はじめに:情報過多の時代、あなたの読書は「行動」に繋がっていますか?
2019年の年末、私は赤羽雄二さんの著書『アクションリーディング』を読み返し、その内容に改めて感銘を受けたことを覚えています。
AIや5Gといった言葉が飛び交い始め、社会が大きく変わろうとしていた当時、「これから自分は何を学び、どう行動していけば良いのだろうか」という漠然とした不安を抱えていました。
この本は、そんな私にとって、読書を通じて未来をデザインし、具体的な行動へと繋げるための羅針盤となりました。
あれから数年が経過し、社会の変化はさらに加速しています。
情報がかつてないほど簡単に手に入るようになった一方で、その情報をいかに自身の成長や成果に結びつけるか、という課題はより一層重要性を増しています。
この記事では、2019年当時の私の読書感想を元に、赤羽雄二さんが提唱する「アクションリーディング」の本質と、それを現代の理学療法士やビジネスパーソンがどのように実践し、自己成長と成果創出に繋げることができるのかについて、2025年の視点から情報をアップデートし、深掘りしていきます。
1. 「何を学べばいいのか?」迷いを断ち切る「5年後のビジョン」
変化の激しい時代において、「今、何を学ぶべきか」という問いに明確な答えを出すのは容易ではありません。
新しい技術や情報が次々と現れ、どれも重要に見えてしまい、結果として学びが分散し、何も身につかない…という状況に陥りがちです。
『アクションリーディング』では、この問いに対する一つの明確な答えとして、「5年後の自分のビジョン(ありたい姿)を見据え、そこから逆算して今やるべきことを明確にする」ことの重要性が強調されています。
- なぜ5年後なのか?: 1年後では近すぎて現状の延長線上にしかなりにくく、10年後では遠すぎて具体的にイメージしにくい。5年後という期間は、ある程度の変化を伴いつつも、具体的な目標設定と行動計画に落とし込みやすい、絶妙な時間軸と言えます。
- ビジョンの具体化: 「5年後にどんな専門家になっていたいか」「どのような評判を得ていたいか」「どんなライフスタイルを送っていたいか」など、できるだけ具体的にイメージし、紙に書き出すことが推奨されています。
この「5年後のビジョン」が明確になることで、日々の情報収集や学習の方向性が定まり、「何を学ぶべきか」という迷いが格段に減ります。
2. 赤羽雄二氏の行動パターンから学ぶ:インプットとアウトプットの高速サイクル
本書では、著者である赤羽雄二さん自身の具体的な行動パターンも紹介されており、非常に参考になります。
- 朝の情報収集ルーティン: 毎朝7時に起床し、約1時間半をメールチェックとGoogleアラート(特定のキーワードに関連する新着情報を自動で収集する機能)による情報収集に充てる。
- 夜のインプットとアウトプット: 夕食後、翌日の資料作成などを終えた後は、読書やブログ執筆などのアウトプットに時間を使い、深夜1時半には就寝する。
- 睡眠時間の最適化: 睡眠時間は、自身がギリギリでパフォーマンスを維持できる最小限の時間に設定しているとのこと。これは万人に推奨されるものではありませんが、自分自身の体調や集中力のパターンを深く理解し、最適な睡眠時間を見つけることの重要性を示唆しています。
この行動パターンから学べるのは、質の高いインプットと、それを定着させ価値を生み出すためのアウトプットを、日々のルーティンの中に効果的に組み込んでいる点です。特に、Googleアラートのようなツールを活用した効率的な情報収集は、多忙な現代人にとって必須のスキルと言えるでしょう。
3. 「アクションリーディング」の核心:読書を血肉に変える技術
『アクションリーディング』の核心は、単に本を読むだけでなく、そこから得た知識や気づきを具体的な「行動」に繋げ、成果を生み出すための読書術です。
3.1. 読書量の目安と「質」のバランス
- 30歳までに300冊が一つの目安: 本書では、30歳までに300冊の本を読んでいれば、その後の読書は年間50冊程度でも十分な知見が得られる、という目安が示されています。
- 小説の重要性: 300冊のうち半分は小説を読むことを推奨しています。ビジネス書や専門書に偏りがちな私(2019年当時)にとっては、小説を読むことで得られる共感力、想像力、人間理解の深化といった点に改めて気づかされました。多様なジャンルの本を読むことが、思考の幅を広げます。
3.2. アウトプットの徹底:読んで終わり、にしない
このブログでも繰り返しテーマにしていますが、インプットした情報を自分のものにするためには、アウトプットが不可欠です。赤羽さんも、ブログなどによるアウトプットを強く推奨しています。
- 一冊集中と活用レベルへの到達: 複数の本を並行して読むのではなく、一冊の本を集中して読み込み、その内容を自分なりに消化し、「自分の仕事や生活にどう活かせるか」という活用レベルまで落とし込んでから次の本へ進むことが推奨されています。
- 読書感想や書評の習慣化: 読んだ本の内容を要約したり、自分の考えを加えたりして書評やブログ記事としてアウトプットすることは、理解を深め、知識を定着させる上で非常に効果的です。私も、この習慣は今後も続けていきたいと強く感じています。
4. 仕事で成果を出すための鍵:「質」と「スピード」の両立
理学療法士の仕事は、患者さんへの直接的なリハビリテーション(戦術的要素)が中心と捉えられがちです。
