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GTDで迷わない!理学療法士が解説「行動選択6つのレベル」

GTDで迷わない!理学療法士が解説「行動選択6つのレベル」
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「GTD(Getting Things Done)を導入してタスクリストは整理されたはずなのに、結局どのタスクから手をつければいいか迷ってしまう…」

「日々の細々としたタスクに追われるばかりで、自分が本当に目指していることから遠ざかっている気がする…」

そんな悩みを抱えていませんか?

デビッド・アレン氏が提唱するGTDは、頭の中の「気になること」をすべて外部化し、ストレスなく生産性を高めるための強力なタスク管理術です。

しかし、その真価を最大限に発揮するためには、単にタスクを収集・処理・整理するだけでなく、「今、どの行動を選択すべきか?」という日々の意思決定において、明確な判断基準を持つことが不可欠なのです。

この記事では、GTDの中でも特に重要でありながら、しばしば見過ごされがちな概念である「行動を選択する6つのレベル(視点)」について、理学療法士でありGTDの実践者でもある私が、名著『ストレスフリーの整理術』を参考に、自身の学びと実践経験を交えながら徹底的に解説します。

この「6つのレベル」を理解し、日々の行動選択や定期的なレビューに活用することで、目前のタスクに忙殺されることなく、長期的な目標達成へと着実に、そしてストレスフリーで近づいていくことができるはずです。

GTDを始めたばかりの方も、実践しているけれど今ひとつ効果を感じられていない方も、ぜひ最後までお付き合いください。

タスク管理だけじゃない!GTDが目指す「ストレスフリーな生産性」

まず、GTDの目的を再確認しておきましょう。

GTDは単なるタスク管理術ではありません。

その本質は、頭の中にある「未完了のタスク」「気になること」をすべて信頼できる外部システムに追い出し、頭の中をクリアな状態(マインド・ライク・ウォーター:水のように澄み切った心)に保つことで、目の前のやるべきことに集中し、ストレスなく創造的な活動に取り組めるようにすることにあります。

そのための基本的な流れが、有名な「5つのステップ」です。

  1. 収集(Collect): 気になることすべてを「受信箱(インボックス)」に入れる。
  2. 処理(Process): 受信箱の中身を一つずつ確認し、「これは何か?」「行動が必要か?」を判断する。
  3. 整理(Organize): 処理した結果を、適切なリスト(プロジェクトリスト、次のアクションリスト、カレンダー、連絡待ちリストなど)に振り分ける。
  4. レビュー(Review): 定期的に各リストを見直し、システム全体が最新の状態に保たれているか、信頼できる状態かを確認する。
  5. 実行(Do): 状況に応じて、整理されたリストの中から「今やるべき最適な行動」を選択し、実行する。

多くの人がGTDを実践する中でつまずきやすいのが、この最後の「実行」フェーズにおける「行動の選択」です。

たとえタスクリストが完璧に整理されていたとしても、「時間」「状況」「エネルギーレベル」、そして「優先度」という4つの基準に基づいて、その時々で最適な行動を選ぶ必要があるのですが、特に「優先度」の判断が難しいのです。

そこで登場するのが、今回ご紹介する「行動を選択する6つのレベル」です。

これは、私たちの仕事や行動を異なる「高度(視点)」から見渡すことで、その行動が持つ意味や重要性を判断するためのフレームワークとなります。

視点の高さを変えるだけ!行動の意味が見えてくる

GTDにおける「行動を選択する6つのレベル」とは、以下のように定義されています。

イメージとしては、飛行機の高度のように、視点の高さを変えることで見える景色が変わるようなものです。

  • Horizon レベル5:人生の目的・原則(高度15,000m以上)
  • Horizon レベル4:長期的なビジョン・目標(高度12,000m)
  • Horizon レベル3:中期的な目標(高度9,000m)
  • Horizon レベル2:責任範囲・重点分野(高度6,000m)
  • Horizon レベル1:現在のプロジェクト(高度3,000m)
  • 地面レベル:カレンダーと次のアクションリスト(滑走路)

この考え方は「垂直的GTD」とも呼ばれます。

地面レベル(滑走路)で行われる日々の具体的な行動は、より高いレベル(高度)から見ると、特定のプロジェクト(レベル1)の一部であり、さらにそれは自分の責任範囲(レベル2)を果たすためであり、中期目標(レベル3)、長期ビジョン(レベル4)、そして究極的には人生の目的(レベル5)に繋がっている、という構造になっています。

つまり、上位のレベルが下位のレベルの行動の「意味」や「方向性」を決定づけるのです。

この6つのレベルを意識することで、私たちは単に目の前のタスクをこなすだけでなく、「なぜこの行動をするのか?」という目的意識を持って、より重要で価値のある行動を選択できるようになります。

