Aさんはぁ…。
最近、ベッドに入ってもなかなか寝付けないし、夜中に何度も目が覚めちゃうんだよなぁ。



わかります!
私も仕事柄、生活が不規則で…。
寝たはずなのに朝からぐったり疲れが残っていて、本当に辛いですよね。



お二人のその悩み、とてもよくわかります。
かつての私も、不眠に苦しんでいましたから。
実はその『寝ても取れない疲れ』の原因、普段何気なく口にしている『食事』にあるかもしれませんよ。



え、食事が原因なんですか!?



あんまり気にしていなかったので気になります。



はい。何を、いつ食べるかによって、私たちの睡眠の質は大きく変わる可能性があるんです。
でも、大丈夫。
正しい知識を身につければ、食事はあなたの睡眠を改善する最強の味方になります。
この記事を読めば、あなたのその悩みの原因と、明日からできる具体的な対策がわかります。一緒に、ぐっすり眠れる毎日を取り戻しましょう。
1分でわかる要約 (1-Minute Summary)


この記事の要点まとめ
- 😴 夕食の脂質は控えめに、食物繊維を多く摂ることで、深い睡眠が増え、夜中に目が覚めるリスクを減らせます。
- ⏰ 最高の睡眠を得るための鉄則は、食事を「就寝の3時間前」までに終えること。これにより、寝ている間に脳と体をしっかり休ませることができます。
- 🥝 「寝る前のキウイ2個」やホットミルクなど、特定の食品には睡眠の質を高める効果が科学的に期待されており、手軽に試せる改善策として有効です。
- ✅ つまり、「何を」「いつ」食べるかを少し意識するだけで、あなたの睡眠の悩みは解決に向かうかもしれません。
研究紹介 (Research Introduction)
この記事の根拠となっているのは、2016年にアメリカのコロンビア大学人間栄養研究所の研究者らが発表した研究です。
この研究では、過去の多くの臨床研究を精査し、食事の内容や特定の食品が睡眠の質にどのような影響を与えるかが示唆されています。
今回は、この興味深い研究を紐解いていきましょう。
食事の「三大栄養素」が睡眠の構造を変える


私たちが毎日摂っている「炭水化物」「脂質」「タンパク質」。
これらのバランスが、実は睡眠の質、特に睡眠の「構造」に深く関わっていることが分かってきました。
睡眠の構造とは、簡単に言えば、深い眠りと浅い眠りのリズムのことです。
炭水化物(ごはん・パン)は「寝つき」を良くするが「深い睡眠」を減らす?
研究によると、炭水化物を多く含む食事は、入眠潜時(※にゅうみんせんじ:ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間)を短くする、つまり寝つきを良くする傾向があることが報告されています。
特に、食後の血糖値を急激に上げる高GI(※グリセミック指数:食後の血糖値の上昇度を示す指標)の食品(白米やパン、麺類など)を就寝の4時間ほど前に摂ると、その効果が顕著だったそうです。
これは、炭水化物を摂ることでインスリンが分泌され、睡眠を促す脳内物質「セロトニン」の原料となるトリプトファン(※必須アミノ酸の一種)が脳に取り込まれやすくなるためと考えられています。
しかし、良いことばかりではありません。
炭水化物の多い食事は、最も深い眠りである徐波睡眠(※じょはすいみん:SWSとも呼ばれ、脳と体の回復に不可欠な最も深い睡眠段階)を減少させ、夢を見ることが多いレム睡眠(※急速な眼球運動を伴う浅い睡眠で、記憶の整理などに関わる)を増加させる可能性も示唆されています。
つまり、「寝つきは良いけれど、眠りが浅くなる」可能性があるのです。



これは、私自身も痛いほど経験があります。
仕事のストレスで夕食にラーメンを大盛りで食べて、ストレス解消していたことがありました。
でも、翌朝は決まって体が重くだるく、頭にモヤがかかったような感覚でした。
あれは、深い睡眠が取れていなかったサインだったのかもしれませんね。
脂質(あぶら・肉)の摂りすぎは「中途覚醒」の原因に
次に脂質です。
論文では、脂質、特に動物性脂肪に多い飽和脂肪酸の摂取量が多いと、深い睡眠である徐波睡眠が減少すると報告されています。
さらに、夜間の脂肪摂取量が多いと、睡眠効率(※すいみんこうりつ:ベッドにいた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合)が低下し、夜中に目が覚める中途覚醒が増える可能性も指摘されています。
つまり、夕食に揚げ物や脂身の多いお肉などをたくさん食べると、深い眠りが妨げられ、夜中に何度も目が覚めやすくなるかもしれない、ということです。



今日は疲れたから、スタミナをつけるためにカツ丼をがっつり食べよう!」…そんな日、ありますよね。
私も理学療法士として働いていた頃は、体力勝負だったのでよくやっていました。
でも、そういう日の夜に限って、胃もたれのような不快感で夜中に目が覚めてしまうことが多かったんです。
「歳のせいかな?」なんて思っていましたが、これも食事の脂質が影響していたんですね。
食物繊維は「深い睡眠」の救世主
では、何を積極的に摂れば良いのでしょうか。
その答えの一つが食物繊維です。
研究レビューでは、食物繊維の摂取量が多いほど、深い睡眠である徐波睡眠が増加し、浅い睡眠(ステージ1)が減少したという興味深い結果が示されています。
食物繊維が豊富な野菜やきのこ、海藻、全粒穀物などをしっかり摂ることが、ぐっすり深い眠りのための土台を作ってくれると言えるでしょう。



