はじめに
認定理学療法試験(運動器)対策で勉強しました。その内容として、今回は変形性膝関節症の理学療法診療ガイドラインについてまとめましたので一緒に確認していきましょう。
運動器認定理学療法士試験について
運動器の試験についてですが、2016年度と比較して2017年度では一部認定理学療法士試験の範囲が変更になっており、必須研修会の資料も2016年度と比べ異なっています。そこで、12月24日までに最新版の資料受付があり、手に入れることができました。しかし、手違いにより申請せず、問題を把握しておりませんでした。
今回新しい資料をいただいたので、その内容を整理してどこを抑えておく方がよいかを考え、重要な個所をまとめていこうと思います。
2017年度は2016年度と比べ何が変わったのか?
このブログで紹介している変形性膝関節症についての情報は範囲外になっています。2017年度はエビデンスやガイドラインをより重視している印象です。
変形性膝関節症のガイドラインのポイント1(疫学・情報収集編)
- 問診 推奨グレードA
- 既往歴 以下、推奨グレードA(ACL損傷・再建術、半月板損傷・部分切除と全切除、リスク要因として、肥満、膝の外傷、肉体労働が重要、手のOAと女性・高齢も重要、危険因子として、加齢・女性・肥満・膝内反変形・外側スラスト・大腿四頭筋筋力低下が重要)※膝関節弛緩性についての推奨グレードはC
- 画像検査 以下、推奨グレードA(K-L分類はやはり重要、MRI→WORMSはRasch分析という順序尺度を間隔尺度に変更するための分析方法を使用)
変形性膝関節症のガイドラインのポイント2(理学療法評価)
- ・下肢アライメント 推奨グレードA(膝マルアライメント→OA進行を変化させる、大体脛骨外側角:FTAは進行とともに増加+強い相関関係)
- ・疼痛 推奨グレードA
- ・膝関節周囲筋の筋力評価 推奨グレードA(大腿四頭筋筋力はOA進行・膝不安定性に関与している)
- ・歩行 以下、推奨グレードA(歩行速度、ストライド、ケイデンス)
- ・歩行中の下肢関節の運動学的変化 以下、推奨グレードA(骨盤前傾、遊脚側への骨盤傾斜、膝関節外反の減少、股関節外転が大、膝関節伸展が大、足関節背屈角度が大、toe-out角が減少)
- ・歩行中の下肢関節の運動力学的変化 以下、推奨グレードA(股関節屈曲モーメントと膝関節伸展モーメントが小さい、膝関節内転モーメントと膝関節内転角力積はともにK-L分類に相関して増加、荷重反応期の膝関節伸展モーメントは増加、立脚後期での膝関節屈曲モーメントは減少)
※歩行に関する運動学的変化と運動力学的変化は内容が難しい。外的モーメントはメカニカルストレスによるもの、要は重力や床反力、加速度などが影響しており、内的モーメントは自身の関節にかかる筋力や靭帯など身体構成要素により発揮させる出力や抵抗感が影響している。主に外部膝関節モーメントに関して言われている。
→膝OAの歩行の特徴を抑えておくことで対策できるだろう。
- 生活機能の評価 推奨グレードA(自己効力感、FIM、Barthel indexを含む)(生活機能評価につながるリスク因子:疼痛、こわばり、筋力低下、膝関節のゆるみ、固有受容感覚の不正確、立位時間の低下、関節可動域低下)(苦痛感→慢性疼痛患者に比べ高い)
- 健康プロファイル型尺度の評価 推奨グレードA(WOMAC、JKOM、SF-36を含む)(注意:Lequesne indexは推奨に含まない、Lequesne indexは高得点は悪い結果)(SF-36は包括的尺度でもっともすぐれていた)(JKOMは高得点は悪い結果になる)(WOMACについては、膝関節・股関節の変形性関節症の疾患特異的尺度として最も頻用されている)
以下、SF-36について記載してありますのでご参考に。(包括的尺度と疾患特異的尺度についてもふれてます)
以下、推奨グレードB(重要な感じがするがBはBなので注意、試験に出そう)
- 股関節、足関節、足部周囲筋の筋力評価
- 胸郭、脊椎、骨盤との関係に関する評価
- 外側スラスト
- 歩行中の筋活動
- 課題遂行テスト(パフォーマンステスト):TUGや6MD、昇段テスト含む
以下、推奨グレードC(意外なものがCだったりするので注意)
- 関節可動域(よく行われていると思う、自動と他動の違いは特に触れていない)
変形性膝関節症のガイドラインのポイント3(理学療法介入)
以下、保存的治療における理学療法介入について
