「パソコン作業で目がショボショボ…」
「集中力が続かない…頭がボーっとする…」
現代社会で働く私たちにとって、「精神的疲労(脳疲労)」は避けられない悩みですよね。 十分な休息が大切とはわかっていても、忙しい毎日ではなかなか難しい…。
そんな脳疲労に悩むあなたに、ぜひ知ってほしい成分があります。
それが、「イミダゾールジペプチド」! 特に、「アンセリン」と「カルノシン」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。
「イミダゾールジペプチドって、一体何?」
「本当に脳の疲れに効くの?」
今回は、そんな疑問に答える科学的な研究をもとに、イミダゾールジペプチドの驚くべきパワーに迫ります!
研究紹介

今回注目するのは、イミダゾールジペプチドを豊富に含む食品として知られる「チキンエッセンス」を用いた研究です。 2015年、日本のタナカ マサアキ氏らの研究グループは、チキンエッセンスがヒトの精神的疲労に与える影響について、プラセボ対照ランダム化クロスオーバー試験を行いました。その結果、チキンエッセンス(つまり、イミダゾールジペプチド)を毎日摂取することが、精神的疲労からの回復を促進する可能性があることを報告しました。
- プラセボ:見た目や味は本物そっくりでも、有効成分が入っていない偽薬のこと。
- ランダム化クロスオーバー試験:参加者をランダムに2グループに分け、一方には本物の成分、もう一方にはプラセボを一定期間摂取してもらい、その後、期間を空けて摂取するものを入れ替えて効果を比較する、信頼性の高い研究方法。
注目成分!「イミダゾールジペプチド」とは?
まず、「イミダゾールジペプチド」について簡単にご説明しましょう。

- アンセリンとカルノシン: イミダゾールジペプチドの代表的な成分です。
- 動物の筋肉に豊富: 特に、鶏のむね肉や、マグロ・カツオといった回遊魚の筋肉に多く含まれています。渡り鳥や回遊魚が、長時間、休まずに動き続けられる力の源とも言われています。
- 強力な抗酸化作用: 最大の特徴は、体のサビつき(酸化ストレス)を防ぐ「抗酸化作用」が非常に高いこと。活性酸素を除去し、細胞が傷つくのを防いでくれます。
- 抗酸化作用:体内で増えすぎると細胞を傷つける「活性酸素」を除去する働き。
この強力な抗酸化作用が、身体的な疲労だけでなく、精神的な疲労にも効果を発揮するのではないか、と注目されているのです。
研究でわかったこと:イミダゾールジペプチドは「脳の回復力」を高める?
今回の研究では、イミダゾールジペプチドを豊富に含むチキンエッセンスを使って、その効果が科学的に検証されました。
どうやって検証したの?
- イミダゾールジペプチド vs プラセボ: 健康な男性20人に、イミダゾールジペプチドを豊富に含むチキンエッセンス、またはプラセボ(偽飲料)を、それぞれ4週間、毎日飲んでもらいました(途中で飲むものを交代)。
- 脳疲労を誘発: 実験日には、脳が疲れるような課題(2バックテスト)を40分間行いました。
- 脳の働きをチェック: 脳疲労を誘発する前、誘発した後、そして60分間の休憩後に、脳の働き(特に、注意力を維持する能力)を測る認知課題を行いました。
- 主観的な疲れも評価: 実験中や自宅での「疲れ具合」も評価しました。
注目の結果!
研究の結果、以下のことが明らかになりました。
- ポイント1:「休憩後の回復」が早い!
- 脳疲労を誘発した後、60分間の休憩を取ると、イミダゾールジペプチド(チキンエッセンス)を飲んでいたグループは、プラセボを飲んでいたグループに比べて、認知課題の反応時間が有意に速くなっていました。
- これは、イミダゾールジペプチドが、疲れた脳の回復スピードを速める可能性を示唆しています!
- 特に、葛藤状況下での選択的注意(より複雑な注意力が求められる課題)において、反応時間の短縮が見られました。これは、脳の中でも特に、前頭前野(PFC)や前帯状皮質(ACC)といった、高度な情報処理に関わる部分の回復を助けている可能性を示唆しています。
- 前頭前野(PFC):計画、判断、意思決定など、高度な思考を司る脳の司令塔。
- 前帯状皮質(ACC):注意の切り替えや、矛盾した情報を処理する際に働く脳の領域。
- ポイント2:主観的な疲れも軽減?
- 自宅で毎日記録した「疲れ具合」は、イミダゾールジペプチドを飲んでいる期間の方が、プラセボ期間よりも低い傾向にありました。
- 実験日の休憩後の「疲れ具合」も、イミダゾールジペプチドを飲んでいた方が、より早く改善が見られました。
なぜ回復が早まるのか?~鍵は「抗酸化作用」~
研究グループは、この回復促進効果のメカニズムとして、イミダゾールジペプチド(アンセリンやカルノシン)の持つ強力な抗酸化作用が重要だと考えています。
精神的な作業が続くと、脳内でも活性酸素が発生し、酸化ストレス状態になります。
これが脳疲労の一因と考えられています。
イミダゾールジペプチドは、この脳内の酸化ストレスを軽減することで、脳細胞のダメージを防ぎ、脳機能の回復を助けている可能性があるのです。
この結果をどう活かす?~イミダゾールジペプチドとの付き合い方~

今回の研究結果は、イミダゾールジペプチドが精神的疲労の回復に役立つ可能性を示す、非常に興味深いものです。 では、私たちはこの結果をどのように捉え、日々の生活に活かせば良いのでしょうか?
- 「回復力アップ」に期待: イミダゾールジペプチドは、疲労を完全に防ぐというよりは、疲れた後の回復をサポートする働きが期待できそうです。集中して脳を使った後や、疲れを感じた時に摂取すると良いかもしれません。
- どうやって摂る?:
- 食品から: 鶏むね肉、マグロ、カツオなどに豊富に含まれています。日々の食事に意識的に取り入れてみましょう。
- チキンエッセンス: 手軽に摂取できる方法の一つです。
- サプリメント: アンセリンやカルノシンを含むサプリメントも市販されています。
- 過度な期待は禁物: 今回の研究は、健康な若い男性20名という限られた対象者で行われたものです。女性や高齢者、慢性的な疲労を抱えている方にも同じ効果があるかは、まだわかりません。
- あくまでサポート役として: イミダゾールジペプチドは、あくまで疲労回復を助ける選択肢の一つと考えましょう。最も大切なのは、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスマネジメントといった基本的な生活習慣です。
まとめ
今回の研究により、鶏肉や回遊魚に多く含まれるイミダゾールジペプチド(アンセリン・カルノシン)が、その強力な抗酸化作用により、精神的疲労からの回復を科学的にサポートする可能性が示されました。
特に、集中力や注意力が求められる作業後の脳の回復を助ける働きには、期待が持てそうです。
ただし、その効果は限定的であり、万能薬ではありません。
イミダゾールジペプチドを試す場合も、まずは基本的な生活習慣を見直し、健康的な生活を送ることを心がけましょう。
今後のさらなる研究によって、イミダゾールジペプチドの効果やメカニズムがより詳しく解明され、私たちの脳疲労対策の選択肢が広がることを期待したいですね。
参考文献
- Tanaka M, et al. Essence of chicken improves recovery from mental fatigue in healthy males: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial. Nutr J. 2015; 14: 101. (※実際の論文情報を反映)
健康・医学関連情報の注意喚起
本記事は、イミダゾールジペプチドと精神的疲労に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 疲労の原因が病気である可能性もありますので、症状が続く場合は、必ず医療従事者にご相談ください。