BさんPTケイさん、聞いてください…。
昨日もまた、コンビニスイーツを3つも食べてしまいました。
休職して体を休めなきゃいけないのに、食べてばかりで体重も増えてきて…。
私、なんて意志が弱いんだろうって、毎日自己嫌悪で押しつぶされそうです。



Bさん、その辛い気持ち、痛いほどよくわかります。
実は私も、うつ状態が酷かった時期、同じように『わかっているのに止められない』という経験をしました。
でも、断言させてください。それはBさんの『意志が弱い』からではないんです。



えっ、そうなんですか…?
でも、我慢できない自分が情けなくて…。



実は、うつ病の状態にある脳や体では、生理学的に『甘いものを求め、それによってさらに症状が悪化する』という負のスイッチが入ってしまっていることが多いんです。
つまり、これは『脳のバグ』や『身体の炎症反応』であって、性格の問題ではありません。
この記事では、なぜ体がそうなってしまうのか、私の実体験と最新の科学的根拠をもとに紐解いていきます。
仕組みがわかれば、自分を責める必要がなくなり、具体的な対策が見えてきますよ。
1分でわかる要約 (1-Minute Summary)
🌱 結論:甘いものは「ご褒美」ではなく「炎症の元」。賢く置き換えて脳を守ろう
- ✅ 【ポイント1】甘い快楽は一瞬、代償は長く続く 甘いもので血糖値が急上昇・急降下すると、脳は「ご褒美」と感じるどころか、不安や抑うつを強めてしまいます。
- ✅ 【ポイント2】脳のセンサーが壊れていく 食べ続けると「報酬系」という脳の回路が機能不全を起こし、もっと強い刺激(糖分)を求める悪循環に陥ります。
- ✅ 【ポイント3】「我慢」ではなく「置き換え」を 意志で止めようとするのは困難です。ダークチョコレートやナッツなど、抗炎症作用のある食品に置き換えることで、脳と体を守りましょう。
- 🕊 PTケイのひとこと: 「食べてしまった自分を責めるエネルギーを、ほんの少し『食べるものを選ぶ』工夫に向けてみませんか?その小さな一歩が回復への近道です。」
私の体験談と科学的根拠(Main Content)
【理由1】甘いものをご褒美として取ると逆効果になる(気分の悪化)
私たちはよく「疲れたから甘いものでも食べて元気を出そう」と考えます。
しかし、うつ病の当事者にとって、これは危険な罠かもしれません。
私の体験談:コンビニスイーツのループ
正直に告白します。
私自身、自分への「ご褒美」のつもりでローソンでシュークリームを一つ買ったのが始まりでした。
「今日はリワークを頑張ったから」と理由をつけて食べていましたが、気がつけば毎週、いや毎日のようにコンビニに通うようになっていました。
食べた瞬間は確かに幸せなんです。
でも、しばらくすると言いようのないダルさや不安感に襲われる。
それでもまた、「あの快楽」を求めて次の日も買いに行ってしまう…。そんな日々でした。
🔬 科学的根拠(エビデンス)
実は、この感覚は気のせいではありませんでした。
2021年オランダのムイスらの研究グループは、2型糖尿病患者における血糖変動と気分についてのシステマティックレビューを行いました。
その結果、食後の血糖値の上昇率が高い(急激に上がる)ほど、その後の抑うつや不安といったネガティブな気分が強くなるという有意な関連が示唆されています。
(出典: Muijs LT, et al. Endocrinol Diab Metab. 2021)
💡 PTケイの視点
【理由2】脳の「報酬系」が壊れ、さらに欲しくなる
なぜ、体に悪いとわかっていても手が止まらないのでしょうか。
それは脳のシステム自体が変化してしまうからです。
私の体験談:ストックがある限り食べてしまう
私はもともと、そこまでお菓子を食べる習慣はありませんでした。
しかし、うつ状態で自宅にいる時間が増え、お菓子のストックが目に入ると、無意識に手が伸びてしまうようになりました。
「一つだけ」のつもりが、気づけば一袋空いている。
ストックがあるうちは、なくなるまで食べてしまう。
当時は「なんでこんなに意志が弱いんだ」と思っていましたが、今思えば、脳が正常な判断ができなくなっていたのだと感じます。
🔬 科学的根拠(エビデンス)