ただ一人で料理してと負担が大きくて難しい方も多いと思います。そういった方でも、コンビニやスーパーで買物をする際に、インスタントでも、きのこ入りの味噌汁や海藻サラダなどの食物繊維が含まれているものを選ぶようにして工夫すると、やりやすいと思います。
最高の睡眠は「食べるタイミング」で決まる


何を食べるかと同じくらい重要なのが、「いつ食べるか」です。
多くの研究で、就寝時刻に近い時間の食事は睡眠の質に悪影響を及ぼすことが示されています。特に、消化に時間がかかる脂肪分の多い食事は、内臓が休まらず、眠りを妨げる大きな原因になります。
先ほど触れた「高GIの炭水化物は寝つきを良くする」という研究でも、最も効果的だったのは就寝1時間前ではなく、4時間前の摂取でした。これは、食事によって脳内で睡眠を促す物質が作られるまでに、ある程度の時間が必要であることを示唆しています。
理想的には、就寝の3時間前までには夕食を終えるのが望ましいと言えるでしょう。



私も病院勤務時代は、残業が多く食事の時間がバラバラでした。
残業が終わって、ヘトヘトで明け方に帰宅。
何かお腹に入れてからでないと眠れなくて、そのままベッドへ…という生活でした。
当然、熟睡感なんてありませんでしたね。
生活リズムを整える第一歩として、できるだけ食事の時間を固定し、寝る直前は避ける。
これだけでも、睡眠の質は大きく変わるはずです。
試す価値あり?睡眠をサポートするスーパーフードたち


栄養バランスやタイミングに加え、特定の食品が睡眠を助ける「スーパーフード」になる可能性も研究されています。
牛乳・乳製品
「寝る前にホットミルクを飲むとよく眠れる」という話は、昔からよく言われますよね。
これには科学的な根拠があります。
牛乳には、先ほども出てきたセロトニンの原料であるトリプトファンが豊富に含まれています。
さらに、夜間に搾乳された牛乳には、睡眠リズムを整えるホルモンであるメラトニンがより多く含まれているという研究もあります。
脂肪の多い魚(サーモンなど)
サーモンやサバ、イワシなどの脂肪の多い魚は、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の優れた供給源です。
これらの栄養素は、どちらも脳内のセロトニン調節に関与しており、睡眠の質を高める上で重要だと考えられています。
ある研究では、週に3回サーモンを食べたグループは、肉を食べたグループに比べて睡眠の質に改善が見られたと報告されています。
タルトチェリーとキウイフルーツ
あまり聞き慣れないかもしれませんが、タルトチェリーは天然のメラトニンを豊富に含む果物として注目されています。
タルトチェリージュースを飲むことで、不眠症の人の夜間覚醒が減少し、睡眠時間が長くなったという研究結果があります。
また、キウイフルーツも強力な助っ人です。
ある研究では、睡眠に悩む人が4週間、毎晩就寝1時間前にキウイフルーツを2個食べたところ、寝つきが良くなり、睡眠時間が延び、睡眠効率も向上したと報告されています。
これは、キウイフルーツに含まれるセロトニンや、高い抗酸化作用が関係していると考えられています。



「寝る前にキウイ2個」は、手軽に始められますが、キウイ1つの値段も高いので私は1個で、実践しています!
デザートとして楽しみながら睡眠の質が上がるなら、一石二鳥ですよね。
タルトチェリーは日本では少し手に入りにくいかもしれませんが、キウイやホットミルクなら、今日からでも試せるのではないでしょうか。
大切なのは、自分に合った方法を楽しみながら見つけることだと思います。
【PTケイのQ&A】
まとめ (Conclusion)
今回は、食事が睡眠の質に与える影響について、科学的な視点から解説しました。
- 炭水化物や脂質のバランス、食物繊維の摂取が、睡眠の深さやリズムを左右する。
- 就寝3時間前には食事を終えるなど、「食べるタイミング」を意識することが大切。
- 牛乳や魚、キウイフルーツなど、睡眠をサポートしてくれる食品を試してみる価値はある。
睡眠の悩みは本当につらく、孤独を感じやすいものです。
一度にすべてを完璧にこなす必要はありません。
「今日の夕食は、揚げ物より焼き魚にしてみようかな」
「寝る前にスマホを見る代わりに、キウイを一つ食べてみようかな」
そんな、ほんの小さな一歩でいいんです。
その小さな変化の積み重ねが、必ずあなたの心と体を、健やかで安らかな眠りへと導いてくれるはずです。
あなたなら、きっと大丈夫。
参考文献 (References)
- St-Onge MP, Mikic A, Pietrolungo CE. Effects of Diet on Sleep Quality. Adv Nutr. 2016;7(5):938-949. Published 2016 Sep 1. doi:10.3945/an.116.012336
注意喚起 (Disclaimer)
本記事は、食事と睡眠に関する情報提供を目的としており、医学的アドバイスを提供するものではありません。不眠症などの症状の診断や治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。


