くも膜下出血の患者さんを担当すると、脳梗塞や脳出血とは違う「再出血」や「血管攣縮期」の管理が頭をちらついて、どこまで評価を進めて良いのか迷ってしまうことってありますよね。
そのラインが曖昧なまま進めるのは、正直かなり怖さがあると思います(私も昔、リスクの線引きに悩んだ経験があります…笑)。
この記事では、Hunt and Kosnik分類による重症度評価から離床基準、高次脳機能障害の評価ポイントまで、病期の流れに沿って整理してお伝えしていきますね。
理学療法士としての専門知識と、公的な制度資料の両面から解説していますので、根拠を持って評価を組み立てるための土台として役立てていただけると嬉しいです。
くも膜下出血の評価は再出血・血管攣縮期管理から始まる

発症からのタイムラインと理学療法評価の位置づけ
くも膜下出血の評価は、まず発症からの経過日数を確認することから始まりますね。
再出血は発症24時間以内に多く、特に発症早期は要注意です[1]。
そして第4〜14病日には遅発性脳血管攣縮の時期が続きます[1]。
慢性期には、神経症状を伴う水頭症が10〜37%の頻度で発生することもガイドラインに記載されています[1]。
理学療法評価は、この時期区分のどこにいるか、動脈瘤処置は完了しているか、ドレーンは入っているかを確認するところから始まる、という位置づけで捉えていただけると安心です。
血管攣縮期(発症4〜14日)に評価で注意すべき点
血管攣縮期は経頭蓋ドプラ(TCD)で、M1(中大脳動脈の水平部)の平均血流速度が120〜150cm/秒以上、または1日に50cm/秒以上の増加があれば攣縮が疑われます[1]。
こうした検査データがあるかを事前に確認しておくことが、評価時のリスク管理につながりますね。
なお松木らによると、脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)にはくも膜下出血(SAH)のリハビリに関する記載がなく、離床の開始基準・中止基準の標準的な方法も確立されていません[2]。2025年8月には改訂2025が刊行されているため[3]、最新版の記載は各自で確認しておきたいところです。施設内での基準確認も欠かせません。
重症度評価はHunt and Kosnik分類を軸にする
くも膜下出血の患者さんを担当する際、PTがまず読み解くべきなのが「重症度分類」です。PTが自分で判定するというより、カルテに記載された分類を読み解き、離床をどこまで慎重に進めるかを決める指標として使います。
Hunt and Kosnik分類とWFNS分類の使い分け
Hunt and Kosnik分類(1974)は意識状態や神経症状の程度でGrade 0〜Ⅴに分けます[1]。Ⅰは無症状〜軽度頭痛、Ⅲは傾眠・錯乱、Ⅴは深昏睡・瀕死です。WFNS分類(世界脳神経外科連合分類、1983)はGCS(グラスゴー・コーマ・スケール、意識レベルの評価尺度)と局所神経症状(失語・片麻痺)の組み合わせで分類します[1]。施設によって記載が異なるため、両方の見方を知っておきましょう。
守屋らの研究では、入院時のHunt and Kosnik分類が退院・転院時のGOS(グラスゴー転帰尺度)・mRS(修正ランキンスケール)・FAC(歩行自立度の分類)のすべてと有意に関連していたと報告されています(単施設・63例の後ろ向き研究)[4]。グレードが高いほど予後が厳しくなりやすい、という感覚を持っておいてください。
バイタルサインのモニタリング項目と異常時の対応
離床の可否は、血圧・心拍数・呼吸数・SpO2・意識レベルの変化を総合的に見て判断します。
許容値は施設や主治医の指示によって異なります。たとえば松木らのプロトコルでは収縮期血圧160mmHg以下(主治医の設定血圧に準じる)[2]、守屋らの報告では収縮期血圧120〜220mmHg・心拍数40〜100bpm・SpO2 92%超が実施条件でした[4]。一律の数値を暗記するより、その都度カルテと指示を確認する姿勢が大切です。
基準を外れる、意識レベルが下がる、新たな麻痺が出るといった変化があれば、運動負荷を中止して医師・看護師へ報告します。
運動麻痺・感覚障害の評価は片麻痺評価に準じて実施する

くも膜下出血後の運動麻痺・感覚障害の評価も、基本的には他の脳卒中と同様に、MMT(徒手筋力検査)・MAS(修正アシュワーススケール)・深部腱反射などを組み合わせて重症度を判断していきます。
具体的な評価方法や統合的な臨床判断のコツについては、片麻痺評価のコツ!MMT・MAS・深部腱反射の解釈と統合をご覧ください。
高次脳機能障害・認知機能はくも膜下出血特有の評価が必要
くも膜下出血は運動麻痺が軽くても、記憶障害や注意障害などの高次脳機能障害が残ることがあります。退院時に問題なく見える方でも、実は生活のしづらさを抱えているケースがあるという報告もあります[5]。
記憶障害・注意障害・遂行機能障害の評価ポイント
MMSE(簡易認知機能検査)やTMT(トレイルメイキングテスト)、BADS(遂行機能障害の行動評価)などの検査に加え、日常生活での困りごとを聞き取ることも大切です(数値だけでは見えない部分、意外と多いんですよね)。発症から半年〜1年たっても疲労感が約半数の方に見られ、膝の筋力の低さとも関連していたという報告もあります[6]。「なんとなく疲れやすい」という訴えも見逃さないようにしたいですね。
前交通動脈瘤破裂後は前頭葉症状に注意する