脳科学の視点では、インスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくい状態)が脳の機能不全を引き起こすことが複数の研究で示されています。
2012年、アメリカのライアンらの研究グループは、インスリン抵抗性と脳の機能的結合についてのfMRIを用いた研究を行いました。
その結果、インスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくい状態)があると、快楽を感じる脳の部位(腹側線条体など)の機能が低下し、これが抑うつ気分と関連していることが示唆されています。(出典: Ryan JP, et al. Psychosom Med. 2012)
さらに、このメカニズムは「学習能力」にも影響します。
2019年カナダ等のリラ・エ・シルバらの研究グループのレビューによると、脳内のインスリンシグナルの欠陥は、報酬や学習の生理学的メカニズムを損ない、最終的に抑うつ症状を引き起こす可能性があることが示唆されています。
(出典: Lyra e Silva NM, et al. Front Psychiatry. 2019)
💡 PTケイの視点
つまり、甘いものを食べ続けるとインスリンが脳でうまく働かなくなり、「喜びを感じるセンサー」そのものが壊れてしまうのです。
その結果、脳が満足感を得られず「もっと強い刺激(大量の糖分)をよこせ!」と命令を出してしまう悪循環に陥ります。
【理由3】炎症と腸内環境の悪化(うつの長期化)
「脳」だけでなく、「腸」の環境悪化もメンタルヘルスに直結します。
私の体験談:見えない体内の火事
体内の炎症や腸内環境の変化は、目に見えません。だからこそ厄介です。
私の場合、甘いものを過食していた時期は、常にお腹が張っていたり、便通が不安定だったりと、腸の調子も最悪でした。(実は最近もその傾向が出てきたので注意しています)
経験的に、腸の不調とメンタルの落ち込みはセットでやってくる感覚がありました。
知識として「脳腸相関」を知り、自分にブレーキをかけるきっかけになりました。
🔬 科学的根拠(エビデンス)
まず、うつ病と食習慣の「負の連鎖」について知っておく必要があります。
2022年アメリカのハビブらの研究グループによる糖尿病とうつ病の関連に関するレビューでは、うつ病患者は、健康的な食事よりも精製糖(甘いもの)や飽和脂肪酸などの質の悪い食習慣に陥りやすく、これが血糖コントロールをさらに悪化させる要因になっていることが指摘されています。 (出典: Habib S, et al. Cureus. 2022)
そして、この悪い食習慣が体内で何を引き起こすかというと、最新の研究では以下のように報告されています。
2025年、中国・アメリカ等のルオらの研究グループは、糖尿病と鬱病の共有メカニズムについてのナラティブレビューを行いました。
その結果、高血糖は腸内細菌のバランスを崩し(ディスバイオシス)、腸のバリア機能を低下させる。これにより炎症物質が血中に漏れ出し、脳の炎症とうつ症状をさらに悪化させる「負のサイクル」が形成されることが示唆されています。
(出典: Luo C, et al. World J Diabetes. 2025)
💡 PTケイの視点
【理由4】ストレスに弱くなる(自律神経の乱れ)
最後に、ストレスへの対抗力(レジリエンス)についてです。
私の体験談:オメガ3とダークチョコレートへの転換
うつ病であるということは、すでに自己制御力が低下している状態です。
そこで「頑張って食べない」と戦うのは、武器を持たずに戦場に行くようなものでした。
私は戦略を変えました。「食べない」ではなく「食べるものを変える」。
具体的には、ミックスナッツやバナナ、ヨーグルト、そしてカカオ70%以上のダークチョコレートです。
これらを常備し、甘いものが欲しくなったらこれらを食べるようにしました。
私の場合は特にミックスナッツとダークチョコレートは満足感があり、シュークリームの衝動を抑えるのに非常に有効でした。
また、その頃は、朝食にヨーグルトとバナナを必ず食べていました。(今もバナナは毎朝食べています!)
