頑張りすぎてしまう人へ

こんにちは、PTケイです。
突然ですが、あなたは「頑張りすぎ」ていませんか?
あるいは、「自分はまだ頑張りが足りない」「もっとやらないと成果が出ない」と自分を追い込み、気づけば心も体もボロボロになっていないでしょうか。
今回は、かつて私がブログ運営や資格勉強に没頭し、その結果何度も「燃え尽き」を繰り返していた頃の失敗談をお話しします。
そして、私が2023年にうつ病の療養中に通っていた、リワーク(復職支援)施設におけるプログラムの中で、たどり着いた、「なぜ私(たち)は限界を超えてまで頑張ってしまうのか?」というメカニズムについての考察ノートを公開します。
これは精神論ではありません。「エネルギーの収支バランス」と「認知(物事の捉え方)」の話です。
「休んでも疲れが取れない」「やる気が続かない」と悩んでいる方にとって、この思考の整理は、長く健康に走り続けるための「新しい地図」になるはずです。
私の失敗談:ブログ更新という名の「暴走」

私はもともと、何かに熱中するとブレーキが効かなくなるタイプでした。
特に2016年頃、ブログ運営にハマっていた時期の生活は、今思い返すと明らかに異常でした。
当時の私はフルタイムで働きながら、以下のような生活を続けていました。
- 理学療法病院勤務:平均 1時間程度の残業をこなす
- 帰宅後: 夕食や睡眠の時間を削り、1時間〜1時間半、ブログ記事の執筆に没頭する(通勤時間を減らすために引っ越しもしました。)
- ブログを書かない日: 資格の勉強や、知識をまとめるノート作り、職場での勉強会資料作成、研究う活動等に時間を充てる
最初の1〜2ヶ月は、アドレナリンが出ていたのでしょう。「自分は時間を有効に使えている!」「頑張れている!」という全能感がありました。
しかし、そのツケは確実に溜まっていました。
3ヶ月目に、突然「強制終了」が訪れました。
ある朝、何もやる気が出なくなり、PCを開くことすらできなくなりました。休日は何もできず、ただ布団の中でスマホを眺めるだけの「廃人状態」。
そこで一定期間(数週間〜数ヶ月)休み、少し回復すると「よし、治った!」と勘違いして、また同じペースで走り出し、また燃え尽きる…。
私は、常に「燃え尽き症候群の予備軍」として、アクセルとブレーキを踏み間違え続けていたのです。
【持論】リワークで分析した「4つのループ」

うつ病で休職し、リワークプログラムに参加した際、私は自分のこの行動パターンを徹底的に分析しました。
そこで気づいたのは、人にはエネルギーを使う際に「4つのループ」が存在する(※持論です)ということです。
あなたは今、どのループにいますか?
① ガンバループ(燃え尽き一直線)

頑張る → 疲れる → (休まず)もっと頑張る → さらに疲れる → 燃え尽きる
これは最も危険な状態です。「疲れ」という体のサインを無視して、「気合」で走り続けた結果、エンジンが焼き切れてしまいます。
② 隠れ燃え尽きループ(※最も注意が必要!)

頑張る → 疲れる → 回復する → 頑張る → 疲れる → 回復する → (実は回復が間に合わず)燃え尽きる
私が陥っていたのは、まさにこれでした。
週末に寝て「回復した」つもりになっていましたが、実は消費したエネルギーに対して回復量がわずかに足りていなかったのです。
例えば、100の疲れに対して、90しか回復していないのに月曜日を迎える。これを繰り返すと、マイナス10の借金が積み重なり、ある日突然、破産(燃え尽き)します。
「ちゃんと休んでいるはずなのに、なぜか辛い」という人は、このループにハマっている可能性が高いです。
③ 真の回復ループと④ 元気ループ(理想形)

③ 真の回復ループ
頑張る → 疲れる → 回復する → (回復量が疲れを上回る) → 元気に戻る
④ 元気ループ(理想形)
頑張らない → 疲れない → いつも元気
私たちが目指すべきは、借金を完済できる③か、そもそも借金を作らない④の状態です。
しかし、「頑張りすぎ」な人は、無意識に①か②を選んでしまっているのです。
「頑張る」の正体は「頑なな緊張」

