
PTケイさん、こんにちは!ちょっと聞きたいんですけど、昨日夕方にコーヒーを飲んだら、夜なかなか寝付けなくて…。
やっぱりカフェインって睡眠によくないんですかね?



Bさん、こんにちは!その悩み、すごくよくわかりますよ。
私も理学療法士という仕事柄、体のコンディションには気を使っていますし、うつ病やベーチェット病といった疾患と共に生きているので、特に「睡眠の質」は最優先課題なんです。



そうなんですね!
日中にシャキッとしたくてコーヒーを飲むのに、それで夜眠れなくなったら本末転倒ですよね。
「寝る前はダメ」ってよく聞きますけど、実際、「何時間前までならセーフ」なのか、ちゃんとした答えがわからなくて…。



良いところに気づきましたね!
実は、その長年の疑問に終止符を打つ、非常に信頼性の高い最新の研究結果が発表されたんです。



え、本当ですか!?ぜひ知りたいです!



はい!この記事を最後まで読めば、Bさんや同じ悩みを持つすべての方が、科学的根拠に基づいた「カフェイン摂取の安全なタイムリミット」を知ることができます。
良質な睡眠を手に入れて、日中のパフォーマンスを最大限に高めるための、大切な情報をお伝えしますね。



ではまず、この記事でわかることのポイントを先にご紹介します。
この記事でわかること(1分で解説)


