「片付けたいけど、どこから手をつけていいか分からない…」
「整理と整頓って、結局どっちも『きれいにする』ことでしょ?」
そう思っている方、多いのではないでしょうか?
実は、ベストセラー『かたづけ思考』によると、「整理」と「整頓」は国語と算数くらい明確に違うものなのだそうです。そして、この違いを理解し、作業を分けて行うことこそが、片付け成功の鍵を握っています。
私の妻が整理収納アドバイザーなので、「整理と整頓の違いは試験に出るくらい重要だよ」とは聞いていましたが、『かたづけ思考』を読んで、その本質的な意味と、分けて実践することの大切さを改めて痛感しました。
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 「整理」と「整頓」の具体的な違いを知りたい
- 片付けが苦手で、いつも途中で挫折してしまう
- 効率的な片付けの方法を学んで、今度こそ実践したい
今回は、「整理」と「整頓」それぞれの目的と具体的な行動をたとえ話を交えて解き明かし、なぜこの二つを分けて行うことがこれほど重要なのか、その理由を深掘りしていきます。
「整理」とは? ~未来に必要なモノを選ぶ『選抜オーディション』~
まず、「整理」から見ていきましょう。
『かたづけ思考』では、整理とは「厳選すること」、つまり「モノを減らすこと」だと定義されています。
- 目的: 不要なものを取り除き、本当に必要なものだけを残すこと。
- たとえ話でイメージ: あなたは、これから始まる舞台公演のプロデューサーです。「整理」は、その舞台に登場させるメンバーを選ぶ『選抜オーディション』のようなもの。たくさんの候補者(モノ)の中から、「この舞台に本当に必要か?」「輝けるか?」という基準で、合格者(要るもの)と不合格者(要らないもの)を分けていきます。この段階では、合格者を舞台のどこに立たせるか(配置)までは考えません。まずはメンバーを厳選することに集中します。
- 具体的な行動:
- 引き出しの例: 引き出しの中身を全部出します。そして、一つひとつ手に取り、「今使っているか?」「今後使う予定があるか?」「心がときめくか?」といった基準で、「要るもの」と「要らないもの(捨てる・譲る・売る)」に分けていきます。判断に迷うものは一時的に「保留ボックス」へ。
- ポイント: ここでのゴールは、不要なモノを手放し、モノの総量を減らすこと。「どこにしまおうか」「どう使おうか」は、次の「整頓」のステップで考えます。
整理の段階で重要なのは、「要る・要らない」の判断に集中し、未来の自分にとって本当に価値のあるものだけを選び抜くことです。
「整頓」とは? ~選び抜かれたモノの『最高の舞台演出』~
整理によって選び抜かれた「要るもの」だけが残ったら、次はいよいよ「整頓」のステップです。
『かたづけ思考』では、整頓とは「配置すること」であり、その目的は「機能性」と「美観」の向上だとされています。
- 目的: 整理で残した「要るもの」を、使いやすく、かつ美しく配置すること。
- たとえ話でイメージ: オーディションで選び抜かれた精鋭メンバー(整理で残ったモノ)が揃いました。「整頓」は、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、ステージ(収納場所)上の立ち位置や動線を考え、照明や背景(見た目の美しさ)を整える『舞台演出』の作業です。誰がどこにいればスムーズに動けるか(機能性)、観客(使う人)が見て心地よいか(美観)を考え、最適な配置を決めていきます。
- 具体的な行動:
- 引き出しの例: 整理で残った「要るもの」だけを引き出しに戻します。この時、「どこに何があれば一番使いやすいか(機能性)」を考え、使用頻度の高いものを手前に置く、関連するものをグルーピングする、仕切りを使って定位置を決めるなどの工夫をします。さらに、「どう置けば見た目がきれいか(美観)」も意識し、色を揃えたり、向きを整えたりします。モノの位置が決まり、ラベルなどで表示することも整頓に含まれます。
- ポイント: ここでのゴールは、モノを探す時間をなくし(機能性)、使うたびに心地よさを感じられる(美観)状態を作り出すこと。もう「捨てるかどうか」で悩む必要はありません。
整頓は、選び抜かれたモノたちが、日々の生活という舞台で最大限に活躍できるよう、最高の環境を整えてあげる作業なのです。
なぜ「整理」と「整頓」を分けて行うべきなのか? ~二兎を追う者は…~
では、なぜこの「整理(選抜)」と「整頓(配置)」を分けて行うことが重要なのでしょうか? 一緒にやってしまった方が効率的に思えるかもしれません。しかし、そこには明確な理由があります。
- 脳の負担を減らし、判断力を維持するため: 「これは捨てるべきか?」と考える思考(整理)と、「これはどこに置くのがベストか?」と考える思考(整頓)は、脳が使う領域やプロセスが異なります。これらを同時に行おうとすると、脳は混乱し、判断力が鈍ってしまいます。結果、「捨てる決断もできず、配置も中途半端…」となりがちです。
- 集中力を保ち、効率を上げるため: 片付けは、決断の連続で意外とエネルギーを使います。「整理」の時は「要不要の判断」に、「整頓」の時は「最適な配置」に、それぞれ意識を集中させることで、作業効率が格段に上がり、疲れにくくなります。
- 挫折を防ぎ、達成感を得やすくするため: 「引き出し一つを完璧に片付ける!」と意気込んでも、整理と整頓を同時にやろうとすると時間がかかり、「まだ終わらない…」と途中で挫折しやすくなります。「今日はまず、この引き出しの整理(不要なものを出す)だけ終わらせよう」と目標を分割すれば、達成感を得やすく、次の「整頓」へのモチベーションにつながります。
- 片付けの効果を段階的に実感できるため: まず「整理」でモノが減るだけでも、「あ、スッキリした!」という効果を実感できます。その上で「整頓」を行い、使いやすさや見た目の美しさが加わることで、「片付けてよかった!」という満足感がさらに高まります。
私も以前は、整理しながら同時に整頓まで一気に終わらせようとして、結局時間がかかりすぎて途中で投げ出したり、最後は適当に詰め込んでしまったりすることが多かったです。しかし、「今は整理の時間」「今は整頓の時間」と意識を分けることで、一つ一つの作業に集中でき、以前よりスムーズに進められるようになりました。
まとめ:『整理』と『整頓』を分けて、片付けの達人へ!
「整理(減らす・厳選する)」と「整頓(配置する・使いやすく美しくする)」は、目的も行うべき行動も全く異なる、独立したプロセスです。
この違いを理解し、意識的に分けて作業を進めることが、片付けが苦手な人でもスムーズに進められ、挫折しにくい最大のコツと言えるでしょう。
まずは、家の中の一箇所、例えば引き出し一つや棚一段からで構いません。「今日は整理だけやるぞ!」と決めて、不要なモノを選び出すことから始めてみませんか? モノが減るだけでも、心と空間に余裕が生まれるのを感じられるはずです。
片付けは、単なる作業ではなく、思考を整理し、より快適で効率的な生活を手に入れるためのスキルです。『かたづけ思考』を参考に、私も自宅やPC内、職場の片付けを実践中です。ぜひ一緒に、「整理」と「整頓」をマスターして、片付け上手を目指しましょう!