脳卒中の患者さんを担当すると、意識レベルから運動麻痺、感覚、高次脳機能、バランス・歩行まで、見るべき項目があまりに多くて、評価が場当たり的になってしまうこと、ありますよね。
この記事では、意識レベル・全身状態の評価、運動麻痺・感覚・高次脳機能の評価、バランス・歩行能力の評価という3つの軸に沿って、くも膜下出血や小脳梗塞、ワレンベルグ症候群、片麻痺といった代表的な病型のポイントも含めて、評価の流れを体系的に整理していきますね。
専門知識と臨床実践の視点の両方から、限られた時間の中で何を優先し、どうリスク管理につなげるかという組み立て方をお伝えしていきますので、明日からの評価にそのまま活かしていただけると嬉しいです。
脳卒中の理学療法評価は病型と重症度の把握から始まる

脳梗塞・脳出血・くも膜下出血で評価の視点が変わる
脳卒中でも脳梗塞・脳出血・くも膜下出血ではリスク管理の視点も麻痺の出方も異なります。病型を把握せず同じバッテリーをこなすと必要な情報が抜け落ちるため注意が必要です。
NIHSSなどの重症度分類で全体像を掴む
まずはNational Institutes of Health Stroke Scale(以下NIHSS)などのスケールで全身状態と重症度の全体像を掴むのが出発点です。病期別のスケール使い分けやBrunnstrom Recovery Stage(以下BRS)・Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)・Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)などの詳細評価は、当ブログでまとめていますので参考にしていただけると嬉しいです。
詳しくは脳梗塞の理学療法評価まとめ!病期別のスケール使い分けをご覧ください。
意識レベル・全身状態の評価はリスク管理の基本
病型と重症度の全体像を掴んだら、次に確認すべきは意識レベルと全身状態です。
JCS・GCSによる意識レベル評価
意識レベル低下は脳浮腫や再発のサインとなるため、Japan Coma Scale(以下JCS)・Glasgow Coma Scale(以下GCS)での経時的モニタリングが病態急変の防止につながります[1]。
運動麻痺・感覚・高次脳機能の評価は項目ごとに整理する

意識レベルと全身状態が安定していることを確認できたら、続いて運動麻痺・感覚・高次脳機能を項目ごとに評価していきます。
運動麻痺はBrunnstrom StageとMMTで概観する
運動麻痺はBRSで大まかな回復段階を把握したうえで、Manual Muscle Testing(以下MMT)で筋力を定量化し、必要に応じてFMAやSIASを併用して重症度を数値化します[2]。
感覚評価は表在覚・深部覚・複合感覚を確認する
感覚評価では、痛覚・触覚などの表在覚、位置覚・運動覚などの深部覚、複数の感覚情報を統合して識別する複合感覚の3種類に分けて確認します。運動麻痺の程度と感覚障害の程度は必ずしも一致しないため、独立して評価することが大切です。
高次脳機能評価は半側空間無視や失行・失認を確認する
加えて、半側空間無視や失行・失認といった高次脳機能障害の有無も、Activities of Daily Living(以下ADL)場面での観察と合わせて確認しておく必要があります[2]。これらは運動学習やADL動作の獲得を大きく左右するため、運動麻痺とは切り分けて把握し、介入方針の立案に反映します。
バランス・歩行能力の評価はBBSとFIMを軸に行う
運動麻痺・感覚・高次脳機能の評価が一通り終わったら、実際の生活動作に直結するバランス・歩行能力の評価に進みます。
BBSで転倒リスクを評価する
BBS(14項目・56点満点)は転倒リスクのスクリーニングに有用で、推奨グレードAの指標です[2]。
FIMとTUGで生活動作・歩行能力を数値化する
Functional Independence Measure(以下FIM)の移動・歩行項目とBBSを組み合わせると、心身機能レベルのバランス能力と実際の生活場面での介助度とのズレが見えてきます[2]。加えてTimed Up and Go Test(以下TUG)や10m歩行テストで歩行速度・所要時間を数値化しておくと、経過を客観的に共有しやすくなります。
くも膜下出血の理学療法評価は再出血・重症度管理が要

ここまでは病型を問わず共通する評価の軸を整理してきました。ここからは、代表的な病型ごとに押さえておきたい評価のポイントを見ていきます。まずはくも膜下出血からです。
重症度分類とリスク管理の考え方(概要)
くも膜下出血の評価では、脳梗塞や脳出血とは異なり「再出血」や「血管攣縮期」の管理が重要になります。
評価の土台になるのはHunt and Kosnik分類による重症度判定で、これをもとに離床の進め方を判断します。血管攣縮期(発症4〜14日)[3]や慢性期の水頭症といったリスクを踏まえ、バイタル基準や離床中止基準を確認しながら進めるのが特徴です。
詳細な点数や離床基準のチェックリストは以下で解説しています。
詳しくはくも膜下出血のリハ評価と離床基準!重症度からリスク管理までをご覧ください。
小脳梗塞の理学療法評価は運動失調の評価が中心となる
くも膜下出血が再出血や血管攣縮といった血管イベントの管理を重視するのに対し、小脳梗塞では運動失調そのものの評価が中心になります。
小脳梗塞のリハビリでは、筋力よりも協調運動障害をどう捉えるかが評価の出発点になりますね。
体幹失調・四肢失調・測定障害といった症状を見極めつつ、画像所見やカルテ情報から梗塞部位を確認しておくことも欠かせません。
SARAスケールで失調症状を評価する(概要)
体幹・四肢の協調運動障害を数値化するには、Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(以下SARA)が頼りになります。
- 歩行・立位・座位など全8項目、0〜40点で評価
- 点数が高いほど失調が重度
失調評価の具体的な手順やSARAの解釈については、詳しくは小脳梗塞の理学療法評価!SARAと失調の診方をご覧ください。
ワレンベルグ症候群の理学療法評価は特有の症状把握が鍵