【レベル別・徹底解説】あなたの行動を導く6つの視点

それでは、各レベルについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

Horizon レベル5:人生の目的・原則(高度15,000m以上) – 究極の「WHY」

これは、最も高い視点であり、あなたの人生全体を俯瞰するレベルです。

「自分は何のために生きるのか?」

「人生において何を最も大切にしたいのか?」

「どんな人間でありたいか?」

といった、根本的な問いに対する答えがここに該当します。

  • 具体例: 人生理念、価値観、信条、ミッションステートメントなど。
    • 例:「人の成長を支援することで社会に貢献する」「常に学び続け、進化し続ける」「家族との時間を何よりも大切にする」「誠実さと感謝の気持ちを忘れない」
  • 問いかけるべき質問: 「この行動は、私の人生の目的に合致しているか?」「私の価値観に沿っているか?」
  • 役割: すべての行動の最終的な判断基準、いわば人生の「北極星」となります。明確にするのは難しいかもしれませんが、時間をかけて考え続ける価値があります。

Horizon レベル4:長期的なビジョン・目標(高度12,000m) – 3~5年後の「WHERE」

レベル5の目的を実現するために、3~5年後(書籍によっては5~10年後とも)に、あなたはどこにいたいのか、どんな状態になっていたいのかを描くレベルです。キャリア、健康、人間関係、経済状況、ライフスタイルなど、様々な側面から理想の未来像を具体的にイメージします。

  • 具体例:
    • 例:「〇〇分野の専門家として認知され、講演活動を行っている」「家族と海外に移住し、リモートワーク中心の生活を送る」「十分な資産を築き、経済的自由を達成している」
  • 問いかけるべき質問: 「この行動は、私の長期的なビジョン達成に貢献するか?」「理想の未来像に近づくために、今何をすべきか?」
  • 役割: 中長期的な行動の方向性を示し、モチベーションを高めます。具体的なロールモデルを設定するのも有効です。

Horizon レベル3:中期的な目標(高度9,000m) – 1~2年後の「WHAT」

長期的なビジョンを実現するために、より具体的に、1~2年以内に達成したい目標を設定するレベルです。年間目標などがこれに該当します。SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限付き)な目標を設定すると、より行動に繋がりやすくなります。

  • 具体例:
    • 例:「〇〇の専門資格を取得する」「現在のプロジェクトを成功させ、部署異動を実現する」「副業で月〇万円の収入を得る」「フルマラソンを完走する」
  • 問いかけるべき質問: 「この行動は、私の1~2年後の目標達成に直接的に役立つか?」
  • 役割: 長期ビジョンへの具体的なマイルストーンとなり、日々の行動計画を立てる際の重要な指針となります。

Horizon レベル2:責任範囲・重点分野(高度6,000m) – 現在の「HOW」(どの領域で)

あなたが現在、責任を負っている役割や、特に力を入れて取り組んでいる分野を明確にするレベルです。

仕事上の役割だけでなく、プライベートな側面(健康、家庭、自己啓発など)も含まれます。

  • 具体例:
    • 仕事:「〇〇プロジェクトリーダー」「新人指導担当」「△△業務改善」
    • プライベート:「健康維持(運動・食事)」「家族との時間確保」「自己投資(語学学習、資格勉強)」「資産運用」「地域活動」
  • 問いかけるべき質問: 「この行動は、私の責任範囲を果たす上で必要か?」「重点分野の目標達成に貢献するか?」
  • 役割: 日々の活動領域を明確にし、エネルギーをどこに注ぐべきかを判断する基準となります。状況に応じて変化するため、四半期ごとなど定期的な見直しが特に重要です。このレベルで「これは自分の責任範囲ではない」と判断すれば、断る、委任するといった選択肢も生まれます。

Horizon レベル1:現在のプロジェクト(高度3,000m) – 具体的な「HOW」(達成事項)

完了までに複数の具体的な「次のアクション」が必要となる、「達成したい結果」をリストアップするレベルです。

GTDでは、「2つ以上のアクションが必要なものはすべてプロジェクト」と定義されます。

レベル2の責任範囲やレベル3の目標から落とし込まれるものが多いですが、突発的に発生するものもあります。

  • 具体例:
    • 例:「来月の研修会の企画書を作成する」「〇〇さんへの提案資料を完成させる」「夏休みの家族旅行を手配する」「壊れたPCを修理に出す」
  • 問いかけるべき質問: 「この行動は、現在進行中のどのプロジェクトに属するか?」「このプロジェクトを完了させるために、次は何をすべきか?」
  • 役割: 具体的な達成目標を管理し、進捗を確認するためのリストとなります。週次レビューや月次レビューで定期的に見直し、完了したものをチェックし、新たに追加すべきものがないかを確認します。

地面レベル:カレンダーと次のアクションリスト(滑走路) – 具体的な「DOING」

最も具体的な行動レベルです。実際に「いつ、何をするか」が明確になっている状態です。

  • カレンダー: 特定の日時や曜日に行わなければならない「アポイントメント」や「締め切り」などを記入します。例:「10時に〇〇さんと会議」「金曜17時までにレポート提出」
  • 次のアクションリスト: 時間ができたらすぐに取り掛かれる、具体的で物理的な次の行動をリスト化します。状況別(例:@PC、@電話、@外出先)に分類すると便利です。例:「〇〇さんに資料送付のメールを送る」「△△の件で上司に相談する」「帰りに牛乳を買う」
  • 役割: 日々の行動の実行リスト。ここが明確かつ信頼できる状態になっていれば、「次は何をしようか?」と迷う時間が大幅に削減されます。日次レビューや週次レビューでのメンテナンスが不可欠です。

日常とレビュー:6つのレベルをどう使いこなすか?

