はじめに:「やっと終わった…」その解放感の先にあるもの
長期間にわたる勉強の末、ついに迎えた認定理学療法士試験。
試験が終わった瞬間の解放感は、何物にも代えがたいものがありますよね。
2019年の3月、私も脳卒中分野で3度目の挑戦となる認定試験を終え、「とりあえず終わって良かった」と安堵したことを鮮明に覚えています。
しかし、試験の合否に関わらず、この大きな挑戦を終えた経験そのものが、私たち理学療法士にとって貴重な財産となり、次なる成長への糧となるはずです。
この記事では、2019年当時の私の試験後の所感を元に、認定理学療法士試験という大きな挑戦を終えた今だからこそ考えたい、「試験経験を未来の臨床と自己成長にどう活かすか」というテーマについて、2025年の視点から具体的な3つの視点を提案します。
1. 試験結果を「成長の羅針盤」として捉える:できたこと、できなかったことの客観的分析
試験の手応えは、人それぞれでしょう。「まずまずできた」と感じる人もいれば、「もっとできたはずだ」と悔いが残る人もいるかもしれません。合否の結果はもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、試験というアウトプットの機会を通じて、自分自身の現在の知識レベルや課題を客観的に把握することです。
2019年当時の私は、試験を終えてみて、
- 試験の傾向: 「昨年とそれほど変わらない印象」「毎年ある程度聞かれるところは決まっている気がする」
- 問題の難易度: 「簡単な問題と難しい問題の差が大きい」
- 自身の課題: 「脳卒中分野では、画像をしっかり見ること、脳の機能解剖と障害の理解がまだ不足している」
といった点を感じていました。これらの「気づき」は、合否に関わらず、今後の学習の方向性を定める上で非常に重要な情報となります。
具体的なアクション:
- 自己採点と弱点分析(可能な範囲で): 問題用紙は持ち帰れないので記憶が新しいうちに、どの分野の問題が解けなかったか、どこで迷ったかを具体的に振り返ります。
- 得意分野と不得意分野の明確化: 今回の試験勉強を通じて、自分が得意とする領域と、まだ知識や理解が不足している領域を客観的に把握します。
- 学習方法の振り返り: 今回の試験勉強の進め方(計画、使用教材、時間配分など)について、良かった点、改善すべき点を整理します。
この自己分析を通じて得られた課題は、決してネガティブなものではありません。
むしろ、次なる成長のための明確な「伸びしろ」を示してくれる貴重な羅針盤なのです。
2. 「知識」を「臨床力」へ:試験勉強で得た学びを日々の実践に繋げる意識
認定試験の勉強は、膨大な量の知識をインプットし、整理するプロセスです。試験が終わったからといって、その知識を「おしまい」にしてしまうのは非常にもったいないことです。
2019年当時の私も、「今後、リハビリに活かしていくためにも、より理解を深めていかないと」と感じていました。
この「試験のための勉強」から「臨床のための学び」へと意識を転換することが、専門家としての成長を加速させます。
具体的なアクション:
- 臨床疑問との紐付け: 試験勉強で得た知識の中で、「あの患者さんのこの症状は、もしかしたら〇〇が原因かもしれない」「この評価法は、△△のケースで有効かもしれない」といったように、日々の臨床で抱える疑問や課題と関連付けて考えてみます。
- 積極的なアウトプット:
- 院内勉強会や症例検討会での発表: 試験勉強で深めた知識を、他のスタッフと共有する機会を設けます。人に説明することで、さらに理解が深まります。
- 患者さんへの分かりやすい説明: 専門用語を避け、患者さんが理解しやすい言葉で病態や治療方針を説明する際に、試験勉強で得た知識が役立ちます。
- ブログやSNSでの情報発信(倫理的配慮の上で): 学んだことを自分の言葉でまとめ、発信することも有効なアウトプットです。
- 関連文献の継続的な学習: 試験範囲の知識をベースに、さらに最新の文献や研究動向を追うことで、知識のアップデートと深化を図ります。
試験勉強は、専門知識を体系的に学ぶ絶好の機会です。その知識を「点」で終わらせるのではなく、日々の臨床という「線」や「面」へと繋げていく意識を持つことが重要です。
3. 「休息」と「次への準備」のバランス:燃え尽きを防ぎ、持続的な成長を目指す
大きな試験を終えた直後は、達成感と共に、心身ともに疲労困憊していることも少なくありません。「少し休息したい」と感じるのは当然のことです。
しかし、2019年当時の私は、「やることが多いので、なかなかそうもいきませんね。ほどほどに頑張り、とにかくやることをこなしていこうと思います」と、すぐに次のタスクへと意識を向けていました。もちろん、日々の業務や他の目標があるため、完全に休むことは難しいかもしれません。
ここで大切なのは、「適切な休息」と「次への準備」のバランスです。
- 意識的な休息とリフレッシュ:
- 短期間でも良いので、勉強から完全に離れる時間を作り、心身をリフレッシュさせましょう。趣味に没頭する、旅行に行く、ゆっくり睡眠をとるなど、自分に合った方法で休息します。
- この休息期間は、次の目標へ向かうためのエネルギーを充電する上で非常に重要です。
- 燃え尽き症候群の予防: 試験という大きな目標を達成(あるいは終了)した後に、虚脱感や無気力感に襲われることがあります。これを防ぐためには、試験後の早い段階で、小さなことでも良いので次の目標や楽しみを見つけることが有効です。
- 無理のないペースでの再始動: 休息後は、いきなりトップギアに入れるのではなく、徐々にペースを上げていくことが大切です。特に、今回の試験で明らかになった課題に取り組む際は、焦らずじっくりと、持続可能な学習計画を立てましょう。
- 「やるときはやる」スタンスの継続: 2018年の記事で「遊びながら、やるときはやる的なスタンスが取れるといいかな」と書かれていましたが、このメリハリのある姿勢は、長期的な学習や目標達成において非常に重要です。常に緊張感を保ち続けるのではなく、適度にリラックスしつつも、集中すべき時には集中する。このコントロール能力を養うことが、燃え尽きを防ぎ、持続的な成長を可能にします。
まとめ:試験の経験は、あなたを次のステージへ導く貴重な道しるべ
認定理学療法士試験という大きな挑戦は、合否の結果以上に、私たちに多くの学びと気づきを与えてくれます。2019年当時、3度目の挑戦を終えた私が感じた「勉強していくことで、理解は深まっていることは実感できています」という言葉は、まさにその証です。
試験を通じて得た知識、明らかになった課題、そして何よりも「やり遂げた」という経験は、必ずや今後のあなたの臨床家としての成長、そして人間としての成長に繋がるはずです。
試験という一つの区切りを大切にしつつ、そこから得た学びを胸に、新たな気持ちで次の一歩を踏み出しましょう。そして、今回の経験が、あなたの理学療法士としての道をさらに豊かなものにしていくことを心から願っています。
受験された皆様、本当にお疲れ様でした。