片麻痺の患者さんに対してMMT・MAS・深部腱反射をそれぞれ測定しているものの、その結果をどう解釈し、評価同士をどう関連づけて治療に活かせばいいのか、いまいち自信が持てないという方も多いのではないでしょうか。
(私が新人の頃は、病院で決められた評価を取ることだけで精一杯だった時期がありました…笑)
この記事では、3つの評価それぞれの評価方法と判定基準を整理した上で、それらを組み合わせて臨床判断につなげる視点と、治療への反映方法を解説していきますね。読み終える頃には、3つの評価の意味と判定基準が体系的につながり、患者さんの状態をより自信を持って判断できるようになっているはずです。
片麻痺の理学療法評価はMMT・MAS・深部腱反射が軸になる

片麻痺の理学療法評価は、突き詰めると「陰性徴候」と「陽性徴候」を両方きちんと押さえることが基本軸になるんですね。上位運動ニューロン徴候は、筋力低下や巧緻性低下といった運動制御の喪失を指す陰性徴候と、痙縮・反射亢進・クローヌスなど筋活動の過剰を指す陽性徴候に分けて整理されます[1]。
具体的には、以下の3つが標準的な検査として位置づけられています。
- Manual Muscle Testing(以下MMT、徒手筋力検査法):筋力低下の重症度や、どの部位に分布しているかを判定(陰性徴候)
- Modified Ashworth Scale(以下MAS、修正アシュワーススケール):他動運動への抵抗感から、痙縮の程度を段階的に判定(陽性徴候)
- Deep Tendon Reflex(以下DTR、深部腱反射):反射亢進やクローヌスの有無を左右差とともに確認し、錐体路障害を捉える(陽性徴候)
この3つは、BRS(ブルンストロームステージ)やSIAS、FMAといった包括的な運動麻痺評価バッテリーと組み合わせて使うことで、より個別的な介入方針につながっていきます。病期ごとの評価バッテリーの使い分けについては脳梗塞の理学療法評価まとめ!病期別の評価項目一覧で詳しく整理しています。
MMTで片麻痺の筋力低下の程度と分布を評価する
MMT(徒手筋力検査法)は、重力や検者の徒手抵抗に対する筋収縮能を0〜5の6段階で判定し、筋力低下の有無・程度・分布を把握する評価法ですね。重力に抗して全可動域を動かせるか(グレード3)が判定の分かれ目になります[2]。
上肢・下肢別のMMT測定ポイントと注意点
片麻痺では股関節屈筋・膝伸筋・足関節背屈筋などの下肢抗重力筋と、上肢の主要筋群を中心に測定します。麻痺側だけでなく、非麻痺側の代償筋力や廃用性筋力低下の分布も併せて確認すると全体像がつかみやすくなります。
片麻痺特有の代償動作によるMMT誤差に注意する
回復初期で共同運動パターンや痙縮が優位な時期は、個別の筋を単独で収縮させる分離運動自体が難しく、末梢神経疾患と同じ感覚でMMTを行うと評価がぶれやすくなります。上位運動ニューロン徴候には筋の同時収縮(co-contraction)や連合反応(synkinesia)も含まれるため、狙った筋だけを働かせる前提が崩れるんですね[1]。「筋力が出ていない=弱い」と単純に判断しがちですが(私も昔はよくやりがちでした(笑))、分離運動が進んだ段階で初めて機能的な筋力発揮の指標として活用しやすくなる、という点は押さえておきたいですね。
MASで痙縮の程度を段階的に評価する

