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決断に迷わない!理学療法士が実践する「的確な判断」の思考法

決断に迷わない!理学療法士が実践する「的確な判断」の思考法
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「今日のランチ、何にしよう?」

「この資料、どの順番で作成するのが効率的?」

「AさんとBさん、どちらの意見を採用すべき?」…

私たちは日々、意識的・無意識的に関わらず、大小さまざまな「決断」を迫られています。

しかし、選択肢が多すぎたり、何を基準に選べばいいか分からなかったりして、「うーん…」と悩み続け、貴重な時間を浪費してしまった、という経験はありませんか?

一説によると、人間が一日にできる質の高い決断の回数には限りがあるとも言われています。

だからこそ、「的確な判断」を「効率よく」下すスキルは、現代を生きる私たちにとって非常に重要な能力と言えるでしょう。

この記事では、理学療法士である私が、日々の臨床場面での判断プロセスや自身の経験も踏まえながら、「判断」とはそもそもどのように行われるのか、そしてどうすれば私たちはもっと迷わず、自信を持って的確な決断を下せるようになるのか、その思考のメカニズムと具体的な方法について掘り下げていきます。

もしあなたが「決断疲れ」を感じていたり、判断力を高めたいと願っていたりするなら、この記事の中にきっと役立つヒントが見つかるはずです。

決断疲れしていませんか?限りある「判断力」という資源

朝起きて「今日は何を着ようか?」とクローゼットの前で悩むことから始まり、通勤中に「どのルートで行こうか?」、仕事中に「どのタスクから片付けようか?」、ランチタイムに「何を食べようか?」…

私たちの日常は、まさに決断の連続です。

一つ一つは些細なことに思えるかもしれませんが、これらの決断は確実に私たちの精神的なエネルギー、いわば「判断力」という貴重な資源を消費しています。

冒頭で触れたように、人間が1日に行える質の高い意思決定の数には限界がある、という考え方があります(具体的な数については諸説あります)。

もしこれが事実なら、重要度の低い決断に悩み時間をかけすぎてしまうと、本当に重要な場面で的確な判断を下すためのエネルギーが枯渇してしまう、いわゆる「決断疲れ」の状態に陥ってしまうかもしれません。

情報が溢れ、選択肢が無限に増え続ける現代において、判断に迷い、時間を浪費してしまう要因は数多く存在します。

だからこそ、私たちは判断の「質」を高めると同時に、判断の「効率」も意識する必要があるのです。

要注意!あなたの判断を鈍らせる「気分」という罠

では、なぜ私たちは判断に迷ってしまうのでしょうか?

その大きな要因の一つに、「判断基準の曖昧さ」が挙げられます。

そして、この基準が曖昧であればあるほど、私たちの判断はその時々の「気分」や「感情」に大きく左右されやすくなるという落とし穴があります。

例えば、レストランでメニューを選ぶ場面を想像してみてください。

もし「今日は絶対に魚料理を食べる!」という明確な基準があれば、迷いは少ないでしょう。しかし、「なんとなく美味しいものが食べたいな」という曖昧な状態だとどうでしょうか?

  • ものすごくお腹が空いていれば、「量が多いもの」に目が向きがちです。
  • 昨晩、飲み会で脂っこいものを食べた後なら、「さっぱりしたもの」を選ぶかもしれません。
  • 仕事で嫌なことがあった日は、「パーッと贅沢なもの」を選びたくなるかもしれません。
  • 逆に、給料日前で財布の中身が寂しければ、価格が最優先の基準になるでしょう。

このように、判断基準が曖昧な状況では、「空腹」「好み」「ストレス」「経済状況」といった、その時の気分や状況によって、選択肢の見え方や優先順位が大きく変動してしまうのです。

もちろん、プライベートな場面での選択であれば、気分で決めることが必ずしも悪いわけではありません。

しかし、特に仕事、とりわけ私たち理学療法士のような専門職が臨床場面で行う判断においては、気分や感情に流されることなく、客観的な根拠に基づいた一貫性のある判断が求められます。患者さんの健康や生活に関わる重要な決断を、その日の気分で左右させるわけにはいかないからです。