忙しいあなたのために、この記事のポイントを上のスライドにまとめました。
この記事の概要
- カフェインは、あなたの睡眠時間を平均45分も削っている可能性がある。
- 睡眠の「量」だけでなく、「質」も悪化させ、回復に必要な深い睡眠を減少させる。
- コーヒーを飲むなら、就寝時刻の最低でも8.8時間前までが安全ライン。
- あなたの就寝時刻に合わせて「カフェイン門限」がわかるアプリもご紹介。
詳しくは、この後説明させていただきます。
最新の研究が明らかにしたカフェインと睡眠の真実
根拠となる最新研究の概要
- 研究手法: システマティックレビュー&メタアナリシス(最も信頼性が高い研究のひとつ)
- 対象: 24件の質の高い研究結果を統合・分析
- 結論: カフェインは睡眠に明確な悪影響を与える
まずは、今回の記事の根拠となる非常に信頼性の高い研究についてご紹介します。
2023年に発表されたシステマティックレビューとメタアナリシスで、研究者らは、その後の睡眠に対するカフェイン摂取の影響について調査を行いました。その結果、カフェインは睡眠の量と質を大幅に低下させ、総睡眠時間の短縮を避けるためには、コーヒー(107 mg/250 mL)は就寝時刻の少なくとも8.8時間前、トレーニング前のサプリメント(217.5 mg)は就寝時刻の少なくとも13.2時間前に摂取を終える必要があると報告しました。
- システマティックレビューとメタアナリシス: 数ある研究手法の中でも、最も信頼性が高いとされる方法の一つです。複数の質の高い研究結果を統計的に統合・分析することで、非常に客観的で偏りの少ない結論を導き出します。
つまり、個人の体験談や一つの小さな研究ではなく、「たくさんの信頼できる研究をまとめた、いわば研究の王様」が、カフェインの驚くべき影響を明らかにしたのです。
それでは、具体的にどのようなことがわかったのか、3つのポイントに分けて詳しく見ていきましょう。
論文解説でわかったこと ‐3つのポイント‐
以下の3つが論文から分かりました。
この論文からわかったことの概要
- 睡眠の「量」が減る(-45分)
- 睡眠の「質」が悪化する(深い睡眠↓)
- 安全な「時間」が判明した
①衝撃の事実!カフェインは睡眠時間を45分も奪っていた
睡眠の量が減少する概要
- 総睡眠時間:-45分
- 睡眠効率:-7%
- 寝つくまでの時間:+9分
- 夜中に起きる時間:+12分
「コーヒーを飲んでも普通に眠れるから大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。しかし、研究結果は衝撃的な事実を突きつけています。
カフェインを摂取した日は、しなかった日と比較して、
- 総睡眠時間が 平均45.3分 も減少
- 睡眠効率(ベッドにいる時間のうち実際に眠っていた時間の割合)が 7% 低下
- 入眠潜時(寝つくまでにかかる時間)が 9.1分 増加
- 入眠後の覚醒(夜中に目が覚めている時間)が 11.8分 増加
していたのです。
45分の睡眠不足がもたらす影響
「たった45分」と感じるかもしれません。しかし、この軽度の睡眠不足が毎日続くとどうなるでしょうか。
感情のコントロールが難しくなったり、日中の集中力や判断力が低下したりと、心身に様々な悪影響を及ぼすことがわかっています。
毎日カフェインを摂る習慣がある人は、知らず知らずのうちに慢性的な睡眠不足に陥り、本来のパフォーマンスを発揮できていない可能性があるのです。
特に、睡眠効率が7%も低下するというのは見過ごせないポイントです。
8時間ベッドにいたとしても、実際の睡眠時間はカフェインの影響で7時間半にも満たないかもしれません。これは、睡眠の「量」が明確に損なわれている証拠です。
②睡眠の「質」も悪化!深い眠りが減り、浅い眠りが増えるメカニズム
睡眠の質が悪化に関する概要
- 浅い睡眠(N1):増加 📈
- 深い睡眠(N3, N4):減少 📉
- 原因: カフェインが眠気物質「アデノシン」をブロック!
カフェインの影響は、睡眠の「量」だけにとどまりません。
さらに深刻なのは、睡眠の「質」への影響です。
研究では、カフェインを摂取すると、
- 浅い睡眠(ステージN1)の時間が 6.1分 増加
- 深い睡眠(ステージN3, N4)の時間が 11.4分 減少
するという、睡眠構造の変化が確認されました。
- 睡眠構造(睡眠サイクル): 私たちの睡眠は、浅い眠り(N1, N2)、深い眠り(N3)、レム睡眠が約90分のサイクルで繰り返されています。
- N4とは?:旧分類(R&K基準)では深い睡眠を「ステージ3:N3」と、さらに深い「ステージ4:N4」の2段階に分けていました。現行分類(AASM基準)では、 脳波の特徴などから、旧分類のステージ3とステージ4を統合し、現在はまとめて「N3睡眠」と呼んでいます。
- 深い睡眠(徐波睡眠): 脳と体の疲労回復、成長ホルモンの分泌、記憶の整理・定着などに不可欠な、最も重要な睡眠段階です。
