皆さん、こんにちは!理学療法士のPTケイです。
「フレイル」という言葉、最近よく耳にしませんか?フレイルとは、加齢とともに心身の機能が低下し、要介護状態になりやすくなる状態のこと。健康寿命を延ばすためには、フレイル予防がとても大切なんです!

今回のブログでは、「フレイル予防」と「ヘルスリテラシー」の意外な関係について、最新の研究結果をもとに解説していきます!
ちなみに今回紹介するのは、地域に住む健康な高齢者のヘルスリテラシーとフレイルとの関連を調査した最初の研究の1つです。
えっ、健康知識がフレイル予防に?驚きの研究結果!
2018年11月26日 台湾 J. Clin. Med.に掲載された論文において、黄 智 賢氏らの研究グループは、地域住民のフレイルに対するヘルスリテラシーの影響について横断研究を行いました。その結果、ヘルスリテラシーは、年齢、性別、社会経済的地位、教育レベルに関係なく、プレフレイルおよびフレイルと関連していると報告しています。
- フレイル:加齢に伴う虚弱状態。身体的、精神的、社会的な機能低下を特徴とする。
- プレフレイル:フレイルの前駆状態(予備軍)。
- ヘルスリテラシー:健康情報を入手、理解、評価、活用し、健康に関する意思決定を行う能力。
この研究では、台湾の65歳以上の高齢者603人を対象に、
- 健康に関する知識や理解度(ヘルスリテラシー)をアンケートで調査
- 身体機能や生活習慣などを詳しくチェック
- フレイルかどうかを判定
という方法で、ヘルスリテラシーとフレイルの関係を調べました。
↓詳細が気になる方は以下で確認できます。
フレイルの判定の詳細(今回の研究で用いられた方法)
評価項目 | 基準 |
意図しない体重減少 | 過去1年間で3kg以上、または5%以上の体重減少 |
疲労感 | 以下の2項目のうち、少なくとも1つが週に3日以上当てはまる |
(a) 何をするのも面倒だと感じた | |
(b) 普段通りに活動できなかった | |
歩行速度の低下 | 性別と身長で層別化された基準値以下 |
男性 (身長≤168cm): 0.89m/秒以下 | |
男性 (身長>168cm): 0.96m/秒以下 | |
女性 (身長≤156cm): 0.85m/秒以下 | |
女性 (身長>156cm): 0.88m/秒以下 | |
身体活動の低下 | 性別で層別化された基準値以下 |
男性: ≤1236 kcal/週 | |
女性: ≤1212 kcal/週 | |
握力の低下 | 性別とBMIで層別化された基準値以下 |
男性 (BMI ≤22.6): 20.9kg以下 | |
男性 (BMI 22.61–24.8): 21.6kg以下 | |
男性 (BMI 24.81–26.7): 22kg以下 | |
男性 (BMI >26.7): 22.5kg以下 | |
女性 (BMI ≤22.6): 13kg以下 | |
女性 (BMI 22.61–24.8): 15.4kg以下 | |
女性 (BMI 24.81–26.7): 16.8kg以下 | |
女性 (BMI >26.7): 16.4kg以下 | |
フレイルの判定 | 上記5項目のうち、3項目以上当てはまる場合 |
プレフレイルの判定 | 上記5項目のうち、1項目または2項目当てはまる場合 |
ロバスト(健常)の判定 | 上記5項目のうち、いずれも当てはまらない場合 |
ヘルスリテラシーの分類(レベルは4つに分類)
レベル | スコア範囲 |
不十分 | 0〜25 |
問題あり | 26〜33 |
十分 | 34〜42 |
優れている | 43〜50 |
研究でわかったこと:ヘルスリテラシーが高いほどフレイルになりにくい!
この研究から、ヘルスリテラシーが高い人ほど、フレイルやプレフレイルになりにくいことがわかりました。

具体的には、ヘルスリテラシーが「優れている」グループ(スコア:43~50)に比べて、「十分」なグループ(スコア:34~42)は、フレイルやプレフレイルのリスクが約2.5倍も高かったんです!
さらに、
- 身体活動が不足している人:ヘルスリテラシーが低いほど、フレイルのリスクが顕著に高い
- 身体活動が十分な人:ヘルスリテラシーが「十分」でも、フレイルのリスクがある程度高い
ということもわかりました。
数字から見えてくる注意点
この研究は、「ヘルスリテラシー」と「フレイル」の関連性を示していますが、直接的な因果関係を証明するものではありません。
なぜなら、この研究は「横断研究」と呼ばれるデザインだからです。 観察研究では、研究者が参加者の生活に介入せず、データを集めて分析します。そのため、「ヘルスリテラシーの低さがフレイルを引き起こす」のか、「フレイルだからヘルスリテラシーが低い」のか、あるいは「別の要因が両方に影響している」のかを区別することが難しいのです。
今日からできる!ヘルスリテラシーを高める3つのステップ
フレイル予防のためには、ヘルスリテラシーを高めることが大切!今日からできる、3つのステップをご紹介します。

- テレビや新聞、インターネットなどで、健康に関する情報を積極的に集めましょう。
- わからないことや疑問に思ったことは、そのままにせず、調べる習慣をつけましょう。
- 情報源の信頼性を確認しましょう。(例:公的機関や医療機関のウェブサイト、専門家の意見など)
- 難しい言葉や専門用語は、わかりやすい言葉で説明してくれるサイトや本を探してみましょう。
- 得られた情報を参考に、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直してみましょう。
- 定期的に健康診断を受け、自分の体の状態を把握しましょう。
- かかりつけ医を持ち、気になることは何でも相談しましょう。
当ブログでは健康に関する情報を沢山紹介しております。論文に基づいた情報をわかりやすく提供し、できるだけ信頼性の高い情報を提供できるよう努力しております。うまく活用していただければと思います。
まとめ:ヘルスリテラシーを高めて、健康長寿を目指そう!
今回の研究結果は、ヘルスリテラシーが、フレイル予防にいかに重要かを示しています。
「健康情報は難しくてよくわからない…」 「自分には関係ない…」
そう思わずに、ぜひ今日から、ヘルスリテラシーを高めるための第一歩を踏み出してみましょう!
参考文献:
- Hwang, J.H.; Lai, Y.-C.; Lee, Y.-C.; Teong, X.T.; Goya, M.; Kuo, K.-M. Impact of Health Literacy on Frailty among Community-Dwelling Residents. J. Clin. Med. 2018, 7, 481.
健康・医学関連情報の注意喚起:
本記事は、フレイル・ヘルスリテラシーに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 フレイルなどの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。