同じ脳幹・小脳系の病変でも、ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)では症状の現れ方が大きく異なります。
延髄外側症候群特有の症状と評価のポイント(概要)
ワレンベルグ症候群は、交代性感覚障害・運動失調・嚥下障害・ホルネル症候群と、症状が一気に重なってくるのが特徴ですね。
片麻痺のケースとは評価の視点がまるで違うので、運動麻痺と深部感覚障害は原則出ないという前提を押さえておくことが何より大切になってきます。
- 感覚(顔面・上下肢の交代性感覚障害)
- 球症状(嚥下・構音・嗄声)
- 運動失調
- 歩行(側方突進を含む)
私はこの順序で評価を進めるのが良いのではないかと感じています(いきなり歩行から入ると、原因の切り分けが曖昧になりやすいんですよね…笑)。
病態から紐解く実践的な評価手順については、詳しくはワレンベルグ症候群の理学療法評価!病態から紐解く実践手順をご覧ください。
片麻痺の理学療法評価は結果の解釈と統合がポイント
ここまでの3つの病型に対し、片麻痺は脳卒中の中でも最も遭遇頻度が高く、評価結果をどう解釈し統合するかが鍵になります。
MMT・MAS・深部腱反射の評価概要
片麻痺の評価では、MMT・MAS・深部腱反射を単独で見るのではなく、組み合わせて重症度を判断する視点が大切ですね。
- MMT:随意運動の出力レベル(陰性徴候)
- Modified Ashworth Scale(以下MAS):安静時の筋緊張の質(陽性徴候)
- 深部腱反射:中枢神経系の興奮性(陽性徴候)
MMTが低値でも反射が亢進していれば中枢性の要素が強いと推測でき、MASが高くてもMMTが保たれていれば随意性は残存していると判断できます。
各評価結果の解釈と統合の仕方については、詳しくは片麻痺評価のコツ!MMT・MAS・深部腱反射の解釈と統合をご覧ください。
評価結果を脳卒中リハビリプログラムに落とし込む

くも膜下出血・小脳梗塞・ワレンベルグ症候群・片麻痺と、病型ごとの評価ポイントを見てきました。ここからは、それらの評価結果を実際のリハビリプログラムにどう落とし込んでいくかを整理します。
評価から目標設定・プログラム立案への流れ(概要)
評価で得た情報は、そのまま病期別のプログラムに反映していく必要がありますね。
脳卒中のリハビリは、急性期・回復期・生活期という3段階で目的が変わってくるのが大前提です。
- 急性期:廃用予防と早期離床
- 回復期:機能回復とADL自立
- 生活期:活動と参加の維持
さらに、ブルンストロームステージやFIM、国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health、以下ICF)といった評価指標を軸に、病期ごとに再評価しながらプログラムを修正していく姿勢が欠かせません。
具体的なプログラムの立て方については、詳しくは脳卒中リハビリプログラムの立て方!病期別の評価と目標設定をご覧ください。
脳卒中リハビリを学べるおすすめの本
評価からプログラム立案までの流れを体系的に学び直したいときは、書籍を活用するのも一つの方法です。
新人・中堅PT向けにおすすめの書籍(概要)
脳卒中の専門書は数が多く、本屋さんで圧倒されて何も選べずに帰ってきた…という経験、ありますよね(笑)。
そんなときは、「評価」「治療」「高次脳機能障害」の3つの目的軸と、新人〜中堅という経験年数軸を掛け合わせて選ぶのがおすすめです。
- 新人・実習生には全体像をつかめる入門書
- 若手には評価・画像の読み方を深める一冊
- 中堅以上には治療の思考過程や高次脳機能障害を網羅する専門書
というように、「今の自分に必要な視点」で選ぶことが失敗しないコツではないかと感じています。
目的別に厳選した具体的な書籍については、詳しくは脳卒中リハビリおすすめ本!新人・中堅PT向けに目的別で厳選をご覧ください。
まとめ:脳卒中理学療法評価の全体像

脳卒中の評価は、意識・全身状態、運動麻痺や感覚・高次脳機能、バランス・歩行能力と、段階的に見ていくことが大切ですね。
一つの数値だけで判断せず、全体像を組み合わせて見立てていく視点を持ってみるのもおすすめです。
(私自身、まだまだ学び続けている途中です…笑)これからも一緒に評価の精度を高めていけたら嬉しいです。
引用文献
[1] 順天堂大学医学部附属順天堂医院. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン. http://www.junten.jp/publics/download/?file=/files/content_type/type019/41/201805291451318502.pdf. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月22日.
[2] 日本理学療法学会連合. 脳卒中理学療法ガイドライン. https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月22日.
[3] 京都大学医学部附属病院 脳神経外科. くも膜下出血. https://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis25/. 発行年不明. アクセス日: 2026年09月22日.