🔬 科学的根拠(エビデンス)
2018年イギリスのヤングとベントンは、心拍変動(HRV)と食事の影響についてのレビューを行いました。その結果、高グリセリックな炭水化物(甘いものなど)の摂取は、ストレス耐性の指標であるHRVを低下させ、衝動的な過食を抑えられない状態と関連している
一方、オメガ3脂肪酸などは精神的安定に寄与する可能性があることが示唆されています。
(出典: Young HA, Benton D. Behav Pharmacol. 2018)
💡 PTケイの視点




PTケイのQ&A (Q&A Section)
ここでは、よく患者さんや読者の方からいただく疑問に、専門家と当事者の両面からお答えします。
まとめ (Conclusion)
- 🔍 【まとめ1】過食は「脳のSOS」 甘いものを欲するのは、脳の報酬系や血糖値の乱れによる生理現象です。あなたの性格のせいではありません。
- 🎯 【まとめ2】血糖値の乱高下を防ぐ 甘いものによる急激な血糖上昇は、気分の落ち込みを招きます。低GI食品(ナッツ、ヨーグルトなど)を選びましょう。
- 🕊 【まとめ3】「禁止」より「置き換え」 無理に我慢せず、ダークチョコレートやフルーツなど、抗炎症作用のある「脳を守るおやつ」に置き換えましょう。
【読者への最後のエール】 今日、シュークリームを我慢してナッツを一粒食べたなら、それは素晴らしい「治療」です。もし食べてしまっても、自分を責めないでください。「脳が疲れていたんだね」と労って、また次の食事から切り替えれば大丈夫。あなたのペースで、少しずつ体を変えていきましょう。
参考文献 (References)&注意喚起 (Disclaimer)
参考文献 (References)
- Muijs LT, Racca C, Wieringa TH, et al. Glucose variability and mood in adults with diabetes: A systematic review. Endocrinol Diab Metab. 2021;4:e00152. doi:10.1002/edm2.152.
- Ryan JP, Sheu LK, Critchley HD, Gianaros PJ. A Neural Circuitry Linking Insulin Resistance to Depressed Mood. Psychosom Med. 2012;74(5):476-482. doi:10.1097/PSY.0b013e31824d0865.
- Lyra e Silva NM, Lam MP, Soares CN, et al. Insulin Resistance as a Shared Pathogenic Mechanism Between Depression and Type 2 Diabetes. Front Psychiatry. 2019;10:57. doi:10.3389/fpsyt.2019.00057.
- Habib S, Sangaraju S, Yepez D, et al. The Nexus Between Diabetes and Depression: A Narrative Review. Cureus. 2022;14(6):e25611. doi:10.7759/cureus.25611.
- Luo C, Yu XM, Zeng MQ, et al. Breaking the diabetes-depression cycle: Exploring shared mechanisms, neuroinflammation, and emerging interventions for metabolic-mood comorbidities. World J Diabetes. 2025;16(7):107406. doi:10.4239/wjd.v16.i7.107406.
- Young HA, Benton D. Heart-rate variability: a biomarker to study the influence of nutrition on physiological and psychological health? Behav Pharmacol. 2018;29:140-151.
注意喚起 (Disclaimer)
本記事は、理学療法士の国家資格を持つ筆者の知識と経験、および執筆時点での信頼できる文献に基づいて作成されていますが、医学的な診断や治療を提供するものではありません。
記事内で紹介しているセルフケアや運動、提案などは、万人に効果を保証するものではなく、お体の状態によっては適さない場合もあります。
現在、医師の治療を受けている方は、主治医の指示を優先してください。
痛み、しびれ、強い疲労感などがある場合は無理を行わず、速やかに専門の医療機関を受診してください。
本記事の情報を利用して生じた損害等について、当サイトは一切の責任を負いかねます。


