2025年1月23日~ブログを一時的に閉鎖、5月18日より順次記事を更新していきます。ご迷惑をおかけしておりますがよろしくお願いしたします。

うつ病に対して、中等度と高強度の運動効果の比較【重症度と末梢動脈硬化を改善】

うつ病に対して、中等度と高強度の運動効果の比較【重症度と末梢動脈硬化を改善】
  • URLをコピーしました!

皆さん、こんにちは!理学療法士のケイです。

このブログでは、うつ病と運動の関係性についての記事を多く書いています。

「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といったうつ症状に悩まされている方は、ぜひ参考にしてください。

今回は、最新の研究結果を交えながらお話していきます。

論文紹介

近年、運動がうつ病の改善に効果的であることを示す研究結果が、多く報告されています。

2018年、スイスのヘンナー・ハンセンらによって行われた研究では、単極性うつ病の患者さんを対象に、高強度インターバルトレーニング(HILV)と中等度連続有酸素トレーニング(MCT)が、うつ病の重症度と動脈硬化に与える影響を比較するランダム化比較試験が行われました。

どちらの介入グループも、4週間の介入期間中、週に3回のトレーニングを行いました。

その結果、HILVはうつ病の重症度を低下させるのに効果的であり、MCTは末梢動脈硬化を低下させるのに効果的であることが示されました。

高強度インターバルトレーニング(HILV)とは?

高強度インターバルトレーニング(HILV)とは、短い時間で高強度の運動と休憩を繰り返すトレーニング方法です。

今回の研究では、最大酸素摂取量(VO2max)の80%の強度で30秒間自転車エルゴメーターを漕ぎ、30秒間休息するという運動を25回繰り返していました。

中等度連続有酸素トレーニング(MCT)とは?

中等度連続有酸素トレーニング(MCT)とは、 moderate-intensity continuous trainingの略で、中強度の負荷で継続的に行う有酸素運動のことです。

今回の研究では、VO2maxの60%の強度で20分間自転車エルゴメーターを漕ぐという運動を行っていました。

結果

今回の研究では、HILVとMCTのどちらもうつ病の改善に効果的であるという結果が得られました。

特に、HILVはMCTよりも、うつ病の重症度を低下させる効果が高い傾向が見られました。

このことから、うつ病の改善には、高強度の運動を取り入れることが有効である可能性が示唆されます。

しかし、うつ病の症状が強い方にとって、高強度の運動をいきなり始めることは難しい場合もあるでしょう。

そのような場合は、まずは無理のない範囲で、MCTのような中強度の運動から始めてみることをおすすめします。

実践する場合は、負荷量は無理のない範囲から少しずつ増やしていくことが必要です。自分の可能な負荷量から継続し、中等度の運動で実践し、可能であれば高強度の運動にもトライすることをおすすめします。ただし、けして無理をしないでください。医師などにも相談したうえで行ってください。

運動の継続が難しい理由

この研究では、170人の患者さんのうち、実に123人もの方が研究への参加を辞退されました。

また、参加された方の中からも、13人が途中で脱落しています。

これは、動脈硬化の測定や運動テストといった研究内容が、うつ病の患者さんにとって受け入れにくいものであった可能性を示唆しています。

うつ病の症状を抱えていると、身体的な疲労感や意欲の低下などにより、運動を継続することが難しい場合があります。

また、「運動しなければならない」というプレッシャーが、かえってストレスとなり、運動を遠ざけてしまう原因となることもあります。

運動を継続するためのポイント

運動療法を成功させるためには、運動に対するモチベーションとアドヒアランス(継続性)を高めることが非常に重要です。

では、どのようにすれば運動を継続できるのでしょうか?

  • 目標を明確にする:「体重を減らす」「体力を向上させる」「ストレスを解消する」など、運動を行う目的を明確にしましょう。
  • 計画を立てる:いつ、どこで、どのような運動をするのか、具体的な計画を立てましょう。
  • 記録をつける:運動の内容や時間を記録することで、モチベーションを維持することができます。
  • 仲間を見つける:一緒に運動する仲間がいると、モチベーションを維持しやすくなります。
  • ご褒美を設定する:運動を継続できた場合は、自分にご褒美を与えましょう。
  • 専門家に相談する:運動の開始や継続に不安がある場合は、医師や理学療法士などの専門家に相談してみましょう。

近年、e-ヘルスプラットフォームやモバイルアプリ、エクサゲーミングなど、運動を支援するテクノロジーが発展しています。

これらのツールを活用することで、運動のモチベーションやアドヒアランスを高めることができるでしょう。

運動がうつ病に効果的な理由

運動がうつ病に効果的な理由としては、以下のようなメカニズムが考えられています。

  • セロトニンの分泌促進:セロトニンは、精神安定作用や幸福感をもたらす神経伝達物質です。運動によってセロトニンの分泌が促進されると、気分の高まりやリラックス効果が期待できます。
  • ストレスホルモンの減少:ストレスホルモンは、うつ病の発症に深く関わっています。運動は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、ストレスを軽減する効果があります。
  • 脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加:BDNFは、脳の神経細胞の成長や生存を促す物質です。運動によってBDNFが増加すると、脳の機能が活性化し、うつ病の改善に繋がると考えられています。

まとめ

今回は、うつ病と運動の関係について、最新の研究結果を交えながらお話しました。

運動は、うつ病の改善に効果的であることが示唆されています。

気分が落ち込んでいる時や、やる気が出ない時は、軽い運動から始めてみましょう。

運動を継続することで、心も体も健康な状態に近づけることができるでしょう。

参考文献

Hansen H, Minger A, Faude O, Schmidt-Trucksäss A, Zahner L, Beck J, Donath L. Effect of endurance exercise modalities on arterial stiffness in patients suffering from unipolar depression: A randomized controlled trial. Front Psychiatry. 2018 Jan 26;9:10. doi: 10.3389/fpsyt.2018.00010. PMID: 29403399; PMCID: PMC5786741.


重要なお知らせ

本記事は、うつ病と運動に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。

うつ病などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。

うつ病に対して、中等度と高強度の運動効果の比較【重症度と末梢動脈硬化を改善】

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次