これら6つのレベルは、それぞれ独立しているのではなく、相互に関連し合っています。

重要なのは、日常的なタスク処理と、定期的な上位レベルへの視点の切り替えをバランス良く行うことです。

  • 日常: 普段は、主に地面レベル(カレンダー、次のアクションリスト)とレベル1(プロジェクトリスト)を見ながら、目の前のタスクを着実にこなしていきます。レベル2(責任範囲)も、日々の業務判断に関わってきます。
  • レビュー: GTDで最も重要な習慣の一つである「週次レビュー」の時間には、レベル0~2を中心にリスト全体を最新の状態に保ちます。さらに、月次レビュー、四半期レビュー、年次レビューといったタイミングで、意識的にレベル3(中期目標)、レベル4(長期ビジョン)、レベル5(人生の目的)に立ち返り、現在の行動やプロジェクトがこれらの上位レベルと整合性が取れているかを確認し、必要であれば軌道修正を行います。
  • 迷った時: 日々の行動選択で「AとB、どちらを優先すべきか?」と迷った時には、一つ上のレベルに視点を上げて、「この行動は、〇〇プロジェクト(レベル1)の進捗にどう影響するか?」「これは私の〇〇という責任範囲(レベル2)において重要か?」「年間目標(レベル3)達成にどちらがより貢献するか?」と自問することで、より適切な判断が下せるようになります。

あなたの「北極星」は?6つのレベルで行動を再定義しよう

さあ、あなた自身の「6つのレベル」を具体的にイメージしてみませんか?

完璧である必要はありません。まずは、ノートやデジタルツールなど、好きな場所に書き出してみることから始めてみましょう。

  1. 書き出せるレベルから始める: レベル5(人生の目的)のような壮大な問いにすぐに答えられなくても大丈夫です。まずは、レベル1(現在のプロジェクト)やレベル2(責任範囲)、レベル3(今年の目標)など、身近で考えやすいレベルから書き出してみましょう。
  2. 定期的に見直す時間を作る: 書き出した内容は、一度作ったら終わりではありません。週次レビューや月末、年末など、定期的に見返し、更新する習慣をつけましょう。
  3. 繋がりを意識する: 日々のタスクに取り組む際に、「これはどのプロジェクトに繋がっているのか?」「このプロジェクトはどの目標に貢献するのか?」と、意識的に上位レベルとの繋がりを考えてみる練習をしてみましょう。

この作業を通して、あなたは自分の行動の「意味」を再発見し、日々のタスクに対するモチベーションを高めることができるはずです。

まとめ:6つの視点で拓く、ストレスフリーで目的ある毎日

今回は、GTDにおける「行動を選択する6つのレベル」について、その重要性と具体的な内容、そして活用法を詳しく解説しました。

  • GTDの効果を最大化するには、タスク管理だけでなく「行動選択の基準」を持つことが重要。
  • 「6つのレベル」は、行動を異なる高度(視点)から見渡し、その意味や重要性を判断するためのフレームワークである。
  • レベル5(目的)から地面レベル(行動)まで、各レベルは相互に関連し、上位レベルが下位レベルの方向性を決定づける。
  • 日常業務(レベル0-2)と定期的なレビュー(レベル3-5への立ち返り)をバランス良く行うことが鍵。
  • この6つのレベルを意識することで、行動選択の迷いが減り、目的意識が高まり、ストレスフリーな生産性を実現できる。

GTDは、単なるテクニックではなく、人生を通して学び、実践し続けていく「技術」です。

この「6つのレベル」という羅針盤を手に入れることで、あなたのGTD実践がより深く、効果的なものとなり、日々の忙しさの中でも自分の目指す方向を見失うことなく、自信を持って進んでいけるようになることを願っています。

参考文献

  • デビッド・アレン『ストレスフリーの整理術』(Getting Things Done)- GTDの原典であり、必読の書です。
  • デビッド・アレン『仕事を成し遂げる技術 ストレスなく生産性を発揮する方法』- GTDの実践をさらに深めるための書籍。6つのレベルについても詳しく解説されています。

健康・医学関連情報の注意喚起

本記事は、GTD(Getting Things Done)やタスク管理、生産性向上に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 過度なタスクによるプレッシャーやストレスが心身の不調を引き起こしていると感じる場合は、無理をせず休息を取ったり、タスクの優先順位を見直したりすることが重要です。必要であれば、信頼できる上司や同僚、あるいは専門家(カウンセラーや医師など)にご相談ください。特定の疾患などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。

GTDで迷わない!理学療法士が解説「行動選択6つのレベル」

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