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股関節シリーズ6:変形性股関節症の評価・治療・考察のまとめ

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目次

はじめに

新人A

変形性股関節症ってあんまり担当したことがないですが、特別配慮することって何かありますか?

澁澤

では、変形性股関節症の評価と治療方法を確認して、実際配慮するかを一緒に考えていきましょうか!

変形性股関節症の評価について

変形性股関節症を評価するための評価方法があります。

JOA Hip score

  • 日本でもっとも普及している。
  • 疼痛、可動域、歩行能力、ADL動作の4項目を評価し合計100点になります。

Harris Hip Score

  • 世界的に普及している。
  • 疼痛、機能、変形、可動域の四項目を評価し合計100点になります。

その他

  • AAOS Hip and knee scoreCharnley scoreが運動器の認定理学療法士試験の資料には記載されています。

変形性股関節症の評価方法の共通点

上記の評価に共通している重要な点として

疼痛を最重視している

可動域や関節機能、ADLに関する項目が含まれているものがほとんど

要するに変形性股関節症のリハビリでは疼痛やROM、関節機能、ADL動作分析の評価はよく見ておくべきです。

変形性股関節症の健康関連QOL(HRQOL)の評価

HRQOLの評価は、包括的評価疾患特異的評価の2つに大きく分けられます。

包括的評価は疾患に関係なく比較が可能である。

疾患特異的評価は、ある特定の疾患を対象として、それに応じた評価内容になっているものです。

HRQOLの包括的評価:SF-36

特徴

  • HRQOLの評価として、最も普及している。
  • 8つの下位尺度が存在する。
  • それぞれ、単独で使用可能である。

8つの概念(下位項目)

  1. 身体機能
  2. 日常役割機能(身体)
  3. 体の痛み
  4. 全体的健康感
  5. 活力
  6. 社会生活機能
  7. 日常役割機能(精神)
  8. 心の健康

HRQOLの疾患特異的評価:WOMAC

特徴

変形性股関節症だけでなく変形性膝関節症でも用いることができます。ここでは紹介程度です。

変形性股関節症患者様に対する問診・身体所見の要点

問診の要点

  • 疼痛については詳しく聞く(痛みの期間、強さ、場所、質、疼痛歴など)
  • 次に変形性股関節症になるリスク因子(肥満、スポーツ、職業)の情報収集です。

日本では特には重量物運搬系がリスクになりやすいようです。それ以外は、海外の知見を参照しており、日本人でのエビデンスは不十分のようです。海外では、アスリートレベルのスポーツは、レクリエーションレベルのスポーツよりも一次性変形性股関節症のリスクが高いことがわかっています。

  • 既往歴(特に臼蓋形成不全の有無など)を確認(カルテなどからの情報収集と合わせて)
  • 遺伝的影響の有無

遺伝的な影響としては、親の骨盤形状に似る場合があるようですが、聴取しにくい情報なので、患者様が情報を持っていれば遺伝的な要素も聞き出せる可能性があります。これらの情報は、もともと変形性股関節症になりやすいかどうかに影響してくるため、なぜ変形性股関節症が発症したのかを考察するうえで重要になると思います。

二次的変形性股関節症の治療

保存療法と手術療法の見極めについては画像所見をよく見ることが重要になるということは以前のブログに記載してありますのでご参照ください。

 今回は、手術適応になった患者様の進行時期によって用いる手術の種類についてです。

手術適応として判断された場合

前・初期

手術説明
臼蓋形成術骨盤の骨(腸骨など)を切り取り、臼蓋に移植する方法です。
大腿骨内反骨切り術大腿骨転子部の内側を楔状に切り取ることで大腿骨を内反します。
寛骨臼回転骨切り術(RAO)寛骨臼自体を切り取り、切り取った部分をずらし、寛骨臼の面積を増やすような手術です。
Chiari骨盤骨切り術骨盤自体を切り、臼蓋を奥へ押し込んだ方向へずらします。
変形性股関節症の前期・初期の手術療法

進行期

手術説明
寛骨臼回転骨切り術(RAO)寛骨臼自体を切り取り、切り取った部分をずらし、寛骨臼の面積を増やすような手術です。
Chiari骨盤骨切り 骨盤自体を切り、臼蓋を奥へ押し込んだ方向へずらします。
大腿骨外反骨切り術  大腿骨転子部の外側を楔状に切り取り、大腿骨を外反します。内反骨切り術と同様に、関節の圧迫される場所を変えることができます。
鏡視下デブリドマン関節内を洗浄しきれいにします。
変形性股関節症の進行期の手術療法

末期

手術説明
鏡視下デブリドマン関節内を洗浄しきれいにします。
THA人工関節へ置換します。
関節固定術若年男性の変形性股関節症の場合が適応です。
変形性股関節症の末期の手術療法

変形性股関節症患者様の実際

具体的にリハビリ開始となる事例を2つあげます。私の経験をもとにしているので回復期病院に来る方がメインです。

疼痛とともに長く生活→疼痛増悪→受診→保存療法で通院リハビリ開始となるパターン

対応

  • 画像所見と疼痛の経過を見極め、手術の適応になるかどうかもみつつ、Dr.と話し合いながら進めていく。
  • 疼痛の原因について動作分析やアライメント等の評価を行い、治療を進めていく流れになります。
  • 基本的に手術しない方向で来ているので、疼痛改善・セルフエクササイズ等指導し外来リハ終了を目指します。

術後急性期病院から回復期病院へ転院してきて入院リハビリ開始となるパタ-ン

対応

  • 変形性股関節症のリハビリは退院可能レベルになるまでそれほど時間を要さないことが多いため早期退院を視野に入れておく。
  • セルフケアの獲得~自主練習指導を優先的に進め、疼痛軽減・予防しつつ、動作指導、生活指導と進めていく。
  • 疼痛のあった期間が長い場合は、跛行が定着しているため、動作パターンについても見つつすすめる

なんとなくリハビリをしないように、Dr.がなぜこの手術を選択したのか?という視点もリハビリの考察に影響してくることがあるので、そういった情報をしっかりキャッチしていけるようになれるとよいと思います。

まとめ

本日は変形性股関節症の評価~治療・リハビリについて、学んだ内容を整理し考察しました。私自身まだまだ経験数が少ないですが、こういった知識を活かして、実際に担当する場合や、他のスタッフが担当した際に、一緒に考えていけるよう準備していきたいと思っています。

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