レストランの注文から学ぶ「判断」の基本4ステップ

気分に左右されず、より的確な判断を下すためには、私たちが無意識に行っている「判断」のプロセスを理解し、それを意識的に活用することが有効です。

先ほどのレストランの例を使って、判断の基本的な流れを分解してみましょう。

  1. 選択肢の確認: まず、メニューブックを開き、どんな料理があるのかを一通り眺めます。「このお店には、パスタ、ピザ、肉料理、魚料理があるんだな」といった具合に、選択肢全体をインプットします。
  2. 全体像の把握: 次に、それぞれのカテゴリーにどんなメニューがあり、価格帯はどのくらいか、セットメニューやランチメニューはあるかなど、より詳細な情報を把握します。「パスタは1000円前後、肉料理は1500円くらいか。ランチセットがお得そうだな」といったイメージです。
  3. 要素比較と優先順位付け: 把握した情報をもとに、いくつかの候補に絞り込み、それらを比較検討します。ここで重要になるのが「判断基準」です。「値段」「味の好み」「ボリューム」「栄養バランス」「今の気分(!)」「健康状態」「同伴者の好み」など、様々な要素(基準)を天秤にかけ、自分にとって何を最も重視するかを決めます。「今日は値段重視で、1000円以下のパスタランチにしよう」「いや、せっかくだから少し高くても、一番人気の〇〇ステーキを試してみよう」といった思考プロセスです。
  4. 決断: 比較検討の結果、最も優先順位が高いと判断したものを選択し、「〇〇をください」と注文します。

ネットショッピングで商品を選ぶ際に、「価格の安い順」「人気順」「レビュー評価の高い順」などで絞り込み検索をするのと、構造的には同じプロセスと言えるでしょう。

つまり、的確な判断とは、「十分な選択肢の中から」「全体像を把握し」「明確な基準で優先順位をつけ」「決定する」というステップの繰り返しなのです。

理学療法士の臨床判断:「毎回ゼロから考える」は本当に最善か?

この基本的な4ステップは、専門職である理学療法士の臨床判断においても同様に応用できます。

よく「患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドのリハビリを提供すべきだ」「マニュアル通りではなく、常にゼロベースで考えることが重要だ」と言われます。その理念自体は非常に大切ですし、私も共感します。しかし、「毎回ゼロベースで考える」というのは、果たして現実的であり、常に最善の結果を生むのでしょうか?

例えば、前日にバランスボールを使った体幹トレーニングについて熱心に勉強した理学療法士がいたとします。

その翌日、担当する患者Aさんのリハビリで、特に深い評価や他の選択肢との比較検討なしに、「よし、今日はバランスボールを使ってみよう!」と安易に判断してしまうケースは考えられないでしょうか?

これは、バランスボール練習を行う「きっかけ」にはなるかもしれませんし、結果的に良い効果が得られる可能性もあります。

しかし、その判断プロセスは、前日の学習という「直近の情報」や「個人的な興味」に影響されており、患者さん自身の状態やニーズに基づいた客観的な判断とは言い難い側面があります。

言わば、「気分」に近い影響を受けている状態です。

これでは、患者さん不在の、セラピスト本位なリハビリになってしまうリスクも否定できません。

では、より望ましい臨床判断のプロセスとはどのようなものでしょうか? 患者Bさんのケースで考えてみましょう。

  1. 選択肢の確認(情報収集と評価): まず、患者Bさんを評価し、問題点を明確にします。「歩行時のふらつきが大きく、体幹の筋力低下と不安定性が疑われる」という情報を得たとします。同時に、体幹トレーニングの一般的な選択肢(バランスボール、寝返り練習、ブリッジ、ストレッチポール、四つ這い練習など)を頭の中にリストアップします。これらは、日々の学習や経験によって蓄積された「引き出し」です。
  2. 全体像の把握(患者情報の収集): 次に、患者Bさんの全体像を把握するための情報を集めます。既往歴(脊椎圧迫骨折、円背)、現在の症状(右手に痛みがある)、ADL(寝返りは自立している)、生活環境、本人の希望などを確認します。
  3. 要素比較と優先順位付け(リスクと効果の検討): リストアップした体幹練習の選択肢と、収集した患者情報を照らし合わせ、各選択肢のリスクと効果を比較検討します。
    • ストレッチポール:円背があるため、背臥位で乗るのは困難かつリスクが高いかもしれない。→優先度↓
    • 四つ這い練習:右手に痛みがあるため、手をつく肢位は負荷が大きく、痛みを増悪させる可能性がある。→優先度↓
    • 寝返り練習:体幹を使うが、既に自立しており、現時点での優先度は高くないかもしれない。→優先度 中
    • バランスボール練習:座位や他の肢位でも実施可能。負荷量の調整も比較的容易。圧迫骨折や右手の痛みに対する直接的なリスクは低そう。→優先度↑
  4. ④ 決断(治療法の選択): 比較検討の結果、現時点でのリスクが比較的低く、効果が期待できる「バランスボールを用いた座位での体幹練習」を第一選択として試してみることに決定します。もちろん、実施しながら患者さんの反応を見て、随時修正していくことが前提です。

