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「考える力」がカギ?うつ病の新たなタイプと治療の可能性

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皆さん、こんにちは!PTケイです。

「気分が落ち込む…」「やる気が出ない…」 長引くうつ症状に、出口の見えないトンネルの中にいるような気持ちになっていませんか?

実は、うつ病と一口に言っても、その原因や症状は人それぞれ。 そして、最新の研究によって、脳の働き方にもいくつかのタイプがあることがわかってきたんです。

今回は、その中でも特に注目されている「認知バイオタイプ」について、 あなたの「心のモヤモヤ」を晴らすヒントを、最新の研究と共にお届けします!

研究紹介

2023年、アメリカのハック氏らの研究グループは、大うつ病性障害(MDD)患者における認知障害と、症状、神経回路、治療結果との関連性を検討する画期的な研究を行いました。

この研究では、1008人という大規模なうつ病患者さんを対象に、

  • 症状の特徴(気分の落ち込み、意欲の低下など)
  • 認知機能テストの結果(記憶力、注意力、判断力など)
  • 脳の活動状態(fMRI検査)
  • 抗うつ薬治療の効果

などを詳しく調べ、これらの関係を分析しました。

えっ、うつ病にタイプがあるの? 従来のうつ病治療の課題

これまで、うつ病の治療は、主に「抗うつ薬」による薬物療法が中心でした。 しかし、

  • どの薬が効くかは、実際に試してみないとわからない…
  • 効果が出るまでに時間がかかり、数週間~数ヶ月待つ必要がある…
  • そもそも、薬が効かない人もいる…

といった課題があり、多くの患者さんが「自分に合う薬」を見つけるまでに、長い時間と労力を費やしているのが現状です。

最新研究でわかったこと:うつ病患者の約3割は「認知バイオタイプ」!?

研究の結果、うつ病患者さんの約27%、つまり、およそ3人に1人が、

  • 集中力や注意力、計画力などの「認知機能」が低下している
  • 睡眠の問題(不眠など)を抱えていることが多い
  • 脳の「前頭前野」と呼ばれる部分の活動が低下している

という特徴を持つことが明らかになりました。

研究グループは、この特徴を持つグループを「認知バイオタイプ」と名付けました。

※「認知バイオタイプ (cognitive biotype)」という言葉は、まだ確立された医学用語ではなく、この研究で提唱された新しい概念です。そのため、決まった日本語訳はありません。この記事では、あくまでわかりやすいように日本語訳をして記載しています。

認知バイオタイプってどんな特徴があるの?

認知バイオタイプの患者さんは、日常生活でこんな悩みを抱えていることが多いようです。

  • 集中力が続かない:
    • 仕事や勉強に集中できず、ミスが増える
    • テレビや本の内容が頭に入ってこない
    • 会話についていけない
  • 計画を立てて実行するのが苦手:
    • 段取りが悪く、物事がスムーズに進まない
    • 締め切りを守れない
    • 複数のタスクを同時にこなせない
  • 衝動的に行動してしまう:
    • 後先考えずに行動して、後悔することが多い
    • 感情のコントロールが難しい
  • 考えがまとまらない:
    • 頭の中がごちゃごちゃして、考えがまとまらない
    • 何を言いたいのか、自分でもよくわからなくなる

さらに、脳の活動をfMRIという特殊な装置で調べた結果、認知バイオタイプの患者さんは、

  • 背外側前頭前皮質(はいがいそくぜんとうぜんひしつ):計画、意思決定、ワーキングメモリ(情報を一時的に記憶し、処理する能力)などに関わる
  • 背側前帯状皮質(はいそくぜんたいじょうひしつ):葛藤モニタリング(矛盾する情報を処理する能力)、エラー検出、注意の制御などに関わる

と呼ばれる部分の活動が、低下していることがわかりました。

認知バイオタイプは、薬が効きにくい!?

この研究では、さらに衝撃的な事実が明らかになりました。 なんと、認知バイオタイプの患者さんは、一般的な抗うつ薬(SSRIなど)の効果が低い傾向にある、というのです。

これは、認知バイオタイプのうつ病が、脳の特定の領域(前頭前野など)の機能低下と関係しているため、従来の「セロトニン」という神経伝達物質を増やすタイプの薬では、効果が出にくい可能性がある、と考えられています。

  • セロトニン:脳内の神経伝達物質の一つ。気分や感情、睡眠などに関わる。

認知バイオタイプかも…と思ったら?

もし、あなたが「認知バイオタイプ」の特徴に当てはまるかもしれない…と感じたら、まずは専門家(精神科医や心療内科医など)に相談してみましょう。

そして、「集中力が続かない」「計画を立てるのが苦手」といった、ご自身の悩みを具体的に伝えることが大切です。

まとめ:うつ病治療は、もっと個別化できる!希望を胸に

今回の研究結果から、うつ病は、単一の病気ではなく、いくつかのタイプに分類できる可能性が見えてきました。 そして、そのタイプによって、最適な治療法も異なる可能性があります。

つまり、あなたの「うつ」のタイプに合わせた、オーダーメイドの治療が受けられる未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

今回の研究で、その扉が大きく開かれました。 認知機能に着目した新しい治療法の開発によって、「自分に合った治療法」が見つかる希望が、より一層広がったと言えるでしょう。

参考文献

  • Hack, L. M., Tozzi, L., Zenteno, S., Olmstead, A. M., Hilton, R., Jubeir, J., … & Williams, L. M. (2023). Cognitive biotype of depression and symptoms, behavior, neural circuits, and differential treatment outcomes: A randomized clinical trial and prespecified secondary analysis. JAMA Network Open, 6(6), e2318808-e2318808.

健康・医学関連情報の注意喚起

本記事は、うつ病の認知バイオタイプに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医学的アドバイスを提供するものではありません。 うつ病の診断や治療については、必ず医療従事者にご相談ください。

【うつ病治療の新常識!?】 脳のタイプで薬の効果が変わる!「認知バイオタイプ」とは?

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