【重要なお知らせ】本日10月1日より、当ブログは「科学×経験 心身健康ラボ」(旧:理学療法士の思考)に名称を変更しました。詳細はこちらから

時間がないあなたへ。WHOが認めた「細切れ運動」で心身を整える方法

  • URLをコピーしました!
Aさん

はぁ…。最近、体がだるくて重いんです。

運動しなきゃってわかってるんですけど、ジムに行く時間なんてないし、そもそも10分走り続ける体力すらないですよ…

Bさん

わかります!

私も夜勤明けは泥のように眠るだけで、運動なんて無理。

でも、腰痛は悪化する一方だし、将来の健康が不安で…

PTケイ

Aさん、Bさん、その気持ち、痛いほどわかります。

私もかつて体調を崩した時、『運動しましょう』という言葉がプレッシャーでしかありませんでした。

でも、朗報です!2020年に発表されたWHO(世界保健機関)のガイドラインで、『運動は10分以上続けなくてもいい』という画期的な方針転換があったんです。

今日は、忙しい私たちでも無理なくできる、科学的根拠に基づいた『新しい健康の常識』についてお話ししますね。

目次

1分でわかる要約 (1-Minute Summary)

🌱 この記事の結論:「10分」の呪縛を捨てよう

  • ✅ 【新常識】「細切れ」でも効果は同じ 以前の「10分以上続けないと意味がない」というルールは撤廃されました。家事、通勤、階段など、1分程度の短い動きも全て健康資産としてカウントされます。
  • ✅ 【推奨ライン】週150〜300分 & 脱・座りすぎ 成人は週に150分以上の中強度運動が目標ですが、それ以上に「座っている時間を減らすこと」が重要です。座りっぱなしは死亡リスクを高めます。
  • ✅ 【誰でも】病気や痛みがあっても「動く」 高齢者や慢性疾患がある人でも、安全な範囲で動くことが推奨されます。「動かないリスク」の方が大きいことが科学的に証明されました。
  • 🕊 PTケイのひとこと: 「ジムに行かなきゃ」と自分を追い込むのはもう終わり。ゴミ出しも、コピー取りも、立派な運動です。「Every move counts(すべての動きが重要)」。この言葉をお守りにしてください。

研究紹介 (Research Introduction)

2020年、世界保健機関(WHO)の Bull FCら(ガイドライン策定グループ) が発表した研究によると、全ての年齢層において定期的な身体活動が死亡率や病気のリスクを下げること、そして「どんなに短い活動でも健康に有益である」ことが示唆されています。

今回は、この画期的なガイドライン「WHO 2020 Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour」を紐解いていきましょう。

1. 「10分ルール」の撤廃!すべての動きがカウントされる時代へ

かつての2010年のガイドラインでは、「有酸素運動は少なくとも10分間継続する必要がある」とされていました。

しかし、2020年の最新ガイドラインではこの記述が削除されました。

最新の研究レビューにより、10分未満の短い活動であっても、積み重ねれば健康上の利益(死亡率の低下や心血管疾患の予防など)があることが明らかになったからです。

WHOは「Every move counts(すべての動きが重要)」というメッセージを打ち出しています。これは、まとまった時間が取れない現代人にとって非常に大きなパラダイムシフトです。

  • 中強度の活動(MPA)※: 息が弾む程度の活動(早歩きなど)。
  • 高強度の活動(VPA)※: 会話が途切れる程度の活動(ランニングなど)。

これらをどのような組み合わせでも良いので、日常生活に取り入れることが推奨されています。

※中強度・高強度(METs):運動の強さを表す単位。座っている状態を1として、何倍のエネルギーを使うかで示します。


PTケイ

当時の私は、運動を分けて行っても同じ効果があると知っておりながら、よくは理解できていなかったようでした。

患者さんには言いつつ、自分にはより高い運動目標を架してしまい、達成できず落ち込むことが多かったです。

もっと気楽に、日常生活に取り入れることで、『運動をしなければ』という重荷を捨て去ることができたと思います。


2. 具体的な目標数値と「座りすぎ」への警告

成人(18〜64歳)に対する具体的な推奨事項は以下の通りです。

  • 有酸素運動: 週に150〜300分の中強度運動、または75〜150分の高強度運動。
  • 筋力トレーニング: 週に2日以上、主要な筋肉群(足、背中、胸など)を使う運動。

そして今回、特に強調されたのが「座位行動(Sedentary Behavior)※」のリスクです。

座りっぱなしや寝転がっている時間が長いほど、心臓病やがん、死亡率のリスクが高まることが示されました。

ガイドラインでは、「座っている時間を減らし、どんな強度でもいいので身体活動に置き換えること」を強く推奨しています。

※座位行動(Sedentary Behavior):覚醒している状態で、座位または臥位(寝ている)で、エネルギー消費が1.5METs以下の状態。


PTケイ

デスクワークが多いと、肩こりや腰痛の原因になりやすいですよね。これは、この記事を執筆している今のわたしも、自宅にいることが増えたので座っている時間が長くなりがちです。

