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肺がんと闘うあなたへ:運動で不安や抑うつを和らげよう

肺がんと闘うあなたへ:運動で不安や抑うつを和らげよう
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肺がんと診断された時、患者さんは治療や予後に対する不安、生活の変化への戸惑い、そしてがんそのものによる身体的な苦痛など、様々なストレスに直面します。こうしたストレスは、不安や抑うつといった心の問題を引き起こす可能性があり、生活の質を大きく低下させてしまうことも少なくありません。

「この先どうなるんだろう…」 「治療に耐えられるだろうか…」

このような不安や気持ちが沈んでしまうのは、決してあなただけではありません。多くの肺がん患者さんが、同じような悩みを抱えています。

しかし、最新の研究で、自宅でできる簡単な運動が、肺がん患者の不安や抑うつを和らげるのに効果的であることがわかってきました。今回は、その研究内容を詳しくご紹介し、運動が心にもたらす良い影響について解説していきます。

台湾の研究グループによる画期的な発見

2014年、台湾のH-M・チェンらの研究グループは、肺がんと診断された患者さんを対象に、在宅歩行運動の効果を調べる研究を行いました。

これは、肺がん患者に対する在宅歩行運動プログラムの心理的影響を調査した最初の研究です。

この研究では、116人の肺がん患者が参加し、歩行運動群と通常ケア群の2つのグループにランダムに分けられました。

ランダム化比較試験とは、参加者をランダムに2つ以上のグループに分け、それぞれのグループに異なる介入(治療や予防法など)を行い、その効果を比較する研究方法です。

歩行運動群の患者さんには、1日40分、週3回、自宅で中程度の強度のウォーキング運動を12週間続けてもらいました。

その結果、歩行運動群では、通常ケア群と比べて、不安レベルと抑うつレベルが有意に改善されました。

運動の効果を高めるポイント

この研究では、運動の効果を高めるための様々な工夫が凝らされていました。

  • 運動プログラム: 参加者には、運動の強度や頻度、注意点などを詳しく説明した小冊子が配布されました。また、運動中の心拍数を測定したり、ボルグのRPE尺度を用いて運動強度を適切に管理したりすることで、安全かつ効果的に運動を継続できるようサポートされました。
    • ボルグのRPE尺度とは、運動中の主観的なきつさを6から20の数値で表す尺度のことです。
  • 定期的な電話インタビュー: 研究チームは、参加者と毎週電話でインタビューを行い、運動の状況や体調、気持ちの変化などを確認しました。このようなきめ細やかなサポート体制によって、参加者のモチベーションを維持し、運動の継続率を高めることができたと考えられます。
  • 対面式での指導: 運動の開始時には、研究者が直接参加者と面会し、運動の方法や注意点などを丁寧に指導しました。ビデオによる指導ではなく、対面式での指導を行うことで、参加者一人ひとりの理解を深め、運動に対する意識を高めることができたと考えられます。

運動がもたらす様々なメリット

運動は、身体的な健康だけでなく、心の健康にも良い影響を与えます。

  • 不安や抑うつの軽減: 運動は、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌を促し、精神安定作用や幸福感、意欲を高める効果があります。

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の減退、不眠、食欲不振などの症状が続く精神疾患です。

  • ストレス解消: 運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、ストレスを解消する効果があります。
  • 睡眠の質向上: 適度な運動は、質の高い睡眠を得るために必要なメラトニンの分泌を促します。
  • 自己肯定感の向上: 運動目標を達成したり、新しい運動スキルを習得したりすることで、自己肯定感が高まります。
  • 生活の質の向上: 運動によって体力や持久力が向上すると、日常生活の活動性が向上し、生活の質が向上します。
  • がん関連症状の軽減: 運動は、がんに伴う様々な症状、例えば、疲労感、痛み、吐き気、食欲不振、睡眠障害などを軽減する効果も期待できます。

がん関連症状とは、がんによって引き起こされる様々な身体的および精神的な症状のことです。

あなたに合った運動を見つけよう

運動には、ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガ、ストレッチなど、様々な種類があります。

運動を始める前に、必ず医師に相談し、自分の体力や健康状態に合った運動を選びましょう。

そして、無理のない範囲で、毎日少しずつでも体を動かすことが大切です。

まとめ

肺がんと闘う患者さんにとって、不安や抑うつは大きな負担となります。

しかし、自宅でできる簡単な運動が、これらの症状を和らげるのに効果的であることがわかってきました。

運動は、心と体の両方に良い影響を与え、QOLの向上に役立ちます。

今日から運動を始めて、心も体も健康な毎日を送りましょう。

参考文献

Chen, H.-M., Tsai, Y., Wu, Y.-C., Lin, K.-C., & Lin, C. C. (2014). Effects of a home-based walking exercise programme on anxiety, depression and cancer-related symptoms in patients with lung cancer: a randomised controlled trial. Journal of clinical nursing, 23(23-24), 3468–3478.

重要なお知らせ

本記事は、肺がんに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。

肺がんの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。

肺がんと闘うあなたへ:運動で不安や抑うつを和らげよう

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