「理学療法士として、患者さんのためにできることは何か?」
「部下をどう指導すれば、成長を促せるのか?」
理学療法士として働く上で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?
今回は、理学療法の質と質変化のマネジメントという文献を参考に、EPDCAサイクルを基盤にした指導方法について解説します。
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 理学療法士におけるEPDCAサイクルの活用について知りたい
- 理学療法の質の向上のための管理で悩んでいる
- 部下の指導をどう行っていくか悩んでいる
なぜ、EPDCAサイクルを基盤にするのか?
今回引用する文献では、EPDCAサイクルを以下のように定義しています。
EPDCAサイクルとは、評価、計画、実行、再評価、修正のプロセスをケースマネジメントにおいて実施すること
段階 | 概要 | 具体的な行動例 |
---|---|---|
E (Evaluation: 評価) | 患者さんの状態を把握する | 問診、身体所見、検査結果の確認、生活背景の聴取 |
P (Plan: 計画) | 治療目標と計画を立てる | 患者さんの状態に合わせた短期・長期目標の設定、具体的な治療内容・方法の選択、期間・頻度などの設定 |
D (Do: 実行) | 計画を実行する | 計画に基づいた治療の実施、患者さんの反応や変化の観察 |
C (Check: 評価) | 治療結果を評価する | 目標達成度、症状の変化、患者さんの満足度などを評価 |
A (Action: 改善) | 評価結果に基づき、計画を修正する | 計画の修正、治療方法の見直し、目標の再設定 |
理学療法士が患者さんに関わる際、このEPDCAサイクルを意識することで、漫然とした治療を防ぎ、常に患者さんに最適な医療を提供することができます。
EPDCAサイクルを基盤にする上で重要なこと
文献には、EPDCAサイクルを基盤にする上で重要なことが2点記載されていました。
- 医師と同じ治療者としてのEPDCAの思考過程を、先輩が後輩にトレーニングすること
- 日々の臨床で常にケースマネジメントでEPDCAのサイクルを回し続けること

ちなみに、当サイトのロゴにも、思考過程をイメージして左側にサイクルを用いています。
1. 医師と同じ治療者としてのEPDCAの思考過程を、先輩が後輩にトレーニングすること
理学療法士は、医師の指示に基づいて治療を行うだけでなく、患者さんの状態を評価し、適切な治療計画を立て、実行するという自律性を持った役割も担っています。
そのため、医師と同じように、EPDCAサイクルに沿って思考し、行動することが求められます。
先輩理学療法士は、後輩に対して、このEPDCAサイクルの思考過程をトレーニングすることが重要です。
2. 日々の臨床で常にケースマネジメントでEPDCAのサイクルを回し続けること
患者さんの状態は常に変化します。
そのため、理学療法士は、日々の臨床の中で常にEPDCAサイクルを回し、治療計画を修正していく必要があります。

といったプロセスを、患者さんの状態に合わせて繰り返します。1ヶ月1回のカンファレンスなどを目処に、行うことが多いかもしれません。
EPDCAサイクルをできるだけはじめの数年間で多くの職域で経験すること
急性期、回復期、生活期など、様々な病期と疾患を経験することで、生活における課題を中心とした予後予測や目標設定の能力を身につけることができます。
また、その病期に応じた多職種との連携について経験することで、理学療法のマネジメント能力も向上していくと考えられます。

私自身、回復期、急性期、回復期、デイサービス、訪問リハビリなど、様々な現場を経験してきました。
それぞれの現場で、EPDCAサイクルを意識することで、患者さんの状態に合わせた適切な理学療法を提供できるようになってきたと感じています。
理学療法の質の向上
理学療法の質の向上には、質の高い「経験学習」をすることができる「学習環境」を整えることが最も重要だと考えます。

私の職場では、入職3年間で1回異動を経験するようになっています。
グループの中に急性期、回復期、生活期(デイサービス、訪問リハビリ)と一通り揃っているので、学習環境を変えることが可能です。
後輩指導の際は、EPDCAサイクルを意識して、以下の点を確認するようにしています。
- 再評価の段階が漏れていないか?
- 全体像の把握でつまずいていないか?
指導者は、部下のレベルに合わせた目標設定や課題の与え方、フィードバックの仕方など、様々なスキルが求められます。
EPDCAサイクルを意識した指導を行うことで、指導者自身のレベルアップにもつながると感じています。
おわりに
今回は、理学療法の質と質変化のマネジメントという文献を参考に、EPDCAサイクルを基盤にした指導方法について解説しました。
理学療法士として、患者さんのためにできることは何か?
部下をどう指導すれば、成長を促せるのか?
この記事が、これらの問いに対するヒントになれば幸いです。
参考文献(図1,2を含む)
佐々木嘉光. 理学療法の質向上と質変化のマネジメントに挑む─EPDCAサイクルを基盤としたスキルアップとスキルチェンジ─. 理学療法学 44 Suppl.3, 141-144, 2017.