「デスクワークで長時間座っていると足がしびれる」「立ち仕事の後、足に鈍い痛みが走る」 こんなお悩み、抱えていませんか?マッサージをしても、ストレッチをしても改善しないその不調、もしかしたら筋肉の凝りではなく「神経の硬さ」が原因かもしれません。
こんにちは、理学療法士のPTケイです。私自身、様々な体の不調と向き合ってきた経験から、心と体の健康に関する情報を発信しています。
私たちの体の中を網の目のように走っている神経は、本来自在に伸び縮みし、体の動きに合わせてスムーズに滑るようにできています。しかし、何らかの原因でこの神経の動きが悪くなると、しびれや痛みといった様々な不快な症状を引き起こすことがあるのです。
この記事では、理学療法士である私が、ご自身の足のしびれや痛みがどの神経に由来するものなのかをチェックする方法と、ご自宅で簡単にできる神経のセルフケア方法を、専門的な視点から分かりやすく解説します。長引く足の不調にお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
その不調、神経の「滑走性」の低下が原因かも?
「神経が硬くなる」と聞いても、あまりピンとこないかもしれませんね。これを専門的には「神経の滑走性(かっそうせい)が低下している」状態と呼びます。
用語解説:神経の滑走性(かっそうせい) 神経は、筋肉や骨、靭帯といった様々な組織の間を通り抜けるように走行しています。私たちが体を曲げたり伸ばしたりするとき、神経もその動きに合わせて、周囲の組織の間を数センチメートル滑るように動きます。このスムーズな動きを「滑走性」と呼びます。
しかし、長時間の同じ姿勢や、ケガ、手術などによって神経の通り道が圧迫されたり、周囲の組織と癒着(ゆちゃく)してしまったりすると、この滑走性が失われてしまいます。そうなると、体を動かすたびに神経が無理に引っ張られ、まるで古くなったゴムのように伸び縮みしにくくなってしまうのです。この状態が、しびれや痛みを引き起こす大きな原因となります。
あなたの症状はどれ?3つの神経セルフチェック&ケア
足のしびれや痛みに関わる代表的な神経は、主に3つあります。それぞれ支配している領域が異なるため、症状が出ている場所から、どの神経に問題があるのかをある程度推測することができます。
ここでは、「総腓骨神経」「脛骨神経」「腓腹神経」の3つについて、それぞれの役割とセルフケア方法をご紹介します。
1. すねの外側・足の甲のしびれ:総腓骨神経のケア
総腓骨神経(そうひこつしんけい)とは? 膝の裏から始まり、すねの外側を下降して足の甲に至る神経です。足首や足の指を上に反らす(背屈させる)筋肉を支配しており、この神経が障害されると、つま先が上がりにくくなる「下垂足(かすいそく)」という状態になることもあります。
用語解説:総腓骨神経(そうひこつしんけい) 坐骨神経から分かれる神経の一つ。膝の外側にある腓骨頭(ひこつとう)という骨のすぐ下を通るため、外部からの圧迫を受けやすいという特徴があります。足を組む癖がある方や、硬い床の上で横向きに寝ることが多い方は特に注意が必要です。
【セルフチェック&ストレッチ】 もし、すねの外側や足の甲、特に親指側にしびれや痛みを感じるなら、総腓骨神経の滑走性が低下している可能性があります。
- 椅子に浅く腰掛け、片方の足を伸ばします。
- かかとを床につけたまま、足首をゆっくりと底屈(つま先を伸ばす方向)させます。
- さらに、足の裏を内側に向けるように、ゆっくりとひねります(回外)。
- すねの外側から足の甲にかけて、心地よい伸びを感じるところで20〜30秒キープします。
ポイント:痛みを感じるほど強く伸ばすのは逆効果です。「イタ気持ちいい」と感じる範囲で、ゆっくりと呼吸をしながら行いましょう。特に、足の指をグッと握り込むようにすると、より神経の伸びを感じやすくなります。
2. 足の裏のしびれ・痛み:「足底筋膜炎」と間違われやすい脛骨神経のケア
脛骨神経(けいこつしんけい)とは? 膝の裏からふくらはぎの中央を通り、かかと(内くるぶしの後ろ)を通って足の裏全体に広がる神経です。足首を底屈させたり、足の指を曲げたりする筋肉を支配しています。
用語解説:脛骨神経(けいこつしんけい) 内くるぶしの後ろにある「足根管(そっこんかん)」というトンネルを通るため、この部分で圧迫されやすい神経です。症状が足の裏に出るため、「足底筋膜炎」と診断されるケースも少なくありませんが、原因が神経にある場合、アプローチ方法が異なります。
【セルフチェック&ストレッチ】 足の裏、特にかかとや土踏まずにしびれやピリピリとした痛みを感じる場合、脛骨神経の問題が考えられます。
- 椅子に浅く腰掛け、片方の足を伸ばします。
- かかとを床につけたまま、つま先をゆっくりと天井方向へ向けます(背屈)。
- さらに、足の裏を外側に向けるように、ゆっくりとひねります(回内)。
- ふくらはぎからアキレス腱、足の裏にかけて伸びを感じるところで20〜30秒キープします。