そもそも、「頑張る」とはどういう状態なのでしょうか?
私は辞書的な意味や自分の感覚を深掘りし、一つの定義にたどり着きました。
頑張る = 頑(かたくな)に意地を張り、緊張感を保ち続けること
「頑な(かたくな)」という言葉の語源には、「誤ったこと、愚かなこと」という意味も含まれるそうです。
つまり、「頑張っている状態」とは、「必要以上に緊張感(ストレス状態)を、愚直に維持し続けている状態」と言い換えられます。
これを分解すると、以下のようになります。
- 行動レベル: 長時間の集中、忍耐、休憩なしの継続
- 身体レベル: 筋肉の緊張、浅い呼吸、疲労、痛み
- 感情レベル: 辛い、苦しい、焦り
これらはすべてリンクしています。
「頑張りすぎ」て行動することは、身体を「戦闘状態」にし続けることであり、その結果として「辛い」という感情が生まれます。
つまり、「辛い」と感じている時点で、あなたはすでに「頑なな緊張状態」に長く居すぎているのです。
「頑張ったかどうか」は、事実ではなく「基準」で決まる

もう一つ、私が気づいた重要な点は、「頑張ったかどうかの判定基準」の曖昧さです。
例えば、食事で考えてみましょう。
- 基準が「1日3食」の人 → 「今日は2食しか食べられなかった(頑張りが足りない)」
- 基準が「1日1食」の人 → 「今日は2食も食べた!(食べ過ぎた)」
同じ「2食」という事実でも、基準によって評価は真逆になります。
テストでも同様です。いつも100点を取る人は90点でも「悔しい、もっと頑張ろう」と思いますが、平均点が60点だと思っていれば70点で「よくやった」と自分を褒められます。
頑張りすぎてしまう人は、この「合格ラインの基準」が無意識のうちに極端に高くなっていることが多いです。
「毎日更新しなければならない」「1時間やらなければ意味がない」
その高すぎる基準と現実とのギャップを埋めるために、必死で(頑なに)頑張り続け、疲弊してしまうのです。
対策:基準を下げて、疲れが出る前にやめる

では、どうすれば「元気ループ」に移行できるのでしょうか?
私の提案する対策は2つです。
1. 疲れが出る前に終了する

「疲れたから休む」では遅いのです(ループ②になる可能性があります)。
「まだできる」「調子がいい」と思っている段階で、あえて切り上げてください。
「1時間頑張る」のではなく、「30分でやめる」。
余力を残して終わることこそが、最大の「継続のコツ」です。
2. 自分軸の「合格基準」を下げる

他人の評価や世間の常識ではなく、今の自分の状態に合わせた基準を設定しましょう。
「ブログを書き上げる」ではなく、「タイトルだけ考える」。
「本を熟読する」ではなく、「30分でざっと眺める」。
基準を下げて、「頑張らなくても達成できる目標」にしてしまえば、そもそも「頑張る(緊張する)」必要がなくなります。
【専門家の視点】理学療法士として考えると… (PT’s Perspective)

今回の「頑張りすぎ」に対するアプローチは、リハビリテーション医学の分野で「アクティビティ・ペーシング(Activity Pacing)」と呼ばれる手法そのものです。
1. アクティビティ・ペーシングとは?

これは、慢性疼痛や慢性疲労症候群の治療などで使われる概念です。
「調子が良い時にやりすぎてダウンし、休んでまたやりすぎる」という活動の波(ブーム&バスト)を平坦にし、エネルギー切れを起こさないように活動量をコントロールすることを指します。
私が提案した「疲れが出る前に終了する」は、まさにこのアクティビティ・ペーシングの核心です。「活動」と「休息」をセットにして計画的に行うことで、トータルの活動量を維持しつつ、燃え尽きを防ぐことができます。
2. 交感神経の「マスキング効果」に騙されない

人は「頑張っている」時、交感神経が優位になり、アドレナリンなどの興奮物質が分泌されます。これらは一時的に「疲労感を感じさせなくする(マスキングする)」作用を持っています。
「調子が良いからもっとやろう!」と思った時こそ危険です。
アクティビティ・ペーシングでは、体の感覚(主観)だけでなく、「時間」や「回数」で区切って強制的に休むことが推奨されています。
3. 認知的評価と筋緊張

※筋肉はイメージです。⇧スライドの筋肉は通常存在しない筋肉(走行)です。
「自分はダメだ」「もっとやらなきゃ」という焦り(認知の歪み)は、脳から脊髄を通って、全身の筋肉を持続的に緊張(過緊張)させます。これが肩こりや頭痛、全身の倦怠感の正体です。
「基準を下げる」というメンタル面のアプローチは、「脳からの緊張指令を解除し、体を緩める」という物理的なリラクゼーション効果も持っているのです。
まとめ (Conclusion)


もし今、あなたが「辛いけれど、まだ動けるから頑張ろう」と思っているなら、それはすでに「黄色信号」かもしれません。
完璧じゃなくて大丈夫です。
今日は「アクティビティ・ペーシング」を意識して、予定より5分早く作業を切り上げてみませんか?
その5分の休息が、明日のあなたの元気を守ってくれます。
