ご家族の訪問リハビリ、病院にお願いすべきか、クリニックにすべきか、それとも老健との違いって何だろう…なんて、一人で頭を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
正直、このあたりの制度は現場にいる私たちでもややこしいと感じる部分がありますので、分からなくて当然ですよね(笑)。
この記事を読んでいただければ、クリニックが行う訪問リハビリの特徴や利用条件、算定の仕組みがすっきり理解できて、ご家族の状況に合った依頼先をご自身で判断できるようになりますよ。
現役の理学療法士である私が、臨床現場での経験と公的な算定基準の両方から、具体的な判断基準をお伝えしていきますね。
訪問リハビリは病院だけでなくクリニックからも受けられる

「訪問リハビリって、大きな病院じゃないと受けられないのでは?」と思われがちですが、実はそうではありません。
厚生労働省の基準では、訪問リハビリテーション事業所を開設・実施できる主体として、病院・診療所(クリニック)・介護老人保健施設・介護医療院が定められています[1]。つまり、近所のかかりつけクリニックからでも、条件が整えば訪問リハビリを受けられるということです。
また、病院やクリニックが保険医療機関である場合、介護保険法の仕組みにより「みなし指定」という形で介護保険の指定事業所として扱われます[1]。この仕組みがあるからこそ、そこに所属するPT・OT・ST(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が、医師の計画的な指示のもとご自宅へ訪問してリハビリを提供できるわけですね。
「どこの機関から来てくれるサービスなのか」を知っておくだけでも、選択肢の幅がぐっと広がると思います。
病院とクリニックの訪問リハビリは体制と単位数が異なる
「病院とクリニック、どっちを選べばいいの?」と迷うご家族も多いはず。結論から言うと、単位数(費用の基準)はほぼ同じですが、体制には違いがあります。
病院は多数のリハビリ専門職が在籍し、退院直後の専門的アプローチやチーム連携が強みになりやすい傾向があります。一方クリニックは、かかりつけ医が診療とリハビリ指示を一体的に行い、地域生活を身近で支えやすいのが特徴です。
介護保険の訪問リハビリテーション費は、病院・クリニックともに1回20分につき308単位という同一基準です。令和6年度の介護報酬改定で、それまでの307単位から308単位へ引き上げられました[2]。1単位はおおよそ10円で計算されるため、1割負担なら1回20分あたり約308円が目安になります(地域区分により実際の単価には10円〜11.40円程度の幅があります)。
有料老人ホーム入居者もクリニックの訪問リハビリを利用できる

有料老人ホームでも、施設の種別によって訪問リハビリの扱いは異なります。
「住宅型有料老人ホーム」は法律上「居宅」扱いのため、ケアマネジャーがケアプランに位置づけ、外部の指定訪問リハビリ事業所を利用する形で介護保険による算定が可能です[1]。
一方、「介護付き有料老人ホーム」(特定施設入居者生活介護)では、原則として介護保険から訪問リハビリテーション費を算定できません[1]。ただし施設側が必要と判断し、施設事業者の費用負担であれば利用自体は可能とされています[1]。つまり保険給付ではなく施設負担での利用となります。ご家族はまず入居先の施設種別と契約内容を確認するのが確実です。
在宅患者訪問リハビリ指導料には算定条件がある
クリニックからの訪問リハビリは、医療保険の「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」に基づき提供され、誰でも自由に使えるわけではなく細かな条件があります[3]。
(家族の立場だと意外と知らないまま利用が始まっていることもあるかもしれません)
大前提として、保険医療機関の医師が定期的に診察し、計画的な医学管理を続けていることが算定の絶対条件です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訓練も、医師の指示のもとで実施されます。
対象は在宅療養中で通院が困難な患者さんに限られ、自力で通院できる場合は対象外です。
算定回数は原則週6単位(1単位20分)までですが、退院後3ヶ月以内や急性増悪時は例外的に週12単位まで認められることもあります[3]。
なお要介護認定を受けている方は、原則として介護保険のリハビリが優先される点も知っておくとスムーズです[3]。
クリニックを選ぶ際にチェックすべき5つのポイント

