Pusherのことについては前回の記事でも触れてきましたが、今回も広い視野で理学療法全体の中でPusherの認識やわかっていることについて整理していきたいと思います。35年の歴史の中でいろいろなことがわかってきた反面、まだまだわかっているとは言い難い現状があることを理解しておくことが必要かと思います。
この記事は以下の方に向けて書いています。
- Pusherの概観からわかっていないことを知りたい
- 臨床的にPusherの治療概念をどう考えればよいかを知りたい
- verticalityと半側空間無視を踏まえてどう考えるか知りたい
Pusherの研究でわかっていないことは?
PTジャーナル2020年6月を見てみると、Pusher研究小史という特集があり、前回もこの特集から記事を書かせていただきました。原著ではないですが、わかりやすく短くPusherの歴史について学ぶには最適です。この特集から、Pusherの未だに解明されていない点について整理していきます。
特集によると・・・まだ結構はっきりと入れるレベルではないものがおおいためか、十分に明らかにされていないことは多いのが現状のようです。
以下は不明点を整理すると
- Pusher現象の臨床像
- Pusher現象のメカニズム
- Pusher現象の神経解剖
- Pusher現象の治療アプローチ
つまり、
- なぜ、矯正に対して抵抗するのかについての合理的解釈は十分ではない
- 症例自身の内観についての分析も明らかではない
- 急性期~維持期に渡る長期的な回復過程の記述はない(新たな治療アプローチの効果検証が必要)
などが紹介されていますが、特に我々理学療法士が介入する上で明確な標準化されたPusherへのアプローチはまだ確立されていないということになると思います。そのために、必要な理論的な部分に関してもPusherに関してまだまだわからないことが多く、確立するための情報が不足しているのかもしれません。
Pusher現象例に対する理学療法
まだ、治療方法が確立されていない、はっきりしたPusherの原因はわかっていないということではありますが、私たちは日々Pusherの症例の臨床に携わっていくことになります。なので、今の現状を踏まえた上で、確立されていないながらも、有効性のある可能性のあるアプローチを展開していくことが大切なのではないかと思います。
では、今わかっていることとは何でしょう?
現状では、視覚的プロンプトの提示の有効性についてはある程度エビデンスがあり、有効と言っていいようです。
まとめ
Pusherの治療を考える上で、基本的にPusher現象を認める症例では、主観的視覚垂直(subjective visual vertical:SVV)は障害されていないことから視覚的フィードバックの有効性が提唱されています。(半側空間無視があるとSVVに影響があるので注意)Pusherを考える上で、verticalityについて考えることはとても重要な介入の手がかりだと思います。
今わかることを整理しつつ、臨床症例について介入を実施し、有効性があるか評価していきましょう。介入効果が示されたら症例発表をすることも今後のPusher研究の発展に寄与できる可能性があります。