、患者さんはこれらの体の反応を、心臓病などの命に関わる病気のサインだと勘違いしてしまう傾向があるんです。
運動でも同じような体の反応が起こりますが、運動中は「これは運動のせいだ」とわかるので、パニック発作ほど怖くありません。
だから、運動を続けていくうちに、ドキドキする感覚に慣れて、パニック発作が起きても怖くなくなるのかもしれません。
- 気分がよくなる物質が出る
運動すると、「セロトニン」という物質が脳から出てきます。
セロトニンは、心を落ち着かせる効果があるので、不安や落ち込んだ気分を和らげてくれると考えられています。
- ストレスを解消する
運動は、ストレスを解消するのにも効果的です。
ストレスが減ると、心も体もリラックスして、パニック発作が起こりにくくなるかもしれません。
運動療法のいいところ
運動療法は、薬と比べて、いいところがたくさんあります。
- 副作用が少ない
- お金がかからない
- 体力もアップする
運動 vs 薬:どっちがいいの?
今回の研究では、薬の方が少しだけ効果が高いという結果でした。
薬の方が効果が現れるのが早く、運動の効果が最大限に発揮されるまでには、10週間よりも長い期間が必要になる可能性も考えられています。
でも、効果の差はほんのわずかで、特に気分の落ち込みを改善する効果は、運動と薬でほとんど変わりませんでした。
それに、運動は副作用が少なく、体も健康になるので、パニック障害の治療法として、とてもおすすめです。
運動を始める前に
運動を始める前に、いくつか注意しておきたいことがあります。
- 必ずお医者さんに相談しましょう。
- 無理のない運動を選び、自分のペースで続けましょう。
- 運動中に気分が悪くなったら、すぐにやめましょう。
パニック障害の患者さんにみられる傾向

パニック障害の患者さんの中には、「心臓病になってしまうかも」「運動すると心臓発作が起こるかも」といった不安から、運動を避けてしまう方がいるようです。
運動不足になると、体力が落ちてしまうだけでなく、パニック発作に対する恐怖心がさらに強くなってしまう可能性も考えられます。
そのため、パニック障害の患者さんは、医師と相談しながら、無理のない範囲で運動を続けることが大切です。
まとめ
パニック障害の治療に、運動はとても効果的です。
薬と同じくらい効果があるのに、副作用が少なく、お金もかからないなんて、嬉しいですよね。
ぜひ、運動を始めて、パニック障害を克服しましょう!
重要なお知らせ このブログ記事は、パニック障害について一般的な情報をお伝えするもので、医学的なアドバイスをするものではありません。
パニック障害の診断や治療については、必ずお医者さんに相談してください。
参考文献:Broocks A, Bandelow B, Pekrun G, et al. Comparison of aerobic exercise, clomipramine, and placebo in the treatment of panic disorder. Am J Psychiatry. 1998 1 1 May;155(5):603-9. doi: 10.1176/ajp.155.5.603. PMID: 9585859.