2025年1月23日~ブログを一時的に閉鎖、5月18日より順次記事を更新していきます。ご迷惑をおかけしておりますがよろしくお願いしたします。

フレイルに立ち向かう!運動が心と体にもたらす多面的な効果【最新レビュー】

フレイルに立ち向かう 運動が心と体にもたらす多面的な効果
  • URLをコピーしました!

「もう年だから仕方ない…」体の衰えや物忘れを感じると、ついそんな風に考えてしまいがちではありませんか? でも、ちょっと待ってください!近年、「フレイル」という言葉を耳にする機会が増えましたが、これは単なる老化現象ではなく、早めに対策すれば進行を遅らせたり、改善したりできる可能性がある状態なんです。そして、その鍵を握るのが「運動」です。

こんにちは、理学療法士のPTケイです。今回は、なぜ運動がフレイル対策に不可欠なのか、そしてどんな運動戦略が効果的なのかについて、スペインの研究者たちがまとめた包括的なレビュー論文(多数の研究を集めて分析した信頼性の高い論文)の内容を、皆さんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

この記事を読めば、「年のせい」と諦める前にできることがある、と前向きな気持ちになれるはずですよ。

研究紹介:フレイルと運動に関する最新の知見

まずは、今回参考にした論文の概要です。

2020年にスペインの研究者ハビエル・アングロらは、フレイルを管理するための戦略としての身体活動と運動に関するレビュー論文を発表しました。この論文では、身体活動や運動が、フレイルに関わる様々な体のメカニズムに良い影響を与え、高齢者の元気な生活を支えるために非常に重要であること、そして一人ひとりに合わせた運動計画が必要であることを強調しています。

このレビュー論文は、フレイルと運動に関する多くの研究結果をまとめ、私たちに重要な視点を与えてくれます。

フレイルって何? なぜ運動がこれほど大切なの?

まず、「フレイル」とは一体何でしょうか?

このレビュー論文では、フレイルを

「加齢や慢性的な病気の影響で、心と体の予備能力(ストレスに耐えたり回復したりする力)が低下し、ちょっとしたことで体調を崩したり、転倒や入院、介護が必要な状態になったりするリスクが高まった状態」

と説明しています。筋肉が衰える「サルコペニア」と関連は深いですが、フレイルはもっと広い意味での「虚弱」を指します。

では、なぜフレイルになってしまうのでしょうか?

その背景には、目に見えない体の内部での変化が関わっています。

具体的には、

  • 酸化ストレスの増加: 体の細胞がサビついてしまうような状態。
  • 慢性的な軽い炎症: 体の中で常に小さな炎症がくすぶっている状態。
  • ミトコンドリアの機能低下: 細胞のエネルギー工場(ミトコンドリア)の働きが悪くなること。
  • ホルモンバランスの変化: 体の調子を整えるホルモンの分泌が変化すること。

これらの変化が、筋肉、心臓、血管、肺、脳など、様々な臓器やシステムの機能低下を引き起こし、結果としてフレイルという状態につながっていくのです。

ここで、運動の出番です!

運動は、単に筋肉を鍛えるだけでなく、フレイルの根本的な原因にアプローチできる強力な手段なのです。

このレビュー論文では、運動がもたらす素晴らしい効果として、以下のような点を挙げています。

  • 抗酸化&抗炎症作用: 運動は体のサビつき(酸化ストレス)を防ぎ、体内の慢性的な炎症を抑える働きがあります。
  • オートファジーの促進: 細胞の中をきれいに掃除する「オートファジー」という仕組みを活発にし、細胞を若々しく保ちます。
  • ミトコンドリア機能の改善: 細胞のエネルギー工場の働きを高め、細胞レベルから元気にします。
  • 良い筋肉ホルモン(マイオカイン)の分泌促進: 運動によって筋肉から分泌される「マイオカイン」は、全身の健康維持に役立ちます。
  • 筋肉の成長促進&インスリン感受性の改善: 筋肉が作られやすい状態にし、血糖値のコントロールにも良い影響を与えます。

つまり、運動はフレイルを引き起こす様々な「体の内部変化」に直接働きかけ、体を内側から若々しく保つ効果が期待できるのです。

これは、運動がフレイル対策の中核であると言われる大きな理由であり、単に筋力をつける以上の深い意味があることを示しています。

  • 用語解説:
    • 酸化ストレス: 体内で発生した活性酸素が、それを打ち消す抗酸化力を上回り、細胞がダメージを受けてしまう状態。老化や様々な病気の原因になると言われています。
    • ミトコンドリア: 細胞の中にある小器官で、私たちが生きていくためのエネルギーを作り出す重要な役割を担っています。
    • オートファジー: 細胞が自分自身の一部を分解し、リサイクルする仕組み。細胞内の老廃物を除去し、細胞を健康に保つために重要です。
    • マイオカイン: 筋肉が運動することによって分泌される様々な生理活性物質の総称。筋肉だけでなく、脳や脂肪組織、血管など全身に良い影響を与えることが分かってきています。

フレイルに立ち向かう運動戦略:効果的なアプローチとは?

では、フレイル対策として具体的にどのような運動をすれば良いのでしょうか?

このレビュー論文は、いくつかの重要な原則を提示しています。

1. 「多成分運動」で全身をバランス良く鍛える!