クリニックからの訪問リハビリを検討するときは、いくつか事前に確認しておきたいポイントがあります。安心して長く続けていただくためにも、契約前にチェックしてみてくださいね。
リハビリ専門職の配置人数と経験を確認
少人数体制のクリニックもあるため、「担当者が急な休みの際にどう対応してくれるのか」「どのような疾患の経験が豊富なスタッフがいるのか」は事前に聞いておいて損はないですね。
主治医との情報共有体制をチェック
訪問リハビリは医師による定期的な診察が大前提。リハビリの様子が主治医にきちんと伝わる体制かどうかは重要なポイントです。「報告の頻度」「体調変化時にすぐ相談できるか」を確認しておくと安心ですね。
緊急時の往診・入院対応の有無を確認
在宅生活では急な体調悪化がつきもの。「往診の対応があるか」「連携病院への入院対応がスムーズか」は、いざという時のために必ず確認しておきたいところですね。
老健の訪問リハビリとクリニックは保険制度が違う
老健とクリニックは、どちらも訪問リハビリを提供しますが、使える保険制度が根本的に異なります。
老健(介護老人保健施設)は介護保険法に基づく施設のため、提供できるのは介護保険のみです[1]。一方、クリニックは医療機関なので、医療保険(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)と介護保険の両方を提供できます[1][3]。
ただし要介護・要支援認定がある場合は「介護保険優先の原則」があり、クリニックでも原則介護保険が適用されます[3]。
なお、訪問看護ステーションから理学療法士などが訪問するサービスは、名称は似ていますが介護保険上は「訪問リハビリテーション」ではなく訪問看護として算定される別サービスです[4]。介護保険の訪問リハビリテーションを提供できるのは、病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院に限られます[1]。
まとめ:クリニックの訪問リハビリは条件を確認して選ぶ

ここまで、クリニックからの訪問リハビリについてお伝えしてきましたが、ポイントを整理しておきますね。
- 医療保険での提供となり、自力での通院が困難な方が対象
- 医師による定期的な直接診察が算定の絶対条件
- 算定回数は原則週6単位まで(急性増悪等の例外時は週12単位まで)[3]
- 要介護認定を受けている場合は、原則として介護保険の訪問リハビリが優先される[1][3]
「うちの場合はどの制度が使えるのか」は、疾患の状態や要介護認定の有無によって変わってくるところですね。
判断に迷ったときは、自己判断せずにケアマネジャーや主治医に確認してみることをおすすめします。
私自身、回復期リハビリ病院で退院支援に関わっていた頃、在宅酸素療法を使っていて移動そのものが負担になる方に、自宅の機器につないだままリハビリができる訪問リハビリをお勧めしたことがあります。制度は少し複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ条件を確認していけば、きっとご本人に合った選択肢が見えてくるはずですよ。
引用文献
- [1] 兵庫県. 訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーションの手引き. https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf27/documents/houmonriha.pdf. 発行年不明. 2026年09月02日アクセス.
- [2] 日本リハビリテーション医学会社会保険委員会. 令和6年度リハビリテーション医療に関する社会保険診療報酬改定について―リハビリテーション医療に関連する介護報酬改定について―. Jpn J Rehabil Med. 2024;61(8):767-775. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/61/8/61_61.767/_pdf/-char/ja. 2026年09月02日アクセス.
- [3] 兵庫県保険医協会. 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料に関するQ&A. https://www.hhk.jp/member/hoken-seikyu-qa/ika/180225-070000.php. 発行年不明. 2026年09月02日アクセス.
- [4] 厚生労働省. 介護報酬の算定構造(令和8年6月改定箇所). https://www.mhlw.go.jp/content/001675193.pdf. 2026年. 2026年09月02日アクセス.





