「最近、なんだか疲れやすい…」 「階段を上るのがつらい…」 「転びやすくなった…」
そんなお悩み、ありませんか? もしかしたら、それは「フレイル」のサインかもしれません。
フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下し、様々な機能が弱くなった状態のこと。 放っておくと、要介護状態につながるリスクも高まります。
フレイルは、可逆性のあるものであり、フレイルから抜け出し、正常な状態へ戻れるとされており、適切な対策をすれば、予防・改善できるんです!
今回は、フレイル対策として特に効果が期待できる「運動」について、最新の研究結果を交えながら、詳しく解説していきます!
研究紹介
2011年、Theou, O.氏らの研究グループは、フレイルの管理のための運動介入の有効性についての系統的レビューを行いました。その結果、運動介入はフレイルの改善に有効である可能性が示唆されました。

系統的レビュー:過去に行われた複数の研究データをまとめて分析する研究方法。
フレイルって、具体的にどんな状態?
フレイルになると、以下のような症状が現れることがあります。
- 体重減少
- 疲れやすい
- 筋力低下
- 歩くのが遅くなる
- 活動量の低下
これらのうち、3つ以上当てはまると「フレイル」、1つまたは2つ当てはまると「プレフレイル(フレイルの前段階)」と診断されます。
加齢による機能低下とその影響
フレイルは、加齢に伴う様々な機能低下が複合的に絡み合って起こります。
Theou et al. (2011)の研究では、具体的な数値データは示されていませんが、フレイルに関連する機能低下として、以下のようなものが挙げられています。
- 筋力:
- 加齢とともに筋肉量は減少し、筋力は低下します。
- 握力や下肢の筋力低下は、日常生活動作(立ち上がり、歩行など)に影響を与えます。
- バランス能力:
- 加齢とともに、バランスを保つための機能が低下します。
- バランス能力の低下は、転倒のリスクを高めます。
- 歩行速度
- 加齢により歩行速度は低下します。
- 歩行速度の低下は、フレイルの重要な指標の一つです。
- 心肺機能:
- 加齢とともに、心臓や肺の機能が低下します。
- 心肺機能の低下は、疲れやすさや息切れなどの症状を引き起こします。
これらの機能低下は、日常生活の様々な場面に影響を及ぼします。
例えば、
- 階段の昇り降りがつらくなる
- 横断歩道を渡りきるのが難しくなる
- 重い荷物を持てなくなる
- 外出がおっくうになる
など、生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、閉じこもりや寝たきりにつながるリスクも高まります。
なぜ運動がフレイル対策に効果的なの?
運動には、上記のような加齢による機能低下を改善、または遅らせる効果があります。
さらに、運動は、
- 心肺機能の向上
- 骨密度の増加
- 認知機能の改善
- 生活習慣病の予防
- メンタルヘルスの改善
など、全身の健康に様々な良い影響をもたらします。
つまり、運動は、フレイルの予防・改善だけでなく、健康寿命を延ばすためにも、非常に重要な役割を果たすのです。
どんな運動をすればいいの?~研究からわかったこと~
Theou, O.氏らの研究では、フレイル高齢者を対象とした23件の研究が分析されました。これらの研究では、様々な運動プログラムの効果が検証されています。ここからは、研究で明らかになった、フレイル対策として特に効果が期待できる運動について、詳しく見ていきましょう。

1. レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)
なぜ効果的?: 筋肉は、体を動かすだけでなく、姿勢を保ち、内臓を支え、代謝を活発にするなど、様々な役割を担っています。加齢とともに筋肉量が減少すると、これらの機能が低下し、フレイルを招きやすくなります。レジスタンストレーニングは、筋肉に負荷をかけることで、筋力と筋肉量を増やし、これらの機能低下を防ぐ効果が期待できます。
研究では?: 複数の研究で、レジスタンストレーニングがフレイル高齢者の筋力、筋肉量、歩行速度などを改善することが示されています。Theou et al.(2011)の研究レビューでも、レジスタンストレーニングがフレイルの改善に有効である可能性が示唆されています。
具体的な運動例:
スクワット:
- 足を肩幅に開いて立つ。
- 下腿と体幹が平行になるようにしながら、椅子に座るときのようにゆっくりと腰を下ろす。
- 太ももが床と平行になるまで下げたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る。(10回×3セット)
椅子からの立ち上がり:
- 椅子に深く腰掛ける。
- 腕を使わずに、ゆっくりと立ち上がる。
- ゆっくりと座る。(10回×3セット)
つま先立ち:
- 壁や椅子の背もたれに手をついて立つ。
- ゆっくりとかかとを上げ、つま先立ちになる。
- ゆっくりとかかとを下ろす。(10回×3セット)
マシントレーニング: ジムにあるマシンを使って、安全に負荷をかけてトレーニングを行う。(専門家の指導を受けるのが望ましい)
2. バランストレーニング
なぜ効果的?: バランス能力は、転倒予防に非常に重要です。フレイル高齢者は、バランス能力が低下していることが多く、転倒のリスクが高くなっています。バランストレーニングは、体のバランスを保つための筋肉や神経を刺激し、バランス能力を向上させる効果が期待できます。
研究では?: 複数の研究で、バランストレーニングがフレイル高齢者のバランス能力を改善し、転倒リスクを低下させることが示されています。Theou et al. (2011)の研究レビューでも、バランストレーニングがフレイル改善に有効である可能性が示唆されています。
具体的な運動例:
片足立ち:
- 壁や椅子の背もたれに手をついて立つ。
- 片足を軽く上げ、10秒間キープする。
- 反対の足も同様に行う。(左右各10回×3セット)
タンデム歩行:
- 床に引いた線の上を、かかととつま先をくっつけて歩く。(10歩×3セット)
太極拳: ゆっくりとした動きで、バランス感覚を養う。(教室などに通うのがおすすめ)
3. ウォーキング(有酸素運動)
なぜ効果的?: ウォーキングは、全身の持久力を高め、心肺機能を改善する効果があります。心肺機能が向上すると、疲れにくくなり、活動的な生活を送れるようになります。また、ウォーキングは、骨密度の増加や、認知機能の改善にも効果があると言われています。
研究では?: 多くの研究で、ウォーキングがフレイル高齢者の歩行能力、心肺機能、生活の質(QOL)などを改善することが示されています。Theou et al. (2011)の研究レビューでも、ウォーキングを含む有酸素運動がフレイル改善に有効である可能性が示唆されています。
具体的な方法:
- 1回30分程度、週3回以上を目安に行う。
- 最初はゆっくりとしたペースで歩き、徐々にスピードと時間を増やしていく。
- ウォーキングの前後には、ストレッチを行う。
- 体調に合わせて、休憩を挟みながら行う。
4. 複合的な運動プログラム
なぜ効果的?: 上記のレジスタンストレーニング、バランストレーニング、ウォーキングなどを組み合わせた複合的な運動プログラムは、フレイルの様々な側面に対して、より包括的にアプローチすることができます。
研究では?: 複数の研究で、複合的な運動プログラムが、フレイル高齢者の身体機能、ADL、QOLなどを総合的に改善することが示されています。Theou et al. (2011)の研究レビューでも、複合的な運動プログラムがフレイル改善に有効である可能性が示唆されています。
具体的な方法:
- 地域の介護予防教室や、スポーツジムなどが提供する、フレイル予防・改善のための運動プログラムに参加する。
- 理学療法士などの専門家に相談し、自分に合った運動プログラムを作成してもらう。
無理なく、楽しく、継続することが大切!
運動は、無理なく、楽しく、継続することが何よりも大切です。 体調に合わせて、運動の種類や強度、時間を調整しましょう。 最初は短い時間、少ない回数から始め、徐々に増やしていくのがおすすめです。 また、一人で行うのが難しい場合は、家族や友人、地域の運動教室などに参加するのも良いでしょう。

運動だけじゃない!包括的なフレイル対策を
フレイル対策は、運動だけでなく、
- 栄養: バランスの取れた食事を心がけ、特にタンパク質を十分に摂る。
- 社会参加: 趣味やボランティア活動などを通じて、社会とのつながりを保つ。
- 口腔ケア: 口の中を清潔に保ち、よく噛んで食べる。
- 服薬管理 :かかりつけ医と相談のうえ、服薬の管理をおこなう。
など、様々な側面からのアプローチが重要です。
まとめ
フレイルは、適切な対策をすれば、予防・改善できる状態です。
運動は、フレイル対策として、非常に効果的な方法の一つ。
今日からあなたも、無理なく、楽しく運動を始めて、フレイルに負けない体を作りましょう!