そのため、勉強会も手技や明日から使える介入方法といった内容が多くなりがちです。しかし、実際の業務には、書類作成、多職種連携のための会議での発言、情報収集・発信など、一般的なビジネススキルが求められる場面も数多く存在します。
これらの業務においては、「質」を担保しつつ「スピード」を上げていくことが、成果を出すための重要な鍵となります。
本書では、そのためのスキルアップとして以下の点が挙げられています。
- 仕事のスピード向上: 思考の高速化(ゼロ秒思考など)、PCスキル(ショートカットキー活用など)、タスク管理術(GTDなど)の習得。
- コミュニケーション能力・調整力の向上: 相手に分かりやすく伝える力、交渉力、合意形成能力。
- プロジェクトマネジメント能力の向上: 計画立案、進捗管理、リスク管理など、プロジェクトを推進する力。
- 資料作成能力の向上: 論理的で分かりやすい資料を効率的に作成するスキル。
- やる気の維持・向上: モチベーションをコントロールし、継続的に高いパフォーマンスを発揮する力。
理学療法のリハビリテーション自体も、目標設定(ゴール)から逆算したプランニング、エビデンスに基づいた情報収集、効果的な介入方法の選択といった「戦略的要素」が不可欠です。これらの面でも、質とスピードを高めていく努力が求められます。
5. 専門家として自立し、影響力を持つための戦略的行動:講演への道筋
本書では、その分野の第一人者として認められ、独立したり、より大きな影響力を持ったりするための一つの具体的な行動として「講演すること」の重要性が述べられています。そして、そのための非常に戦略的なステップが示されています。
- 5年後を見据え、1年後の具体的な姿を定義する:
- 1年後にどのような専門家として、どのような評判を得ていたいか?
- どのようなテーマで、どのような対象者に向けて講演をしたいか?
- 具体的に登壇を狙いたい学会やセミナーはあるか? これらをA4用紙1枚などに具体的に書き出し、目標を明確にします。
- 徹底的な情報収集と知見の深化:
- 目標とする分野の専門書を読むと同時に、関連するキーワードを数十個リストアップし、Googleアラートなどに登録。毎日関連ニュースや記事に目を通し、最新の知見を深め、自分なりの意見を持つ。
- 戦略的なブログ記事の執筆:
- 講演を企画していそうなコミュニティの幹事、事務局、セミナー企画会社の担当者などが興味を持ちそうなテーマで、ブログ記事のタイトルを20個程度リストアップする。
- 週に1~2記事、3000~4000字程度の質の高い記事を継続的に発信する。
このアプローチは、単に知識を蓄えるだけでなく、戦略的に情報を収集・発信し、自身の専門性を外部に認知させ、機会を引き寄せるための非常に具体的な方法論です。
2019年当時の私も「とりあえず真似して実践してみよう」と感じました。
6. 【2025年版】アクションプラン:今日からできる「行動」への第一歩
『アクションリーディング』から得た学びを、2025年の今、私たちが具体的な行動に移すためのアクションプランを提案します。
- ステップ1:5年後・1年後の「なりたい自分」を再定義する(A4用紙1枚にまとめる)
- キャリア、スキル、ライフスタイルなど、あらゆる側面から理想像を具体的に書き出しましょう。これが全ての行動の出発点となります。
- ステップ2:そのために「今」何をすべきか、具体的な行動プランに落とし込む
- 目標達成に必要な知識・スキルは何か?
- どのような情報を収集すべきか?(情報源、キーワードの特定)
- どのようなアウトプット(ブログ記事、勉強会発表、資料作成など)を計画するか?
- ステップ3:仕事の「質」と「スピード」を徹底的に高める意識を持つ
- 日々の業務の中で、一つでもショートカットキーを覚える、メールの処理時間を計測するなど、小さな改善から始めましょう。
- 「ゼロ秒思考」や「GTD」といった思考・タスク管理術を少しずつ取り入れてみる。
- ステップ4:読書を「行動計画」に結びつける
- 本を読んだら、「この本から得た学びを、明日からの〇〇にこう活かす」という具体的なアクションを1つでも良いので書き出す習慣をつける。
- ステップ5:小さなアウトプットから始める
- いきなり長文のブログ記事でなくても構いません。学んだことをSNSで数行発信する、同僚に話してみる、といった小さなアウトプットから始め、徐々にステップアップしていきましょう。
まとめ:読書を「消費」から「投資」へ。行動こそが未来を創る
『アクションリーディング』は、単なる速読術や多読術の本ではありません。それは、読書を通じて得た知識や気づきを、いかにして具体的な行動へと転換し、自分自身の成長や仕事の成果に繋げていくかという、極めて実践的な「行動変容の書」です。
情報が簡単に手に入る現代だからこそ、「読むだけ」では差がつきません。読んだことを自分なりに解釈し、行動し、そして発信する。このサイクルを回し続けることこそが、変化の時代を生き抜き、自分らしい未来を切り拓くための鍵となるでしょう。
2019年にこの本を再読した私は、「仕事の質とスピードを徹底的に高める」という決意を新たにしました。その思いは、今も私自身の行動指針の一つとなっています。
ぜひあなたも、『アクションリーディング』の教えを参考に、日々の読書を「消費」から「未来への投資」へと転換し、具体的な行動を通じて、なりたい自分へと近づいていってください。