皆さん、こんにちは!理学療法士のPTケイです。
「うつ病は心の病気」と思っていませんか?
もちろん、心の状態はうつ病に大きく関係していますが、実はそれだけではありません。 遺伝的な要因、ストレス、腸内環境、さらには住んでいる場所の空気まで…!? さまざまな要因が複雑に絡み合って、うつ病を引き起こす可能性があることが、近年の研究で明らかになってきています。
今回は、うつ病の「決定要因」について、最新の研究レビューをもとに、徹底的に解説していきます!
えっ、こんなにたくさんの要因が!? うつ病の「決定要因」とは?
2021年、Olivia Remes氏らの研究グループは、うつ病の生物学的、心理的、社会的決定要因に関する最近の研究をまとめたレビュー論文を発表しました。

このレビューでは、2017年から2020年までの4年間に発表された、世界中の研究論文を徹底的に調査し、うつ病の発症に関わる様々な要因を明らかにしています。
この文献は、470もの文書を統合して、うつ病の要因に関して最新の研究論文を統合して書かれています。
研究でわかったこと:うつ病は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こる!
このレビューから、うつ病は、
- 生物学的要因
- 心理的要因
- 社会的要因
といった、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こることがわかりました。
それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう!
1. 生物学的要因:遺伝だけじゃない!脳や体の変化も関係
- 遺伝的要因: うつ病になりやすい体質は、遺伝する可能性があります。特定の遺伝子変異が、うつ病のリスクを高めることもわかってきました。
- 脳の働き: 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れや、海馬などの脳の特定部位の体積減少が、うつ病と関連していることが示唆されています。
- 体の炎症: 慢性的な炎症は、うつ病の発症リスクを高める可能性があります。炎症性サイトカインと呼ばれる物質が、脳の働きに悪影響を与えると考えられています。
- 腸内細菌: 近年の研究で、腸内細菌のバランスの乱れ(腸内フローラの乱れ)が、うつ病と関連している可能性が指摘されています。
- ストレスとHPA軸: 長期的なストレスは、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)と呼ばれるストレス反応システムを乱し、うつ病の発症リスクを高めます。
- キヌレニン経路: トリプトファンというアミノ酸の代謝経路であるキヌレニン経路の異常が、うつ病に関与している。
2. 心理的要因:考え方のクセやストレスへの対処法も大切!
- 性格特性: 神経症傾向(ネガティブな感情を抱きやすい性格)や、低い自尊心は、うつ病のリスクを高めます。
- 反芻思考: 過去の嫌な出来事や、自分の欠点について、繰り返し考え込んでしまう「反芻思考」は、うつ病の症状を悪化させる可能性があります。
- 感情調節の困難: 自分の感情をうまくコントロールできないことも、うつ病のリスクを高めます。
- ストレスへの対処法: ストレスをうまく解消できないと、うつ病を発症しやすくなります。
3. 社会的要因:人間関係や経済状況も影響する!
- 社会的サポートの欠如: 家族や友人など、周囲からのサポートが少ないと、うつ病のリスクが高まります。
- 経済的困窮: 貧困や失業など、経済的な問題は、大きなストレスとなり、うつ病の発症リスクを高めます。
- 差別や虐待: 人種差別や家庭内暴力、いじめなどの経験は、うつ病のリスクを高めます。
- 住環境: 住んでいる場所、例えば都会なのか、田舎なのか、日当たりのよしあし、騒音なども影響がある。
大切なポイント:要因は一つじゃない!
これらの要因は、単独でうつ病を引き起こすわけではなく、複雑に絡み合って影響し合っています。

そして、どの要因がどれくらい影響するかは、人それぞれ異なります。
まとめ:うつ病は「心の弱さ」ではない!
今回の研究結果から、うつ病は、「心の弱さ」や「気の持ちよう」だけで起こるものではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症することがわかりました。
うつ病で苦しんでいる方は、決して自分を責めないでください。
そして、周りの人も、うつ病を「心の風邪」と安易に考えず、正しく理解し、サポートすることが大切です。
参考文献
Remes, O., Mendes, J. F., & Templeton, P. (2021). Biological, psychological, and social determinants of depression: A review of recent literature. Brain sciences, 11(12), 1633.
健康・医学関連情報の注意喚起:
本記事は、うつ病の決定要因に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 うつ病の診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。