特定の運動だけを行うのではなく、様々な種類の運動を組み合わせる「多成分運動」が非常に重要だと強調されています。

なぜなら、フレイルは体の様々な機能が低下する状態だからです。

推奨される運動の要素は以下の通りです。

  • レジスタンス運動(筋トレ): 筋力やパワー(瞬発力)を高めます。筋肉量の維持・増加に不可欠。
  • 有酸素運動: 心肺機能(持久力)を高めます。ウォーキング、軽いジョギング、水泳など。
  • バランス運動: 転倒予防に直結します。片足立ち、つま先立ち、不安定な場所での立位保持など。
  • 柔軟性運動(ストレッチ): 関節の動く範囲を広げ、動きをしなやかにします。

これらの運動をバランス良く組み合わせることで、フレイルによって低下しやすい様々な身体機能に総合的にアプローチすることができます。

  • 用語解説:
    • 多成分運動: 上記のように、筋トレ、有酸素運動、バランス運動、柔軟性運動など、複数の要素を組み合わせて行う運動プログラムのこと。

2. あなたに合った運動を!「個別化」と「漸進性」が鍵

運動の効果を最大限に引き出し、安全に行うためには、一人ひとりの体力レベルや体の状態に合わせて運動内容や強度を調整する「個別化」が不可欠です。

レビュー論文では、SPPB(Short Physical Performance Battery)などの客観的な体力評価を用いて、その人の状態に合った運動プログラムを処方することの重要性を示唆しています。

  • 用語解説:
    • SPPB (Short Physical Performance Battery): 高齢者の下肢機能(バランス、歩行速度、椅子立ち上がり)を総合的に評価するテスト。フレイルの評価や運動効果の判定によく用いられます。

また、始めたらずっと同じ運動をするのではなく、体力向上に合わせて少しずつ運動の負荷(強度、時間、頻度など)を上げていく「漸進性」も重要な原則です。

これにより、体は常に新しい刺激を受け、効果的に機能を向上させることができます。

3. 体の状態に合わせた運動選びを

元気で体力に余裕のある方(ロバスト)、少し弱ってきたと感じる方(プレフレイル)、すでにフレイルと診断された方、あるいは病気で入院中の方では、推奨される運動の種類や重点の置き方が異なります。

例えば、比較的元気な方は筋力や持久力をしっかり維持・向上させる運動が中心になるかもしれません。

一方、フレイルが進んでいる方や入院中の方は、まず安全にできる範囲での筋力維持やバランス練習、離床を促す運動などが優先されるでしょう。

このように、現在の体の状態に合わせて運動内容を調整することが大切です。

運動を楽しく続けて、効果を実感するために

どんなに良い運動も、続けられなければ意味がありません。

このレビュー論文でも、運動プログラムの成功にはアドヒアランス(継続性)が不可欠であると指摘されています。

運動を続けるための工夫としては、

  • 具体的な目標を設定する(例:週に3回歩く、テレビを見ながら10分体操するなど)
  • 家族や友人と一緒に運動する
  • 楽しいと感じる運動を選ぶ(例:好きな音楽に合わせて体操する、ダンスするなど)
  • 運動記録をつける などが考えられます。

また、安全への配慮も忘れてはいけません。

特に高齢者の場合、無理な運動は怪我につながる可能性があります。

  • 運動前後に準備運動やストレッチをしっかり行う。
  • 体調が悪い日は無理せず休む。
  • 転倒などに注意し、安全な環境で行う。
  • 持病がある方や体力に自信がない方は、運動を始める前に必ず医師や理学療法士に相談する。

これらを心がけ、安全に楽しく運動を続けられるようにしましょう。

レビュー論文から見えること:強みと限界

今回ご紹介したレビュー論文は、フレイルのメカニズムから運動の効果、具体的な運動戦略まで、非常に幅広い情報を網羅的にまとめている点が大きな強みです。

これにより、フレイルに対する運動の重要性とその多面的な役割を深く理解することができます。

また、臨床現場で応用可能な、エビデンスに基づいた運動介入の考え方を示している点も重要です。

一方で、これはレビュー論文であるため、特定の運動プログラムの有効性を直接証明するものではありません

まとめられている個々の研究の質にはばらつきがある可能性もあります。

また、どのような運動をどれくらい行うのが「最適」かについては、まだ研究が進められている段階である部分も多い、という限界も理解しておく必要があります。

まとめ

今回のレビュー論文からわかる重要なメッセージをまとめましょう。

  • 運動はフレイル予防・管理の中核!:運動は単に体力をつけるだけでなく、フレイルの背景にある酸化ストレス、炎症、ミトコンドリア機能低下といった様々な体の内部の問題にアプローチできる強力な手段です。
  • 「多成分」かつ「個別化」された運動を: 筋トレ、有酸素運動、バランス運動などをバランス良く組み合わせ、自分の体力レベルや状態に合った運動を行うことが効果的です。
  • 早めのスタートが肝心: フレイルが進行する前、できれば少し弱り始めたプレフレイルの段階から運動を始めることで、より大きな効果が期待できます。

「もう年だから…」と諦めてしまう前に、できることはたくさんあります。

運動を通して、体の内側から健康を取り戻し、いつまでも自分らしく活動的な生活を送ることを目指しませんか?

まずはかかりつけ医や地域の専門家(理学療法士など)に相談し、今のあなたにできること、合った運動から始めてみましょう。

今日から始める小さな一歩が、未来の大きな健康につながるはずです。


参考文献

Angulo J, El Assar M, Álvarez-Bustos A, Rodríguez-Mañas L. Physical activity and exercise: Strategies to manage frailty. Redox Biol. 2020;35:101513. doi:10.1016/j.redox.2020.101513  

健康・医学関連情報の注意喚起:  

本記事は、フレイルと運動に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 フレイルやその他の疾患の診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。

フレイルに立ち向かう 運動が心と体にもたらす多面的な効果

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次