このように、臨床判断においても、レストランでの注文と同じ「①選択肢確認 → ②全体像把握 → ③優先順位付け → ④決断」という基本的なプロセスが有効であることがわかります。

「毎回ゼロベースで考える」のではなく、豊富な知識と経験(=引き出し、選択肢)をベースに、評価によって得られた患者さんの情報(=全体像)を照らし合わせ、医学的根拠や患者さんの状況に基づいた明確な基準(=優先順位付け)で最適な方法を選択する、という体系的な思考プロセスが、的確な臨床判断には不可欠なのです。

判断力を鍛える!今日からできる4つのアクション

では、どうすれば私たちはこの「的確な判断」のスキルを高めることができるのでしょうか?

日々の生活や仕事の中で意識できる、4つの具体的なアクションをご紹介します。

  1. 情報収集と整理(選択肢の質と量を高める): 判断の質は、持っている選択肢の質と量に大きく依存します。日々の学習や経験を通じて、知識の「引き出し」を増やし、その中身を整理しておくことが重要です。専門分野の知識はもちろん、幅広い分野に関心を持ち、多様な情報に触れることで、より多角的な視点から物事を判断できるようになります。
  2. 判断基準の明確化(何を優先するか原則を持つ): 「自分は何を大切にしたいのか」「この状況では何を最優先すべきか」という判断基準を、日頃から意識し、明確にしておくことが重要です。仕事であれば、組織の目標、倫理規定、エビデンス(科学的根拠)、コスト、時間、患者さんの安全や意向などが判断基準となり得ます。これらの基準を明確に持っておくことで、気分や感情に流されにくくなります。
  3. 判断プロセスの意識化(4ステップを意識的に使う): 何かを決める際に、「今、自分は4つのステップのどこにいるのか?」と意識的にプロセスをたどる練習をしてみましょう。「選択肢は十分か?」「全体像は把握できているか?」「優先順位付けの基準は明確か?」と自問自答することで、思考が整理され、より客観的な判断がしやすくなります。
  4. 決断経験と振り返り(小さな成功体験を積む): 判断力は、実際に決断する経験を重ねることで磨かれます。日常の小さな選択からで構いませんので、「自分で決める」経験を意識的に増やしましょう。そして、決断した結果どうだったかを振り返り、「なぜうまくいったのか」「なぜ失敗したのか」を分析することで、次の判断に活かすことができます。

「迷う時間」を減らす!判断プロセスを意識する習慣

判断力を高めるためのアクション、いかがでしたでしょうか? 難しく考える必要はありません。

まずは、日々のちょっとした選択から、この「判断プロセス」を意識する習慣をつけてみませんか?

  • 今日のランチを選ぶとき、「①どんなお店があるかな?(選択肢)」「②予算は?時間は?(全体像)」「③今日の気分と栄養バランスで優先順位をつけよう(優先順位付け)」「④よし、あそこの定食に決めた!(決断)」と、頭の中でステップを追ってみる。
  • 仕事で迷ったとき、一度立ち止まって「判断基準は何だっけ?」と自問してみる。基準が曖昧なら、上司に相談したり、関連資料を確認したりする。
  • よく使う判断基準(例:コスパ重視、時間効率優先、安全性第一など)をメモ帳やスマホに書き出しておき、迷った時に見返せるようにする。

このように、判断の「プロセス」を意識するだけで、思考が整理され、迷う時間が減り、より納得感のある決断ができるようになるはずです。

まとめ:迷いを減らし、自信を持って決断するために

今回は、「判断」という行為のメカニズムと、より的確な判断を下すための思考法について、日常的な例と理学療法士の臨床判断を交えながら掘り下げてきました。

  • 私たちの判断力は有限であり、効率的な判断スキルが重要。
  • 判断基準が曖昧だと、「気分」に流されやすく、的確な判断が難しくなる。
  • 的確な判断は、「①選択肢確認 → ②全体像把握 → ③優先順位付け → ④決断」という4ステップのプロセスで行われる。
  • 日々の情報収集・整理、判断基準の明確化、プロセスの意識化、決断経験と振り返りが判断力を高める鍵となる。

迷いを減らし、自信を持って決断できるようになるためには、特別な才能は必要ありません。

判断のプロセスを理解し、それを日々の生活や仕事の中で意識的に実践していくこと。

その積み重ねが、あなたの判断力を着実に向上させてくれるはずです。

この記事が、あなたの「決断」の一助となれば幸いです。

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