以下は、睡眠サイクルについてより詳しく知りたい方は読んでみてくだだい。
睡眠構造(睡眠サイクル)
私たちの睡眠は、単に「眠っている」という一つの状態ではなく、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という性質の異なる2つの睡眠が、一晩のうちに約90〜120分のサイクルで繰り返されることで構成されています。
ノンレム睡眠(脳を休ませる睡眠)について
ノンレム睡眠は、眠りの深さによってさらに段階が分かれています。
現在、国際的には米国睡眠医学会(AASM)が定めた基準が広く使われており、これは眠りの深さに応じて3つの(N1, N2, N3)に分類されます。
浅い睡眠
N1睡眠: 目を閉じてから眠りに落ちるまでの、うとうととした状態。最も浅い眠りの段階です。
N2睡眠: 少し深い眠りで、本格的な睡眠の始まりです。睡眠全体の約半分をこの段階が占めます。
N3睡眠: 「深睡眠」や「徐波睡眠」とも呼ばれる、最も深い眠りの段階です。この間に脳と体は深く休息し、疲労回復、細胞の修復、記憶の整理・定着、成長ホルモンの分泌などが活発に行われます。
レム睡眠(体を休ませ、記憶を整理する睡眠)
深いノンレム睡眠の後、眠りは再び浅くなり、「レム睡眠」へと移行します。
レム(REM)はRapid Eye Movement(急速眼球運動)の略で、名前の通り閉じたまぶたの下で眼球が素早く動いているのが特徴です。
脳は活発に活動しており、記憶の整理や定着、感情の調整などを行っています。
私たちが「夢」を見るのは、主にこのレム睡眠中です。
一方で、体の筋肉は弛緩(しかん)しており、休息状態にあります。
この「ノンレム睡眠(N1→N2→N3)→レム睡眠」という一連の流れが1サイクルとなり、健康な成人は一晩にこれを4〜5回繰り返して、心身の健康を保っています。
なぜ「深い睡眠」が減ってしまうのか?
カフェインは、脳内で眠気を引き起こす「アデノシン」という物質の働きをブロックすることで覚醒作用をもたらします。このアデノシンは、日中の活動で脳内に蓄積し、十分に溜まると強い眠気を感じる、いわば「睡眠物質」です。
カフェインによってアデノシンの働きが邪魔されると、脳は「まだ眠る時間ではない」と勘違いしてしまいます。
その結果、本来であれば深く休息すべき時間帯にも脳が覚醒状態に近くなり、最も重要な「深い睡眠」に到達しにくくなってしまうのです。
たとえ睡眠時間が確保できていても、この深い睡眠が不足していては、いくら寝ても疲れが取れず、日中のだるさや集中力欠如につながってしまいます。
③【結論】コーヒーは何時間前まで?科学的根拠に基づく「安全な時間」
結論:あなたのカフェイン門限は? (23時就寝の場合)概要
- ☕️ 紅茶 (47mg): 門限なし
- ☕️ コーヒー (107mg): 午後2時12分
- 💪 プレワークアウト (217.5mg): 午前9時48分
では、最も知りたい核心部分です。良質な睡眠を確保するためには、一体何時間前までにカフェインの摂取を終えれば良いのでしょうか。
この研究の素晴らしい点は、カフェインの「量」と「摂取タイミング」の両方を考慮して、具体的なカットオフ時間を算出してくれたことです。
代表的な飲み物の「カフェイン門限」
ここでは、夜23時に就寝する人を例に、具体的な門限時間を見てみましょう。
- 紅茶(カフェイン約47mg/250ml)
- 明確なカットオフ時間なし
- この研究モデルでは、紅茶に含まれる程度のカフェイン量であれば、就寝直前に飲んでも総睡眠時間に統計的な悪影響は出ないとされています。ただし、感受性の高い方は影響が出る可能性があるので注意が必要です。
- コーヒー(カフェイン約107mg/250ml)
- 就寝の8.8時間前まで
- 23時に寝るなら、【午後2時12分】がリミット。これ以降に飲むと、睡眠時間が有意に短くなる可能性が高まります。ランチ後のコーヒーがギリギリのラインということになります。
- トレーニング前のサプリメント(プレワークアウト、カフェイン約217.5mg)
- 就寝の13.2時間前まで
- 23時に寝るなら、【午前9時48分】がリミット。高用量のカフェインを含む製品は、午前中に摂取しないと夜の睡眠に深刻な影響を与えることがわかります。夕方のトレーニング前に飲むのは、睡眠の観点からは非常にリスクが高いと言えるでしょう。
この結果は、カフェインの半減期(体内で半分に分解される時間)が平均3〜5時間であることから考えると、予想以上に「早い」と感じた方が多いのではないでしょうか。カフェインは、私たちが思うよりもずっと長く体内に留まり、影響を及し続けるのです。
あなた専用の「カフェイン門限」を計算しよう!
あなたの生活リズムに合わせて、安全なカフェイン摂取の時間を計算できるツールを作成しました。ぜひご自身の就寝時刻を入力して、今日からの習慣に役立ててください。
あなたのカフェイン門限チェッカー
あなたの普段の就寝時刻を入力してください。