MAS(Modified Ashworth Scale)は、関節を1秒程度で他動的に伸張した際の抵抗感から痙縮の強さを判定する、世界的にもよく使われる評価スケールです[3]。
MASの0〜4段階評価基準と判定のコツ
判定は以下の6段階です。
- 0: 筋緊張の亢進なし
- 1: 可動域終末でわずかな引っかかり(catch)や抵抗
- 1+: 引っかかりが明らかで、可動域1/2未満まで抵抗が続く
- 2: 可動域の大部分で亢進があるが他動運動は可能
- 3: 著しい亢進で他動運動が困難
- 4: 屈曲・伸展位で固着し受動運動が困難
判定のコツは伸張速度を毎回一定にすることです。MASは肘関節屈筋群など一部の筋で比較的高い検者間一致率が示される一方、下肢の筋では信頼性が低くなると報告されており[3]、下肢を評価するときほど速度と肢位の再現性に気を配りたいところですね。
深部腱反射の異常から病巣と重症度を推測する
深部腱反射(DTR)は反射弓や下行性抑制路の完全性をみる評価で、病巣の局在や重症度推測に役立つ客観的な神経学的所見です[4]。
腱反射亢進・低下が示す病巣部位の違い
反射亢進は下行性抑制が途絶した上位運動ニューロン障害(脳血管障害等)を、反射減弱・消失は反射弓自体の断裂=下位運動ニューロン・末梢病変を疑うサインです。髄節ごとの反射中枢(膝蓋腱反射=Patellar Tendon Reflex、以下PTRはL2〜L4、アキレス腱反射=Achilles Tendon Reflex、以下ATRはS1〜S2等)から境界レベルを探ることで高位診断にもつながります[4]。なお、ここでいう「高位診断」は、脊髄損傷のように脊髄のどの髄節が障害されているかを特定するという意味合いではなく、片麻痺(脳血管障害)の場合は、反射異常の分布や随伴する所見(脳神経症状の有無など)から、責任病巣が大脳(視床・皮質下を含む)にあるのか脳幹にあるのかを推定する、という意味合いで使っています。たとえば、顔面や眼球運動の異常など脳神経症状を伴う場合は脳幹病変を、四肢の腱反射異常のみで脳神経症状を伴わない場合は大脳半球病変を疑う手がかりになります。
反射評価から発症時期・重症度を推測する視点
クローヌスを伴う著明亢進は皮質脊髄路の高度な脱抑制を示しますが、急性期の重篤な中枢病変では「脊髄ショック」で一時的に反射が消失することもあり、発症時期を踏まえた解釈が欠かせません(私も評価のたびに意識している視点です)。
3評価を統合して片麻痺の重症度を臨床判断する

実際の臨床では、3つを単独で見るのではなく組み合わせて重症度を判断するという視点がとても大切になってきますね。
例えば、MMTが低値でも深部腱反射が亢進していれば、単なる筋力低下ではなく中枢性の要素が強いと推測できますし、MASが高くてもMMTがある程度保たれていれば、随意性は残存していると判断できます。
- MMT:随意運動の出力レベル
- MAS:安静時の筋緊張の質
- DTR:中枢神経系の興奮性
この3つを重ね合わせることで、痙縮優位型なのか、弛緩性麻痺に近いのかといった病態像の解像度がぐっと上がっていくんですよね。単一の評価に頼らず、常に他の評価と照らし合わせる姿勢を持ってみるのもおすすめです。
評価結果は片麻痺の治療プログラム立案に活かす
MMT・MAS・DTRといった評価結果は、あくまで片麻痺のプログラム立案に活かしてこそ意味があるものだと感じています。
実際にプログラムを組む際は、BRSやFMA、SIAS、BBS、FIMといった標準化指標を組み合わせ、運動麻痺・バランス・ADL(日常生活動作)を多面的に捉える視点が基本になりますね。MMT・MAS・DTRの結果は、そこでどこにアプローチの優先度を置くかを判断する材料になります。
病期別の目標設定や具体的なプログラムの立て方については、詳しくは脳卒中リハビリプログラムの立て方!病期別の評価と目標設定をご覧ください。
まとめ:片麻痺の理学療法評価(MMT・MAS・深部腱反射)

ここまで、片麻痺の評価としてMMT・MAS・深部腱反射の3つを見てきましたね。それぞれ単独で見るのではなく重ね合わせることで、患者さんの状態をより立体的に理解できるようになるのではないかと感じています(とはいえ、私自身もまだまだ勉強中の身です・笑)。
評価はあくまでスタートラインであり、そこからどう治療プログラムに落とし込んでいくかが本番ですね。
「なぜこの数値になっているのか」を考え続ける姿勢を、これからも大切にしていきたいと思っています。
引用文献
[1] Margetis K, Hall WA. Neuroanatomy, Upper Motor Neuron Signs. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK541082/. 2026年5月18日更新. アクセス日: 2026年09月16日.
[2] Naqvi U, Margetis K, Sherman AL. Muscle Strength Grading. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK436008/. 2025年4月27日更新. アクセス日: 2026年09月16日.
[3] Harb A, Margetis K, Kishner S. Modified Ashworth Scale. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK554572/. 2025年4月4日更新. アクセス日: 2026年09月16日.
[4] Rodriguez-Beato FY, De Jesus O. Physiology, Deep Tendon Reflexes. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562238/. 2023年8月28日更新. アクセス日: 2026年09月16日.