私には1歳の息子がいますので、だっこが必要なときは積極的にだっこして、家の中を歩き回ったり、外に散歩に行くこともあります。

1日の中でさり気なく活動量を増やしていくことが重要だと思っています。


3. 高齢者や持病がある人こそ「動く」ことが重要

今回のガイドラインでは、高齢者(65歳以上)、妊産婦、慢性疾患(高血圧、糖尿病、がんサバイバー、HIVなど)、障害を持つ人々への推奨も明記されました。

特に高齢者には、有酸素運動や筋トレに加え、「マルチコンポーネント身体活動※」が週3日以上推奨されています。これは、バランス能力と筋力を同時に鍛え、転倒を予防するためのものです。 また、慢性疾患がある場合でも、禁忌(やってはいけない状態)がない限り、「運動しないリスク」よりも「運動するメリット」の方が大きいと結論付けられています。

※マルチコンポーネント身体活動:バランス運動、筋力トレーニング、有酸素運動などを組み合わせた複合的な運動プログラム。


PTケイ

病気や痛みがある時、動くのは怖いです。「もっと悪くなるんじゃないか」「痛みが強くなるんじゃないか」という不安は、理学療法士としての知識があっても、患者としての私が常に感じていたことでした。

でも、寝たきりでいることの恐怖もまた、私は知っています。筋力は驚くほどの速さで衰え、心も塞ぎ込んでいきます。

大切なのは「誰かと比べること」ではなく、「昨日の自分より少しだけ動けたこと」を喜ぶことです。

慢性疾患を持つ方へのガイドラインが出たことは、「安全な範囲であれば、動くことはあなたの味方になる」という力強いエールです。

まずは主治医やリハビリスタッフに相談しながら、あなたのペースで始めてみてください。

【PTケイのQ&A】 (Q&A Section)

家事や通勤も「運動」にカウントして本当にいいんですか?

【専門家視点】はい、WHOのガイドラインでも明確に認められています。心拍数が少し上がるような早歩きの通勤や、掃除機がけ、階段の上り下りなどは、立派な中強度の身体活動です。

【当事者視点】「ジムに行かなきゃ運動じゃない」なんて思わないでください! 私は調子が悪い日、お風呂掃除をしただけで「今日はすごい運動した!」と自分を褒めていました。生活の中の動きを肯定することが、継続の秘訣です。

どこかが痛くても運動していいのでしょうか?

【専門家視点】急性期の激しい痛みでなければ、適度な運動は慢性痛の改善に役立つことが多いです。ただし、医師から運動制限が出ている場合は指示に従ってください。

【当事者視点】痛いと動きたくないですよね。でも、じっとしていると筋肉が固まって余計に痛くなる悪循環に陥ることがあります。私は「痛気持ちいい」範囲のストレッチから始めました。無理は禁物ですが、過度な安静もまた敵なのです。

忙しくて時間が全く取れません。

【専門家視点】「座っている時間を減らす」ことから始めてみましょう。スタンディングデスクを使ったり、テレビを見ながら足踏みをするだけでも、座位行動のリスクを減らせます。

【当事者視点】忙しいとなかなかやる気も出にくいですよね。仕事と家事でクタクタですよね。私は「わざわざ運動する時間」を作ろうとして失敗しました。今は、歯磨きしながら「かかと上げ」をする、お湯が沸くまでの間に「肩を回す」など、「ついで運動」を基本として乗り切っています!

まとめ (Conclusion)

🍀 今日のまとめ

  • 🏃‍♂️ 1分でもOK! 10分以上続けなくても、細切れの運動で健康効果は積み上がります。
  • 🪑 脱・座りっぱなし! 座っている時間を減らし、少しでも立つ・歩くことが第一歩です。
  • 🤝 誰でもできる! 高齢の方も、持病がある方も、自分のペースで動くことが推奨されています。
  • 🌟 Every move counts. あなたの日常のすべての動きに、価値があります。

今のあなたに必要なのは、高価なジムの会員権でも、最新のトレーニングウェアでもありません。「今のままで、すでに十分頑張っている」と認めた上で、「ほんの少し、体をいたわる動き」を生活に混ぜてあげることだけです。

10秒背伸びをする。それも立派な第一歩。 あなたが今日、自分のために起こした小さなアクションが、明日の笑顔につながると信じています。一緒に、ゆっくり進んでいきましょう。

参考文献 (References)

  • Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462.

注意喚起 (Disclaimer)

本記事は、身体活動ガイドラインに関する情報提供を目的としており、医学的アドバイスを提供するものではありません。症状の診断や治療、特に持病をお持ちの方の運動開始については、必ず専門の医療機関にご相談ください。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次