→NICE(National health and clinical excellense)における膝OA治療目標では、患者教育、減量、運動療法の3つをコア治療としている。
・患者教育と指導 推奨グレードA エビデンスレベル2
・減量療法 推奨グレードA エビデンスレベル1
・運動療法 推奨グレードA エビデンスレベル1
(OARSIのガイドライン→筋力強化運動と関節可動域運動)
(AAOSのガイドライン→有酸素運動、関節可動域運動、大腿四頭筋強化運動)
以下運動療法での推奨グレードA
・筋力増強運動 エビデンスレベル1
・有酸素運動 エビデンスレベル1
・協調性運動 エビデンスレベル2
・物理療法 推奨グレードA エビデンスレベル1
以下、物理療法での推奨グレードA
・超音波療法 エビデンスレベル1
・温泉療法 エビデンスレベル2
・TENS療法 エビデンスレベル2
・物理療法の複合使用と運動療法との併用 エビデンスレベル2
(特に短波ジアテルミー+ホットパック+等尺性筋力トレーニング、TENS療法+ホットパック+等尺性筋力トレーニングが有効)
※注意:ジアテルミー単独では推奨グレードD
以下、保存的治療における推奨グレードB
・徒手療法 エビデンスレベル2
・足底挿板療法 エビデンスレベル1(外側ウェッジソールの長期的効果はない)
・装具療法 エビデンスレベル1(サポーターは有益、バランス改善効果)
・テーピング エビデンスレベル1(膝蓋骨を内側へ引っ張る方法)
・水治療法 エビデンスレベル2(陸と水中の効果は大差なし)
・磁気刺激療法 エビデンスレベル2
・干渉波治療 エビデンスレベル2
・電気刺激療法 エビデンスレベル2(TENSではない、パルス電気刺激療法、運動療法と同等の効果があるとされる文献もあり)
・レーザー治療 エビデンスレベル2
以下、保存的治療における推奨グレードC
・ストレッチ及び関節可動域運動 エビデンスレベル2
・ホットパック(推奨グレードC1)エビデンスレベル2
以下、保存的治療における推奨グレードD
・ジアテルミー エビデンスレベル2
・骨膜刺激療法 エビデンスレベル2
※推奨グレードC,Dは少ないですね。特にDは試験に出しやすそうです。B、C、Dの選択肢からDを抽出できるようにはしておいた方がよいかな。物理療法と運動療法のどちらかで推奨グレードに関して問題が出そうです。(数が多いし、紛らわしいものもあるため)
以下、観血的治療後の理学療法介入について
TKAに対して
以下推奨グレードA
・自動関節可動域運動、スライダーボード運動 エビデンスレベル2
(他動では推奨グレードDのため要注意)
・漸進的筋力増強運動 エビデンスレベル2
・機能的運動療法、バランス運動 エビデンスレベル1(保存のOAでは協調性運動として推奨グレードAなので保存・TKA後ともに重要)
・術前の理学療法と患者教育 エビデンスレベル1(教育関係は常に重要)
以下推奨グレードB
・術後短期使用でのCPM装置 エビデンスレベル1
(術後長期使用は推奨グレードDのため要注意)
・多専門職によるリハビリテーション介入 エビデンスレベル1
推奨グレードCは特に記載なし
以下推奨グレードD
・術後長期使用でのCPM装置 エビデンスレベル1
・他動関節可動域練習 エビデンスレベル2(保存では推奨グレードCです)
→日常生活に着目した機能運動に積極的にかかわる方が好ましい!
・振動刺激による運動療法 エビデンスレベル3(non-RCT)
・経皮的電気刺激による筋活動向上 エビデンスレベル1(保存両方のOAに対しては推奨グレードBだがTKA後はDになるため注意)
※保存療法とTKA後で推奨度の違いや介入の違いがあるため注意が必要です。同じOA患者として患者像をとらえて理学療法を行うべきではないと感じました。
その他
・高位脛骨骨切り術(HTO)や片側単顆人工膝関節置換術(UKA)に関する効果については十分なエビデンスがない。
→HTOは活動性の高い人で転位を伴う片側症候性変形性膝関節症に対する治療として推奨グレードC
→近年はHTOよりもUKAの方が費用対効果と除痛の面から推奨されている傾向がある。
以上になります。
変形性膝関節症のガイドラインで重要な点(試験として)の考察
- 情報収集、評価ではK-L分類、歩行、QOLの評価が出しやすそう。
- 保存と手術での治療の違い
- 推奨グレードについての問題(特に運動療法と物理療法)
以上3点にまとめられると考えます。(あくまで個人的な所見です