前交通動脈瘤破裂後、神経学的に問題なく退院できた方でも、開頭クリッピング術を受けた群では記憶や前頭葉の遂行機能に低下がみられたという小規模な研究報告があります[7]。
急性期のリスク管理と離床基準は再出血予防を最優先する

くも膜下出血の急性期では、再出血の予防が初期治療の目的の一つとされています[1]。離床開始基準にも「動脈瘤治療の終了」が条件として挙がります[2]。ガイドラインでも離床時期は個別に検討するよう勧められています[8]。
離床基準チェックリストと中止基準
松木らによれば、日本ではSAH専用の標準的な基準が確立されておらず[2]、施設や研究ごとに基準が異なります。一例として、松木らのプロトコルでは動脈瘤治療の終了後、次の項目を確認して離床を進めていました[2]。
- 収縮期血圧・心拍数・呼吸数・SpO2が基準の範囲内にある
- 脳圧亢進症状(嘔吐・意識レベルの低下)がない
- 重篤な感染や、活動性のけいれん発作がない
中止の目安は、血圧・心拍数・SpO2の基準逸脱が持続する、脳圧亢進症状が出現する、神経学的異常所見が増悪する、転倒・転落が起きた、といった場合でした[2]。これらはあくまで一つの施設の例なので、実際には主治医の指示に従うのが前提です。
水頭症・遅発性脳血管攣縮のサインを見逃さない評価
血管攣縮期は、意識レベルの低下や、新たな麻痺・失語などの神経症状の出現に注意して評価します。症候性脳血管攣縮は、他に原因がなく神経症状が現れ、画像所見を伴う場合とされています[2]。
慢性期には、認知機能の低下・歩行障害・失禁といった神経症状を伴う水頭症が10〜37%で生じるとされ、こうした変化も見逃さないようにしたいところです[1]。
離床と脳血管攣縮の関係については、日本の多施設・510例の後ろ向き研究で、発症7日以内に端座位を開始したことは症候性脳血管攣縮と関連しませんでした[9]。16研究・1,757例のメタアナリシスでも、早期離床は脳血管攣縮の減少や3か月時のmRS改善と関連しましたが、根拠の質は中等度で、著者らも適切な離床戦略の確立にはランダム化比較試験が必要としています[10]。観察研究が中心のため、離床を強く推奨する根拠というより、リスク管理のもとであれば過度に恐れなくてよい可能性がある、という程度に受け止めておくと安心です。
回復期は評価を再構築しプログラムへ反映させる
くも膜下出血の急性期を乗り越え回復期に移ると、評価もリスク管理中心から機能回復とADL(日常生活動作)自立に向けたものへと再構築していく必要がありますね。
ブルンストロームステージやFIM(機能的自立度評価法)、ICF(国際生活機能分類)モデルなどの標準化指標を用いて、運動麻痺・バランス・生活動作を多面的に捉え直すことが、この時期のプログラム立案の土台になります(ここの評価が甘いと、後々の修正が本当に大変なんですよね…)。
課題指向型練習や装具療法を組み込みながら、基本動作からADL練習へ段階的に発展させていく――こうした回復期以降の具体的なプログラム構成については、下記の記事で詳しくまとめています。
詳しくは脳卒中リハビリプログラムの立て方!病期別の評価と目標設定をご覧ください。
まとめ:くも膜下出血の理学療法評価

くも膜下出血の理学療法評価は、とにかく急性期のリスク管理が土台になりますね。
再出血・血管攣縮・水頭症という3つのリスクを常に意識しながら、Hunt and Kosnik分類やバイタル、意識レベルを踏まえて離床の可否を判断していく流れでしたね。
改めて振り返ってみると、ポイントは以下の通りです。
- リスク管理が最優先:離床や運動負荷は、主治医の指示と中止基準に該当しないことを確認した上で進める
- 評価の再構築:意識レベルや高次脳機能障害の変化に応じて、その都度評価をやり直す視点が欠かせない
- 運動麻痺・感覚障害の詳細評価:MMTやMASなどの手技は、片麻痺の評価に関する記事で詳しく解説しています
(正直なところ、こうしたリスクの高い疾患の評価は、慣れないうちは緊張の連続だと思います。焦らず一つひとつ、確認しながら進めていただければと思います。)
急性期を乗り越えた後の回復期以降のプログラム立案については、また別の記事で詳しくお伝えできればと思っています。
無理のないペースで、一つひとつの評価を丁寧に積み重ねていっていただけると嬉しいです。
引用文献
[1] 脳卒中合同ガイドライン委員会, 編. 脳卒中治療ガイドライン2009. Ⅳ. クモ膜下出血. 協和企画; 2009:182-211. https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_04.pdf. アクセス日: 2026年09月22日.
[2] 松木良介, 渡辺広希, 児島範明, 成原徹, 山本洋司. くも膜下出血患者に対するSAH Early Rehabilitation Protocolの効果—単施設ケースコントロール研究—. 理学療法学. 2025;52(5):292-299. https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/52/5/52_25-12586/_pdf/-char/ja. アクセス日: 2026年09月22日.