ポイント:このストレッチは、アキレス腱を伸ばす動きと似ていますが、「足の裏を外側に向ける」という動きを加えることで、脛骨神経をより効果的にストレッチできます。
3. ふくらはぎの外側・小指側のしびれ:腓腹神経のケア
腓腹神経(ひふくしんけい)とは? ふくらはぎの後ろ側をやや外めに下行し、外くるぶしの後ろを通って、足の外側(小指側)の感覚を支配する神経です。比較的皮膚に近いところを走っています。
用語解説:腓腹神経(ひふくしんけい) ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)のけいれんや、むくみによって圧迫されやすい神経です。また、過去の足首の捻挫などが原因で、神経周囲の組織が硬くなり、滑走性が低下することもあります。
【セルフチェック&ストレッチ】 ふくらはぎの外側から、足の甲の外側(小指側)にかけてしびれや感覚の鈍さを感じる場合は、腓腹神経のケアを試してみましょう。
- 椅子に浅く腰掛け、片方の足を伸ばします。
- つま先を天井方向へ向け(背屈)、脛骨神経のストレッチと同じ体勢をとります。
- そこから、足の裏を内側に向けるように、ゆっくりとひねります(回外)。
- ふくらはぎの外側から足の外側にかけて伸びを感じるところで20〜30秒キープします。
ポイント:脛骨神経のストレッチとの違いは、最後の「ひねる方向」です。症状が出ている場所に合わせて、ひねる方向を変えることで、的確に神経へアプローチすることができます。
すべての元凶?腰から始まる「坐骨神経」とのつながり
ここまで3つの神経を紹介してきましたが、実はこれらはすべて、腰から始まる一本の太い神経「坐骨神経(ざこつしんけい)」から枝分かれしたものです。
用語解説:坐骨神経(ざこつしんけい) 人体で最も太く、長い末梢神経。お尻の筋肉(梨状筋)の下を通り、太ももの裏側で総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。
つまり、足のしびれや痛みの根本的な原因が、お尻や腰の部分での坐骨神経の圧迫にあるケースも非常に多いのです。理学療法の評価ではSLR(下肢伸展挙上テスト)という方法で、坐骨神経全体の滑走性をチェックします。
もし、これまで紹介した3つのセルフケアを試しても症状が改善しない場合は、坐骨神経そのものにアプローチする必要があるかもしれません。お尻の筋肉のストレッチや、腰に負担のかからない姿勢を意識することが重要になります。
今すぐできる!しびれ・痛みを予防する3つの新習慣
神経の滑走性を保ち、不快な症状を予防・改善するためには、日々の生活習慣を見直すことが何よりも大切です。今日から始められる3つの習慣をご紹介します。
- 30分に一度は立ち上がる: 長時間同じ姿勢でいることは、神経にとって最大の敵です。デスクワーク中も、30分〜1時間に一度は立ち上がり、軽く足踏みをしたり、アキレス腱を伸ばしたりするだけでも効果があります。
- 足を組む癖をやめる: 足を組む姿勢は、骨盤を歪ませるだけでなく、お尻の筋肉で坐骨神経を、膝の外側で総腓骨神経を圧迫する原因になります。意識して足を組まないようにしましょう。
- セルフケアを習慣にする: お風呂上がりなど、体が温まっている時間帯に、今日ご紹介した神経のストレッチを取り入れてみてください。毎日続けることで、神経の柔軟性が保たれ、症状の出にくい体を作ることができます。
まとめ
今回は、足のしびれや痛みの原因となりうる「神経の滑走性の低下」について、そしてご自身でできる3つの神経のセルフチェック&ケア方法について解説しました。
- すねの外側・足の甲のしびれは総腓骨神経
- 足の裏のしびれ・痛みは脛骨神経
- ふくらはぎの外側・小指側のしびれは腓腹神経
これらの症状に心当たりがある方は、ぜひ今日からセルフケアを試してみてください。そして、これらの神経はすべて「坐骨神経」につながっていることも忘れないでください。
長引く痛みやしびれは、日常生活の質を大きく下げてしまいます。この記事が、あなたの不調の原因を見つけ、改善へ向かうための一助となれば幸いです。
参考文献
この記事は、一般的な解剖学および運動学の知識に基づいて作成されています。より専門的な情報については、以下の書籍などを参照してください。
- プロメテウス解剖学アトラス
- 筋骨格系のキネシオロジー
健康・医学関連情報の注意喚起
本記事は、[足のしびれや痛み]に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 [下肢の神経症状]などの診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。症状が改善しない場合や、悪化する場合には、速やかに整形外科などの専門医を受診してください。
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