学びを促進するQ&A
Q&Aの概要
- Q. 慣れていれば大丈夫? → A. 過信は禁物。客観的には睡眠の質が落ちているかも。
- Q. お茶やエナドリは? → A. 「カフェイン量」で判断することが重要。
- Q. 個人差は? → A. あくまで平均的な目安。自分だけの門限を見つける参考に。
ここまでの内容で、いくつか疑問が浮かんだ方もいるかもしれません。よくある質問にお答えします。
- 毎日コーヒーを飲んでいますが、耐性ができて影響は少なくなるのでは?
-
良い質問ですね。確かに、カフェインを習慣的に摂取することで「耐性」が形成される可能性は指摘されています。
しかし、今回のレビューに含まれた研究の多くは、習慣的な摂取者でも睡眠への悪影響が見られることを示しています。
自分では「慣れた」と感じていても、客観的な睡眠データを見ると質や量が低下している、というケースは少なくありません。
過信せず、今回のカットオフ時間を一つの目安にすることをおすすめします。
- 緑茶やエナジードリンクはどうですか?
-
今回の研究ではコーヒーやお茶などをモデルにしていますが、基本的には「カフェインの量」で考えることが重要です。
一般的な緑茶(煎茶)はコーヒーの3分の1程度のカフェイン量ですが、玉露のようにカフェインが多いものもあります。
エナジードリンクはコーヒーと同等かそれ以上、商品によってはプレワークアウトサプリ並みのカフェインを含むものも。飲む前に製品の成分表示を確認し、カフェイン量を把握する習慣をつけましょう。
- この時間はすべての人に当てはまりますか?個人差も大きいと聞きますが…
-
その通りです。
カフェインの分解速度には遺伝的な個人差が大きいことがわかっています。
今回の研究結果は、多くの人に当てはまる「平均的な目安」と考えてください。
提供したカットオフ時間は、あくまで「総睡眠時間が短くなるのを避けるための統計的なライン」です。
ご自身の体調や寝つきの感覚と照らし合わせながら、自分にとってのベストな門限時間を見つけていくことが大切です。この研究結果を、そのための強力な出発点として活用してくださいね。
まとめ
睡眠を壊さないためのカフェインとの付き合い方の概要
ポイント1: カフェインは睡眠時間を平均45分削り、質も低下させる。
ポイント2: コーヒーの門限は「就寝の8.8時間前」が目安。
ポイント3: 自分の就寝時間から逆算し、「マイ・カフェイン門限」を守ろう。
今回は、最新の研究をもとに、カフェインが睡眠に与える影響とその対策について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
①カフェインは睡眠の量と質を確実に低下させる
日中のパフォーマンスのために飲んでいるカフェインが、知らず知らずのうちに夜間の回復を妨げ、翌日のパフォーマンス低下を招くという悪循環を生んでいる可能性があります。
総睡眠時間が約45分も短くなるという事実は、決して軽視できません。
②重要なのは「深い睡眠」の確保
カフェインは、脳と体の修復に不可欠な「深い睡眠」を減少させます。
睡眠時間を確保していても疲れが取れない場合、カフェインによって睡眠の質が低下しているのかもしれません。
③「就寝の8.8時間前」という目安を意識する
「夕方以降は控える」といった曖昧なルールではなく、「午後2時まで」といった具体的な門限を設けることが、睡眠改善の第一歩です。
まずはコーヒーの門限から意識してみてはいかがでしょうか。
最後に
カフェインは、私たちの生活に活力をもたらしてくれる素晴らしいパートナーです。
しかし、その力を最大限に活かすためには、適切な距離感で付き合うことが何より大切。
今回の記事が、あなたとカフェインのより良い関係づくり、そして質の高い睡眠を手に入れるための一助となれば幸いです。
参考文献
Clark, I., & Landolt, H. P. (2017). Coffee, caffeine, and sleep: A systematic review of the stimulating effects of caffeine on sleep. Sleep Medicine Reviews, 31, 70-78. (※この論文は元論文で引用されているもので、今回の主要論文は以下です)
Gardiner, C., et al. (2023). The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 101764. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2023.101764
健康・医学関連情報の注意喚起
本記事は、カフェインと睡眠に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 不眠症などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。