[3] 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会, 編. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕. 協和企画; 2025. https://www.kk-kyowa.co.jp/stroke2021/. アクセス日: 2026年09月22日.
[4] 守屋正道, 角光一郎, 宮崎彰吾, 青木主税. くも膜下出血患者の早期離床の効果とアウトカムに影響を与える要因の検討. 脳卒中. 2016;38(3):161-167. doi:10.3995/jstroke.10351. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/38/3/38_10351/_pdf. アクセス日: 2026年09月22日.
[5] Nussbaum ES, Mikoff N, Paranjape GS. Cognitive deficits among patients surviving aneurysmal subarachnoid hemorrhage: a contemporary systematic review. Br J Neurosurg. 2021;35(4):384-401. doi:10.1080/02688697.2020.1859462. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33345644/. アクセス日: 2026年09月22日.
[6] Harmsen WJ, Ribbers GM, Heijenbrok-Kal MH, et al. Fatigue after aneurysmal subarachnoid hemorrhage is highly prevalent in the first year postonset and related to low physical fitness: a longitudinal study. Am J Phys Med Rehabil. 2019;98(1):7-13. doi:10.1097/PHM.0000000000000976. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29863585/. アクセス日: 2026年09月22日.
[7] Fontanella M, Perozzo P, Ursone R, Garbossa D, Bergui M. Neuropsychological assessment after microsurgical clipping or endovascular treatment for anterior communicating artery aneurysm. Acta Neurochir (Wien). 2003;145(10):867-872. doi:10.1007/s00701-003-0111-5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14577008/. アクセス日: 2026年09月22日.
[8] 脳卒中合同ガイドライン委員会, 編. 脳卒中治療ガイドライン2009. Ⅶ. リハビリテーション. 協和企画; 2009. https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_07.pdf. アクセス日: 2026年09月22日.
[9] Takara H, Kohatsu Y, Suzuki S, Satoh S, Abe Y, Miyazato S, et al. Initiating mobilization is not associated with symptomatic cerebral vasospasm in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage: a retrospective multicenter case-control study. Phys Ther Res. 2022;25(3):134-142. doi:10.1298/ptr.E10205. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36819919/. アクセス日: 2026年09月22日.
[10] Foudhaili A, Leclere B, Martinache F, Chauvin A, Vitiello D, Chousterman B. Early mobilization in patients with aneurysmal subarachnoid haemorrhage may improve functional status and reduce cerebral vasospasm rate: a systematic review with meta-analysis. J Rehabil Med. 2024;56:jrm41225. doi:10.2340/jrm.v56.41225. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39421981/. アクセス日: 2026年09月22日.





